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滞伊日記「うまいものがいっぱい、ローマは一日で食べきれない! グラッツェ・ミーレ」 Posted on 2023/12/30 辻 仁成 作家 パリ

滞伊日記「うまいものがいっぱい、ローマは一日で食べきれない! グラッツェ・ミーレ」

某月某日、とにかく、イタリアのローマにいるのだから、ローマなるものを思う存分食って、パリに帰ってやろうということになった。
三四郎は、いい迷惑だ、みたいな顔をして、仕方ないので、くっつてくる。
で、ナボナ広場近くのマルシェに行ったのだけれど、なんとなく、雰囲気が違う。
イメージしているようなイタリア人はいない。どこの人たちだろう?
たとえば、ノルマンディのマルシェとは違うなァ、と足を踏み入れて、すぐに気が付いた。
歩いていると、あちこちから、「ちょっと、お兄さん」のような感じで声がかかり、手が伸びてきて、引っ張られそうになったり、ま、商品を売りつけようとしてくる? (ごめんなさい、そういう感じがしました)
地元の人がいるのか、判断がつかなかったけれど、そこにいたお客さん、観光客が圧倒的に多かったのじゃないか、と思った。
ローマの中心部なので、しょうがないかな、とはいえ、身の危険は感じなかった。
シチリアのシラクーサのマルシェもかなり観光客相手ではあったが、地元民もそれなりにいた。
ここは避けようと思ってマルシェから出かけたら、一軒だけ、イタリアのおじさん風の人がやっている肉とチーズのお店があり、ま、明日、パリに帰るし、グアンチャーレとペコリーノ・ロマーノだけは買っとくか、と立ち寄った。
「高いね」
いきなり、ぼくが言うと、
「半分にしようか」
とおじさんが言った。
「それでも高いな。お金がそんなにないんだ」
「じゃあ、もう半分にするけど」
「いいの?」
「いいよ、カルボナーラ作るんでしょ?」
「うん」
「じゃあ、グアンチャーレも買わないと」
「高いもの」
「一番小さいやつにする?」
「どれ? いくら? 日本円が安いんだから」
「じゃあ、半分にするよ」
ということで、どんどん、小さくカットして、ま、息子と二人で食べる分くらいのグアンチャーレとペコリーノ・ロマーノを買うことに成功したが、それでも、16ユーロくらいしたかな。
8皿は作ることができる量だと思う。いいグアンチャーレは、パリで探すのが、ちょっと難しいのだ。仕方ない。

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最後に、もう一皿、パスタを食べることにした。
ぼくは気に入った店に、もう一度、必ず立ち寄る癖がある。
カルボナーラがおいしかったルチアーノはテラス席があり、犬がオッケーなので、そこで、玉ねぎとトリュフとリードボー(仔牛の胸腺)のスパゲッティを食べた。
おいしかった。で、甘いのを食べたくなり、シェフのおすすめの、卵黄のミルフィーユというのを注文してみた。
いやはや、さすがにカルボナーラがうまいだけあって、このミルフィーユもけっこう、おいしかった。
うまいもの、探せば、あるね。
昔のローマは、学生時代だったこともあり、貧乏旅行だったので、今とは比較にならないけれど、ゆですぎのパスタしか食べたことがなかった。
時代はかわり、おいしいアルデンテの店がたくさん増えた。
いいことである。

滞伊日記「うまいものがいっぱい、ローマは一日で食べきれない! グラッツェ・ミーレ」

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ところで、地元のイタリア人が必ず食べている野菜が、チコリと、もう一つ、アーティチョークのフライであった。
フランス人はああいう食べ方をしないし、ちょっと種類が違っているみたいだね。
こちらのアーティチョークは、新大蒜のようなものなど、いろいろとある。
これをそのまま、フライにしている。
あのアリクイの甲羅のような分厚い葉の部分が、フライにされることで、さくさくの芋みたいになる。これが、うまいのだ。
もちろん、中心部の柔らかいところはとろとろで、これまた、驚くほどにうまい。アーティチョークのフライって、ずるい食べ物だな、と思った。
ぼくは前菜がわりに、チコリのソテーか、アーティチョークのフライを頼んでいたかなァ。フランスだとポテトになるのだけれど、さすが、イタリアであった。
あと、ローマといえば、マリトッツオじゃないですか、笑。
ふんわりした触感のブリオッシュのパンを切り裂き、そのあいだに、たっぷり生クリームが詰め込まれたマリトッツオ、の生クリームね、あれ、実は甘くないのだ。
それがたまらない。
この甘くない、マリトッツオ、こそ、ローマのお菓子のナンバーワンと言っても過言じゃないが、今回の旅、マリトッツオを探す時間がなく、3回くらいしか食べることができなかったのが残念であった。☜三回も食ってる!!!!
あはは。

滞伊日記「うまいものがいっぱい、ローマは一日で食べきれない! グラッツェ・ミーレ」

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つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
ということで、短い滞在でありましたが、かなり、ローマを堪能した父ちゃんと三四郎でありました。三四郎は、すっかり痩せて、精悍に。父ちゃんは食べてるので、かわらずデブ、という感じです。今年の大イベントはこれですべて終わったかな、と思います。明日は、パリに向けて帰り、31日の右岸散歩動画配信に備えますね~、お楽しみに!

お知らせ。
「ボンジュール!辻仁成のパリごはん 2023SP」
再放送: 2023/12/30(土)  23:45~25:14 (初回放送日:2023/9/16)
放送波: BSP4K

12月から新BS放送が始まり、新しくなった4Kチャンネルでの放送になります。
4Kを受信できる方がご覧になれますが、視聴できる方はかなり限られているかと思います。すいません。
☟☟☟
https://www.nhk.jp/p/ts/6XW8NZ748V/episode/te/GJLWG4Q2QY/

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