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滞仏日記「ついに、さんちゃんとの再会~。さんちゃんが帰って来た、わんわんわん♪」 Posted on 2023/09/08 辻 仁成 作家 パリ

滞仏日記「ついに、さんちゃんとの再会~。さんちゃんが帰って来た、わんわんわん♪」

某月某日、パリに戻り、昨日、郊外にあるジュリアの家まで三四郎を迎えに行ったのであった。
旅の疲れでボロボロだったが、さんちゃんに会いたい気持ちが勝っていた。
久しぶりにハンドルを握りしめ、活気が戻って来たパリの街へと出た。(なんと、駐車場の天井からまたもや水漏れ。水浸し。フランスの終わらない水漏れ事情が続く)
ジュリアの家の前に車を停めて、ジュリアと三四郎が出てくるのを待った。瀟洒な英国風の建物だった。
門の先に広い駐車場があり、その奥に建物の玄関があった。
父ちゃんはそわそわしながら、門の鉄格子のところで待った。まもなく、ジュリアが三四郎を抱えて出てきた。おお、さんちゃーん。うわ、いる!!!!
三四郎はまだ気が付いてない。
父ちゃんは手を振った。
ジュリアが先に気が付き、笑顔になった。
それから数メートル手前で、三四郎と目がった。
ぼくを認めた途端、不意に、ジュリアの腕の中で大暴れしだす、三四郎。
尻尾が左右にふれまくった。パパしゃん、パパしゃん、パパしゃーん、という三四郎の声が聞こえる。
「三四郎!!!」
門から出てきたジュリアから三四郎を手渡された。必死で、尻尾をふっている。
「ジュリア、ありがとう!」

滞仏日記「ついに、さんちゃんとの再会~。さんちゃんが帰って来た、わんわんわん♪」



ところが、いつもは助手席でじっとしている三四郎だけれど、嬉し過ぎて暴れまくるので運転が出来ない。
しばらく、さんちゃんを抱っこして、彼が落ち着くのを待つことになった。
「くゥーん、くゥーん、くゥーん、くゥーゥーーーん」
訴えるような鳴き声が続いた。この子の寂しかった日々の想いが届く。
「ごめんね、長いこと、寂しい想いをさせたね~、さんちゃん」
「くゥーん、くゥーん、くゥーん、くゥーゥーーーん」
吠えない犬なので、くゥーん、と訴え続けていた。寂しかった日々を思い出し、会いたかったよー、会いたかったよー、というこの子は繰り返すのであった。
三四郎はぼくの腕の中でぐるぐると廻り、ぼくの身体に頭を押し付け、泣き続けた。そうだよね、そうだよね、よしよし、さんちゃん、帰ろうね、おうちに帰ろうね。
ということで、三四郎は事務所兼自宅のパリの中心地にあるアパルトマンに戻って来たのであーる。
いつものソファの上にあがって、自分の居場所を懐かしんでいる。
「やっぱり、おうちが一番だね。パパしゃんもやっと落ち着いたよ」

滞仏日記「ついに、さんちゃんとの再会~。さんちゃんが帰って来た、わんわんわん♪」



滞仏日記「ついに、さんちゃんとの再会~。さんちゃんが帰って来た、わんわんわん♪」

写真をご覧頂いて、わかると思うが、三四郎はぐっと痩せてしまった。しかし、これが理想体重なのだった。
「ムッシュ、三四郎は相当太っていました。おやつやごはんをあげすぎて甘やかし過ぎです。もっと私たちの会に参加させて、外で走らせてくださいね」
ということで、精悍でシャープになったさんちゃんなのであった。
三四郎は自分のベッドに行き、ソファに上り、キッチンの自分の居場所であるマットの上に行き、匂いを嗅ぎまわっていた。
「くゥーん、くゥーん、くゥーん、くゥーゥーーーん」
ぼくと目が合うと、会いたかったという愛情表現を繰り返す、実に可愛い生き物であった。
犬を飼ってよかった、と思える瞬間でもあった。
ぼくという面倒くさい人間をこんなにも待っていてくれる、愛してくれる、必要としてくれる生き物がいる、と思うだけで、涙が出る。父ちゃん、孤独だからねー。
この子はずっとぼくを待っていてくれたのだった。
嬉しいよ。ぼくは三四郎がいて、幸せ者なのであーる。
「そうか、そうか、さんちゃん、そうなのか」
三四郎のためにご飯を作り、散歩に連れ出し、ピッピとポッポ(おしっことうんち)をさせ、一緒に遊んで、一緒にお昼寝して、また、いつもの日々が始まるのであった。
いつもの日々、大事だ。
いいな、日常って、大好きだ。感謝感謝!
ありがとう、さんちゃん!

滞仏日記「ついに、さんちゃんとの再会~。さんちゃんが帰って来た、わんわんわん♪」

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滞仏日記「ついに、さんちゃんとの再会~。さんちゃんが帰って来た、わんわんわん♪」

つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
さて、来月のロンドン公演のためのリハーサルスケジュールが今日、決まりました。今月末くらいから、徐々にリハーサルが始まります。オランピア劇場の舞台に立ったあのフランスバンドのメンバーが揃います。ということで、父ちゃんは再び、休む間もなく、三四郎を観客にして、歌の練習の開始です。春はオランピア劇場、夏は日本公演ツアー、秋はロンドン、ケンブリッジ劇場、今年は駆け抜けます。そして、三四郎は再び、ぼくの歌を聴く毎日になるのです。レイン、レイン、雨が降る~♪、出て行くことが出来ない~♪。

滞仏日記「ついに、さんちゃんとの再会~。さんちゃんが帰って来た、わんわんわん♪」

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●「ボンジュール!辻仁成の春のパリごはん」
【BSP】9月11日(月)午前6:15~7:14
※初回放送 2021年6月18日

●「ボンジュール!辻仁成の秋のパリごはん」
【BSP】9月12日(火)午前6:15~7:14
※初回放送 2021年10月30日

●「ボンジュール!辻仁成の冬のパリごはん」
【BSP】9月13日(水)午前6:15~7:14
※初回放送 2022年2月23日

●「ボンジュール!辻仁成のパリごはん 2022春」
【BSP】9月14日(木)午前6:15~7:14
※初回放送 2022年6月17日

●「ボンジュール!辻仁成のパリごはん 2022夏」
【BSP】9月15日(金)午前6:15~7:14
※初回放送 2022年9月23日

●「ボンジュール!辻仁成のパリごはん 2022秋冬」
【BSP】9月16日(土)午後1:00~1:59
※初回放送 2023年2月17日

●「ボンジュール!辻仁成のパリごはん 2023春」
【BSP/BS4K】 「パリごはん2023SP」(9/16土曜20:00~21:29)
今回が、初回放送になる、新作です!!!!!



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