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滞仏日記「パリに戻った父ちゃんと三四郎、息子がやってきて、3人で年末パリ・ごはん~」 Posted on 2023/12/31 辻 仁成 作家 パリ

滞仏日記「パリに戻った父ちゃんと三四郎、息子がやってきて、3人で年末パリ・ごはん~」

某月某日、小型機をチャーターして、パリに戻った父ちゃんと三四郎であった。☜ウソです。
でも、ロックスターはみんな自家用ジェットで飛ぶじゃないですか?
え、見栄を張るな~、ですって・・・、あはは、その通りでござる。
でも、仏伊間のジェットはまず間違いなく、小型なのであった。まるで自家用ジェットみたいだね、と三四郎に話す、父ちゃん。
三四郎、自宅に着いたら、自分のソファに飛び乗って、もういやだ、旅なんかいかない、と暗い目で訴えるのであった。あはは、彼には辛い旅だったと思う。
機嫌取りに、おやつをあげて、それから、いつもの公園に散歩に行ったのだった。
日常が戻ってきたのが、うれしいのか、いつもの公園で、いつもの仲間たちとかけっこをして、ああ、やっぱ、三四郎にとって、フランスは自分の国なんだな、と改めて思ったのであった。めでたし。

滞仏日記「パリに戻った父ちゃんと三四郎、息子がやってきて、3人で年末パリ・ごはん~」

滞仏日記「パリに戻った父ちゃんと三四郎、息子がやってきて、3人で年末パリ・ごはん~」



それにしても、毎日、スパゲッティばっかりだったので、胃が・・・。
で、息子から、年末だから、実家に行きたい、と連絡あり、一緒にご飯をしようということになったのであった。
「何が食べたい?」
「スパゲッティ」
「ちょっとイタリア戻りだから、和食でもええか? 刺身定食」
ということで、野本からもらったマグロの赤身と鳥の燻製があったので、それで和食をこしらえた父ちゃんであった。
やっぱ、自分ちはいいね。
旅は楽しいし、ホテル暮らしは優雅で悪くないのだけれど、帰る家(半事務所ですが)があるのは、とってもいいことである。
息子に、大掃除を手伝わせた。
事務所も物が増えたので、地下室に運ばないとならなかったので、一緒に運んだ。
「大晦日はどうするの?」
と訊いた。というのは、フランス人にとってクリスマスは正月のようなもの、で、大晦日から新年にかけてのカウントダウンは友達たちとパーティをやるのが、一般的なのだ。
「31日はみんなでベルサイユに行く」
「ほー」
「正月は? 来る?」
「ええと、友だちの家族に呼ばれているから、どうかな」
「おっけー」
「おせち、やるの?」
「来ないなら、作らない」
「ま、別に、いらないね」
「あ、でも、生蕎麦は買うよ、いつもの蕎麦屋さんに頼んだ。年越しそば、二人前」
「年越しはいないよ」
「だよね、頼んじゃったから、2日とかに食べるか? おせちは作らないから」
「うん。でも、生蕎麦でしょ」
あはは。
ということで、ぼくは二人前を31日と1日、二回にわけて食べることになりそう。で、息子が来ないなら、おせち、今年はやめることにした。
「三四郎におせちを作ってやろうとは、思ってる」
「へー、いいね。ドッグフードの?」
「いや、蒸し魚とか蒸し鶏とかで、それなりのおせちを作る」
「えー、いいなァ」
「来ないんでしょ?」
「じゃあ、夜に、行くよ、やっぱ」
ということで、元旦は、おせちは作らないとは思うが、ばらチラシでも作ってやるかな、と思った優しい父ちゃんであった。
日本人には日本人の正月があるものね。

滞仏日記「パリに戻った父ちゃんと三四郎、息子がやってきて、3人で年末パリ・ごはん~」

※ 事務所に戻ったら、デスクの上に、「オランピアライブスタッフ一同」と書かれた箱が・・・開けると、、なんと、クリスマスプレゼントに、オランピア劇場ライブの一日をまとめた写真集が、・・・、わ、涙腺崩壊、寸前。
すごい、ありがとう。一生の記念になるわ。

滞仏日記「パリに戻った父ちゃんと三四郎、息子がやってきて、3人で年末パリ・ごはん~」

滞仏日記「パリに戻った父ちゃんと三四郎、息子がやってきて、3人で年末パリ・ごはん~」

※ 今年は、マジで、頑張った父ちゃんでした。3月3日のギタージャンボリー、両国国技館、も、頑張るよ~。



食事の前に、息子と3時間くらい話し込んだ。
とくに何か問題があるわけではないが、今後のこととか、将来のこととか、未来の人生設計とか、笑、そういう話を中心に、仕事部屋で、ぼくはワインを舐めながら、息子は、コーヒーを飲んで、話し合った。
ぼくら、二人きりの家族なので、やはり、今後のことなど、話し合わないとならないことがてんこ盛りなのだった。
昨日までローマにいたのに、もう、パリにいる、不思議・・・。
「じゃあ、ごはんにするか」
ということで、マグロを切って、わさびをすって、鶏を焼いて、卵焼きを作って、あ、豚汁も作ったし、納豆も・・。ザ・ジャパン飯であった。
うまい~。

慌ただしい2023年だったが、2024年はぼくも息子もさらに忙しくなりそうな予感。息子は、1月6日に、大きなライブが控えている・・・。
1分でチケット完売なんだとか、最高記録らしい。でも、ミュージシャンにはならないんだ、と豪語している。
「パパを見て育ったからね」
「あはは、たしかに」
「ぼくは堅実に生きたいんだ。ユゴーも、ラファエルも、うちのメンバーはみんな、将来をちゃんと考えている。今は、音楽を楽しんでいるけれど、その世界がゴールじゃない、ぼくが生きるのは、家族と生きる世界」
「いいんじゃないの」
「ルイがカナダに移住するんだ。向こうの大学に行って、将来はカナダで就職するらしい。パパのライブ、行きたがっていたけれど、もう、無理かな。4月からカナダ」
「寂しいね」
「でも、自分の居場所を自分で見つけることが大事だから、ぼくも、一生懸命勉強をして、ちゃんと働くつもりだよ」
「いいね」
堅実な人生、ぼくにはなかったから、羨ましいな、と思った。自分を勘違いせず、ちゃんとわかっているところが、あいつ、らしい、と思った。
父ちゃんは、息子の、反面教師なのである。笑。
皆さん、良いお年をお迎えください!!!! 
2023年もありがとうございました。

滞仏日記「パリに戻った父ちゃんと三四郎、息子がやってきて、3人で年末パリ・ごはん~」



つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
31日の大晦日は、日本時間の19時くらいから、右岸散歩やります。年末の大晦日まで、働く父ちゃん。仕事と言えば、仕事ですが、ぼっちなので、何かしている方が楽しいし、特に問題ありません、お楽しみに! 
あ、紅白が裏番組だ!!!! えへへ。アーカイブで、どうぞ。
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