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滞仏日記「東京拠点計画のキッチン・スタジオは“ギャラリーT“と命名される」 Posted on 2023/09/19 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、東京拠点計画キッチン・ギャラリーの名前が「ギャラリーT」ということになった。
シマちゃんによる正式承認はまだだが、すでに来月号のダンチューで発表になる。(現在、印刷中なので、決定せざるを得ない状況・・・ふふふ)
そもそも、ぼくが日本滞在時にタイタン寮を使うことが出来なくなったので、友人のシマちゃんに相談したところ、彼が経営するレジデンスに一部屋あるのでそこを格安で借り受けることになった。これが、全ての始まり・・・。
内装を好きにしていいというので、キッチンがメインの部屋にしたい、ということでプランを出したら、シマちゃんが、いいね、と乗る気になった。
ところが、話がどんどん膨らんで、こんなカッコイイ部屋なんだから、ツジちゃんが滞在していない時期はそこをキッチン・スタジオとして貸すのはどうだろう、ということになったのだ。☜これが第二段階。
(ダンチューなどの料理雑誌や料理番組などに貸し出す、という意味ね・・・)
で、キッチン・スタジオだけだと面白くないので、画廊の要素も加えて、ぼくの過去の作品なんかを展示したらどうか、と提案をしたら、いいねいいね、となった。☜とにかく、シマちゃんとぼくは気が合うのだ。
というのも、シマちゃんがそこを表現者「辻仁成のお墓」にしたいと言い出した。
生きているのに、墓っていうのもどうかと思ったが、要はプライベートミュージアムのようなことを彼はイメージしていたのだ。
そこで、小淵沢にある倉庫から大量の過去作品(生原稿とか、昔描いた油絵とか、ギターとか、写真とか、資料約2トントラック一台分)を東京と福岡(事務所)に移送したのだった。☜ここが第三段階。すでに話が相当大きくなっている。
その工事が始まったので、様子を見に行くと、ぼくが寝泊まりしている部屋のドア前に女性が立った。☜凄い展開。
髪の毛の長い、大きなマスクをしている女性だった。いまだに、謎。

滞仏日記「東京拠点計画のキッチン・スタジオは“ギャラリーT“と命名される」

※ 父ちゃんと組んで、ワインアペロの会を、主催するソムリエのY氏、詳しいことはまだ内緒・・・。イケメンです。ぼくが拵えた軽いお料理と、Y氏が選んだ世界のワインで、アペロしませんか???



レジデンスが大慌てになったことは、先の日記でも書いた通り。(監視カメラで追跡をしたところ、部屋の前に45分、レジデンスの入り口に30分もいたことが判明)
「ツジちゃん、怖いね」
とシマちゃんは他人事のように言うのであーる。
さらにぼくがそこでみんなと打ち上げをしていると荷物が届けられたり、他にもいろいろとあって・・・、どうも、このレジデンスは一部の人たちのあいだですでに有名なようだ、ということが判明・・・。☜今更???
ここでギャラリーTをやったら、とてもじゃないが、父ちゃん、暮らせないだろうということになった。結論。☜ここが第四段階目なのであーる。
ということでこのギャラリーTがグランドオープンし、大きな宣伝をして、世間に広まるのであれば、ぼくは間違いなく、よそに住処を探す必要がある!
都内のホテルを借りて、そこからギャラリーTに通うということになるはず。
つまり、本末転倒!
東京拠点計画は大きく軌道修正を迫られることになるのだった。漫画みたいだけれど、これが今日までの主な流れである。
とはいえ、ギャラリーTはびっくりするくらい、素晴らしいキッチン・ギャラリーに仕上がってしまった。(工事責任者の須藤さん、佐藤さんの見事な仕事)
そこで、ぼくは別のホテルに滞在し、ギャラリーTには料理をしに通うことになったことをここで明らかにしておきたい。
つまり、奇しくも東京拠点にはならない、という、もの凄い展開なのであった。
「ツジちゃん、もっと東京に長く滞在して、活躍してよ」
と、最初にシマちゃんがぼくに言った言葉が今頃思い出される。あはは。
ま、ぼくのプライベートミュージアム兼キッチンというものはできたのだから、ま、よかったね。そういうことにしましょう。

滞仏日記「東京拠点計画のキッチン・スタジオは“ギャラリーT“と命名される」

※ 父ちゃんが座って本を読むのはデンマークの椅子じゃないと・・・。デンマークが生んだ世界のハンス・ウエグナーの椅子なのであーる。



つまりぼくは、タイタン寮に住めなくなった時点でこっそりシマちゃんのレジデンスを借りるだけにしておけばよかった、という話なのであった。
今、ぼくは都内の長期滞在型レジデンス、もしくはディスクレットなホテルを探している。
でも、この回りくどい方法があったおかげで、「ギャラリーT」は完成することになった。
ぼくがそこで腕をふるうのは、年に数回程度、と想像をする。
普段は、時間貸しにして、バーマンがそこに立ち、カクテルなどを提供する秘密のスペースになれば、いいのかもしれない。
ぼくの絵や詩や物語の一節を眺めながら、愛を語り合うスペース。ふふふ。
「さよならいつか」
二人でそれを読んで、愛に酔いしれて頂きたい。
えへへ。

滞仏日記「東京拠点計画のキッチン・スタジオは“ギャラリーT“と命名される」

※ まだ完成していません。照明がこれから、床も、壁も、いろいろと、お洒落になります。夜のムーディーな世界を、想像してみてください!



つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
ともかく、そのキッチン・ギャラリーをオペレーションするにあたり、愛情料理研究家の父ちゃんは今日、これから、イタリア食材専門店に新作料理のための食材を物色しに行く。その辺の、美味しい話はこの後の「退屈日記」でご紹介させて頂きます!!!
はい、お知らせです。
毎週、生放送ラジオやっています。ラジオ・ツジビル。ご視聴されたい皆さまは、オンライン村へ、どうぞ!!!

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父ちゃんが朗読する自著、「ミラクル」
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