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滞仏日記「どんな一年になろうとも、前を向いて進んでいくぞ、と父ちゃん語りき」 Posted on 2024/01/05 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、毎年、元旦にこの一年をどう生きるか座禅を組んでイメージする。
今年は、大地震もあり飛行機の事故もあり、大変なスタートとなった。
悲しい新年の始まりではあるが、次の電柱へ向けて、歩を進めないとならない。
ぼくはこれを電柱作戦と呼んで、日々、実行してきた。
次の電柱まで、とにかく歩く、そこが、この瞬間の目標となる。人間はどんな苦境であろうと、目標を持つことが大事だ、と父ちゃんはいつも思って生きている。
そして、その電柱にたどり着いたら、また、その次の電柱へとひたむきに、ひたすら、歩いていく、これがぼくの「電柱作戦」である。
うさぎより、亀でいたい、昔の人間でもうしわけないが、楽な生き方には落とし穴がある。
フランスには電信柱がないが、それでも、人生には幾本もの電柱がある。
今日は、昨年の暮れに購入したスケジュール帖を開いて、一年の目標と歩くべきイメージを考える日とした。

滞仏日記「どんな一年になろうとも、前を向いて進んでいくぞ、と父ちゃん語りき」

滞仏日記「どんな一年になろうとも、前を向いて進んでいくぞ、と父ちゃん語りき」



年間スケジュール表には、おおざっぱな目標の柱をたてた。
もちろん、現在、決定している仕事はすべて書き込み、さらに、そのスケジュールをぬって、まだ、未定の計画をたてていくのだ。
あれをやってみたい、これをしてみたい・・・。
これら一つ一つは一本の電柱に過ぎないが、電柱には電線が張り巡らされているので、それらは全部、見事に、つながっていく。必ず、人生は一本につながるのだ。
エネルギーを先へとおくることができるのだ。。
身体は一つしかないので、そして、もう若くないし、貧血でよく倒れる虚弱体質なので、自分の身体は自分で守っていくしかない。
還暦を過ぎて随分と経ったが、まだまだ、やりたいことがごまんとある。
老けるわけにはいかないのだ。

滞仏日記「どんな一年になろうとも、前を向いて進んでいくぞ、と父ちゃん語りき」



ぼくがここまで続けてきた創作活動には批判や攻撃もたくさんあったが、どうしても、どうしても生きているうちに、子供のころに描いた創作世界を達成してみせたい。
「創作に国境線はない、表現やアートにジャンルや壁はない、すべてがつながる作品にしてみせたい」辻少年はそう思ってまず、ノートにまず詩を書いたのである。
そうだ、2024年こそ、夢を達成させるための大きなステップにさせないといけない。それが無理でも、そのイメージを広げないといけない、と思うのだった。
ヨガマットの上で座禅を組んで、あらためて誓った、今年も熱血父ちゃん。

滞仏日記「どんな一年になろうとも、前を向いて進んでいくぞ、と父ちゃん語りき」



そして、表現者である前に、ぼくは息子の父ちゃんなのであった。
なので、息子のためにも、一生懸命、生きないとならない。
離婚の直後、ぼくはいくつかの仕事をあきらめ「息子ファースト」で生きた。
その結果、あと10日ほどで、息子は、20歳になる。すごいことである。
しかし、20歳になっても、息子は息子なのだ。いくつもの問題がふりかかる、その都度、息子に頼られる、日記に決して書けない彼の悩みごともある。
彼の電柱作戦にも、今はアドバイザーとして、加わっている父ちゃんなのである。
成人しても、子供は子供、親である限り、信頼されれば、一生懸命こたえてやりたい。
それが親の仕事だ。
息子がこの国で、安心して生きていけるように、できるだけのことをしてやりたい。
今日はライブを控えた息子のグループのリハーサル日だった。
息子の仲間のユゴー君は、(オランピア劇場ライブ後から)父ちゃんの大ファンなので、ジャパニーズソウルマンのTシャツを毎日着て歌っている。(新しいのを次回、あげなきゃね)
みんなまとめて、父ちゃんが面倒みてやりたい。いい子たちなのだ。
うちのゼミ生徒も、応援しておる!!!
日本のおやじでも、若いミュージシャンたちに慕われておるのだ。がんばるしかないじゃんねー。あはは。まだまだ老けるわけにはいかないじゃんぬだるく!
「母さん、元気かい?」
「あのね、それが、そうじゃないのよ」
母さんに電話をしたら、こういう返事であった。
「恒ちゃんに迷惑ばかりかけておる。あんたにも心配かけとる」
「でも、いいんだよ。親のおかげで、ぼくらの今がある。今度はぼくらが母さんに返す番なんだ。当たり前のことだよ」

滞仏日記「どんな一年になろうとも、前を向いて進んでいくぞ、と父ちゃん語りき」

※ 息子の音楽仲間のユゴー君、うれしいね、これ着て歌ってくれている。熱血青年であーる。

絵を描くみたいに、年間スケジュール表がうまっていった。
元旦から、雨が続いているが、毎日、計画通り、走っている。ヨガマットで、スクワットや腹筋もやっている。
よく倒れるので、メニエール病が疑われているが、まずは、元気だ。
若くないが、(もみあげは真っ白になったが)髪の毛はまだ黒い。
メガネをかけないでも、(一応、なんとか、無理したら)字が読める。
腰が曲がらないように、強靭な肉体を維持して、今年を駆け抜けてやろうと思っている。
なので、スケジュール帖には、熱血、と書いた。
よし!

滞仏日記「どんな一年になろうとも、前を向いて進んでいくぞ、と父ちゃん語りき」



つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
ボルドー公演、コルシカ島公演などもお話を頂いておりますが、まだ日程までは出ておりません。日本での単独公演もまだ決定に至っておりません。すいません。
現在、決まっており、父ちゃんのスケジュール帖に記載されたものは、
2月28日からの新宿・伊勢丹アートギャラリーでの個展、
3月3日、両国国技館、ギタージャンボリー、出演、
3月6日、ツジビル・ライブ、二回公演。(売り切れ)
4月19日、ロンドン、ウオーターラッツでの公演、
となっています。

滞仏日記「どんな一年になろうとも、前を向いて進んでいくぞ、と父ちゃん語りき」

※ 晴れ間は必ず訪れます。



自分流×帝京大学