JINSEI STORIES

滞仏日記「息子の誕生日会を、シークレットで計画している、父ちゃん&三四郎」 Posted on 2024/01/13 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、明日、1月の14日は、息子の誕生日なのである。
その日は、息子君も仲間たちが祝ってくれる、とかで、そりゃあ、そうだね、会えない、ということが判明したのだった。おお・・・・。
そこで、急遽、前日の土曜日の夜(この日記を書いているのは、フランス時間金曜日の夕刻)に、うちでささやかにお祝いをやろう、ということになった。
で、父ちゃんが考えたのは、シークレット誕生日会、であーる。ふふふ。
(シークレットなのに、ここに書いていいのかって??? この日記を息子が読んでないことを祈っていまーす。たぶん、まだ漢字が読めないので、わからないはず)
20歳と言えば、人生において、もっとも大事な一日だ。
10歳の時から、息子はぼくと二人きりで誕生日を過ごしてきた。
そういえば、10歳の時に、剣道の達人、まつうらさんに頼んで、近くの体育館で、仏人&日本人ママ友たちの力を借りて、クラスメイト10人くらい集めて、誕生日チャンバラ・パーティを開いたことがあったっけ。
あれは、大イベントであった。
離婚直後で、ぼくが体調崩していたので、そこまで親しくもなかった日本人のママ友たち、家庭教師の先生とかが、集結して、受付とか、飾り付けとか手伝ってくれたのだ。ああ、懐かしい。皆さん、ありがとうございました。おかげで、あいつ、20歳です!!!
まつうら師範が、子供たちにチャンバラを教えるというめっちゃくちゃフランス人受けする誕生日会となって、もちろん、大盛況だった。

滞仏日記「息子の誕生日会を、シークレットで計画している、父ちゃん&三四郎」

※ 日本人のママ友さんが、わざわざ、祭りの法被を調達してくれたのです!!!
 最高でしたね。

滞仏日記「息子の誕生日会を、シークレットで計画している、父ちゃん&三四郎」



14日、月日が流れ、10回目の、20歳のバースデーなのであーる。
ここは、もちろん、例年通り、二人で祝ってもいいのだけれど、ぼくと息子が二人きりで生活をしなくてはならなくなったその時から、今日までぼくらを応援してくれた人が何人かいる。
できれば、20歳だし、盛大に祝ってやりたいじゃあーりませんか。
手を差し伸べてくれた方々、多くはないけれど、思い当たる人が何人かいるので、その人たちに、こっそりと、朝からSMSを送り続けている、父ちゃんなのであった。
「えええ、土曜日かァ」
と彼が10歳の時に住んでいた地区のカフェのオーナー、ジェレミーが言った。
離婚直後は、ジェレミーが息子と同じ小学校の出身だったので、よく、息子の相談相手になってくれたものだった。
その頃の学校の先生、息子が大好きだったミッシェル先生、とか・・・。(お母さんのように懐いていたのだった)
しかし、しかし、日が悪すぎた、土曜日、なのである。みんなもうスケジュール入ってしまっている。
そこで、ご近所で、よくうちに遊びに来ていた、ニコラ君と、マノンちゃんに連絡をした。
マノンちゃんは、調整するわ、と言ってくれた。
「でも、ニコラはもう、遊ぶことに命がけだから、ムッシュ、難しいかも・・・」
となった。
他にもいろいろとお招きしたかったが、コロナ禍以降、パリを離れてしまった人も多い。
そうやって、考えると、息子が親しくしていた日本人があまりに少ないことに、今更ながらに、気が付いてしまった。
ま、そうだろうね。

滞仏日記「息子の誕生日会を、シークレットで計画している、父ちゃん&三四郎」

※ さんちゃんには、エッフェル塔お菓子をプレゼント!

滞仏日記「息子の誕生日会を、シークレットで計画している、父ちゃん&三四郎」



結局、人が集まらないので、大規模な誕生日会は無理だということは決定した。二コラは、当日の18時くらいに結果がわかる、ということだった。
ということで、誕生日プレゼントくらいは何か喜んでもらえる記念になるものをあげなきゃ、と思った、父ちゃん・・・。
ラッキーなことに、パリはいま、セールがはじまったばかり(おとといから)であーる。どこのブランドも50%オフ、しかも、景気が悪いせいか、どこもがらがらだというではありませんか。
さっそく、セールに出かけたのだけれど、これが、20歳の誕生日プレゼント、あああ、もう、わからない。20歳の男の子が欲しいものって、なに?
恋人はいないみたいだけれど、音楽をやっているから、何かかっこいい洋服とか、喜んで貰えるじゃないか、と思った、父ちゃんであった。
しかし、難しい。
今時の子が喜ぶ、服って、どんな?
わからないので、マノンに、相談をした。息子より、二歳下なので、世代が近いから、ちょっとはわかる、かもしれない。
「ムッシュ、それは男の子と女の子じゃ、ぜんぜん、趣味が違うからわからないですけれど、いつも彼はKENZOのセーターばっか着てません?」
「そうだね」
「しかも、色褪せてますよね」
「ああ、そうだね。昔、KENZOが生きていた頃に会ったことがあって、それが彼には誇りみたいな・・・」
「なるほど、でも、最初、真っ白だったのに、今、なんか、灰色っぽい・・・」
ぐーん、と暗くなった父ちゃんであった。

滞仏日記「息子の誕生日会を、シークレットで計画している、父ちゃん&三四郎」

滞仏日記「息子の誕生日会を、シークレットで計画している、父ちゃん&三四郎」



セーターを買えばいい、というマノンのアドバイス、正しいかもしれない、と思った、父ちゃんは、セール期間中のデパートで、セーターを探したのであった。
現在、まだ、探している最中なので、見つかり次第、ご報告させていただきます。
20歳のシークレットバースデーパーティ、成功しますように。
応援ください!!!

つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
いやー、プレゼントって難しくって、なかなか見つけられずに、今現在、超悩んでいるところなのでありまーす。何か、いいアイデアあれば、おしえてくださいませ。
ということで、お知らせです。
●小説「十年後の恋」集英社文庫版が1月19日全国発売。
●小説「東京デシベル」がイタリア、Rittoli社から刊行されました。
●2月28日から、新宿伊勢丹のアートギャラリーで個展(詳しくまたご報告します)
●3月3日、両国国技館、ギタージャンボリー出演。(検索ください)
●3月6日、ツジビル・ライブ(SOLD OUT)
●4月19日、ロンドン、ライブ。詳細はこちらから☟

https://www.eventbrite.co.uk/e/2gz-tsuji-and-hide-live-japanese-music-in-london-tickets-790578039197?aff=oddtdtcreator

●6月30日、パリ・ライブ決定(詳細、待って)
●あ、7月3日に、リヨンでのライブが決定しました! 
以上です。

滞仏日記「息子の誕生日会を、シークレットで計画している、父ちゃん&三四郎」



自分流×帝京大学