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滞仏日記「みなさーん、ついにマジで、東京拠点計画ギャラリーTが完成してしまったのです!」 Posted on 2023/11/08 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、朝一番で、急遽、東京拠点計画のZOOM会議となった。
「今日は、ギャラリーTが完成しましたので、ZOOMですが、映像をご覧頂きたいのです!」
ギャラリーT責任者のAさんの溌剌とした声が頭頂まで駆け上る。え? 完成!?
朝一番の会議だったので、まだ半分寝ていたので、目が覚めた!!!
映像を覗いた。
でかいカウンターが中央に鎮座している。工事関係の方々の説明を受けた。おおお、実に凄いのが出来てしまったじゃないか。かっけー。
パッと見、画廊の中で、レストランをやるような構図になっている。
箱型の展示スペースが3つほどあり、一番大きな壁の中心に、照明の光が差している。
「辻ちゃん、ここに絵を飾りたいんだ」
本社から参加している友だちのしまちゃんが口を挟んだ。
真っ白な大きな壁だ。カウンターで料理を食べる人たちからすると、絵を飾る位置が、ちょうど、真後ろに位置している。
「何か、ここに飾る絵はない?」
なるほど、それは凄い展開になってきた。これって~、プライベート画廊じゃあーりませんかぁ?
もともとは、ここでぼくが暮らすということで、彼が貸してくれた賃貸マンションの一室だった。
でも、ぼくが日本にいる期間が短いから、ぼくがいない時にここで何かやろうよ、と腹黒い辻が持ちかけ、話が二転三転して、画廊キッチン、になったのだ。(最初は、貸しキッチンでもいいよね、という話だったが、転がった転がった、ここまで話が膨らんだ)
「しまちゃん、でも、伊勢丹さんで2月末に初個展をやるまで、初だしね、絵はよそでは出せないよ。やはり、画廊さんに失礼だから。伊勢丹が終わってから、何か、小さい絵を描こうか? ギャラリーTなら、イラストとかいいんじゃない。三四郎の似顔絵とか」
「いや、辻ちゃん、イラストじゃないでしょ。じゃあ、伊勢丹で展示する絵の中から、1枚、買わせてよ。それを展示するのならいいでしょ?」
「え?」
おお~、しめしめ、そうなればいいな、と思っていたのだけれど、さすがにそこまで図々しくは言えないよね。言えない。
だから、どうしようかな~、と悩んでいたら、しまちゃんの方から、買う、と言い出した。それは「願ったり叶ったり」ってことじゃないのか。
やった~、願ったり叶ったりだぁ。
「そんな~、そんなこと頼めないよ~。申し訳ないよ~」
腹黒い辻らしい、返答であった。☜この男、腹黒い。
「でも、辻ちゃん、何年も何年も長い時間を費やして、描いてきた絵なんだから、ここに1枚飾ってもいいんじゃないかな。ギャラリーTにふさわしい絵がいいな」
ということで、1枚は辻ちゃん思いのしまちゃんが買ってくれることになりそうだ。この辺は、伊勢丹のバイヤーさんと相談をしないとならないが。
待てよ、ということは、その絵は、永遠にここに展示されるということで、ミュージアム??? ☜腹黒い男がほほ笑んだ。みゅーじあーむ。

滞仏日記「みなさーん、ついにマジで、東京拠点計画ギャラリーTが完成してしまったのです!」



ところで今年はマジで、大変だったから、ロンドンライブのあと、疲れが出て、調子がいまひとつな腹黒い男であった(寝込んだりはしていません。ご安心ください)。
まず、右目が腫れて赤くなった。☜腹黒いからである。
それから、左目がピクピクしはじめた。もう、両目とも変なのだ。なんか、ミスタービーンさんみたいな感じなのである。☜腹黒過ぎるからであーる。
それからずっとおなかが調子悪くて、ついでに、ちょっと痔、笑。
「目がピクピク」で調べたら、ストレスか、脳に問題、と出ていて、ビビった。
「痔」も調べたら、ストレスもあるようだ。
腹黒いからいけないのだろうか・・・。腹黒い人は気を付けてください。痔にはボラギノール~♪
ZOOM会議の後、ぼくがソファで、倒れこんでいると、びたっと横にはりついて、心配してくれたぼくの愛犬。
腹黒い父ちゃんだが、さんちゃんの前では心白い父ちゃんになる。
散歩に連れて行かなきゃ。
ということで、さんちゃんと出た。
秋晴れであった。外の空気を吸って、坂道の先の太陽を見つめるのだった。
美しい秋の光である。腹の黒さがおさまっていく~ゥ。

滞仏日記「みなさーん、ついにマジで、東京拠点計画ギャラリーTが完成してしまったのです!」



カフェに入り、パスタを頼んだ。
あの絵たち、売れるのだろうか?
ぼくの絵なんか、ほしい人がいるのだろうか、と考え青ざめた。
そもそも、絵なんか、どうやって買ったらいいか、自分だって、わからないし。
フランスは普通の人でも絵を買う文化が大昔からあって、パリ市内、ギャラリーだらけなのだけれど、18世紀、19世紀の建物だから、天井も高く、絵を飾りやすい。
つまり、そういう建築的側面から、人が絵を買う風習が育まれてきたのだ。
絵を買う文化、いいですよね~。☜腹黒い男は囁く、ふふふ。
しかし、現実は難しい。ぼくの絵、たとえば、60号の絵は、130×97センチほどあるので、なかなか売れないに違いない。売れ残るに違いない。
小さい絵は買いやすいが、大きな絵は買いにくい。
それを考えると、大きな絵が、10枚ほどあるので、やばいかも、と思っている父ちゃん。なので、しまちゃんからの申し出は有難かった。

滞仏日記「みなさーん、ついにマジで、東京拠点計画ギャラリーTが完成してしまったのです!」



夜、しまちゃんからメールが入った。
「祈りという絵がいいね、これほしい」
しまちゃんにぼくの秘密のサイトを渡したのである。今回の全作品が掲載されている。
「うん、ありがとう」
持つべきものは友だちなのだ。
とまれ、ギャラリーTは完成しました。関係各位の皆さん、お疲れ様でした~。

つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
そんな腹黒い熱血父ちゃんからの、お知らせです。
「パリごはん2023SP」再放送について、NHKホームページに情報が上がりました。
https://www.nhk.jp/p/ts/6XW8NZ748V/episode/te/GJLWG4Q2QY/

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そして、一時間に及ぶ、熱血パパさんの、貴重なライブ映像!!!!
こちらのURLをクリックしてね。
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https://youtu.be/YIi9N-6kt5g?si=l3SPg4Wt-jpOqToS

自分流×帝京大学

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