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退屈日記「息子の誕生日プレゼントを探し回った父ちゃん。悩んで悩んで、結局」 Posted on 2024/01/13 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、息子のシークレット誕生日会を計画したのはいいが、なかなか人が集まらない、という悲惨な結論になった。あはは。(マノンちゃんと、スタッフの無口な岡っちさんが来ることに、笑)
それはいいとして、大事なのは、プレゼントを探しに、オペラ地区とマドレーヌ地区とを結ぶ、お買い物と言えば、サントノーレ大通りへ、と向かった父ちゃんであった。(三四郎はお留守番)
ということで、何もアイデアがなく、出かけたので、高級ブティック街で、途方にくれた。
というのも、息子君が喜ぶようなヤングな服屋さんがない!!! 
グッチとかシャネルとか、これはダメだ、高級すぎる。
とぼとぼ歩いていると、目の前に、オランピア劇場があった。おおお。懐かしい、去年はお世話になりました、としばらく見ていたら、思い出した。
マドレーヌ寺院の近くに、そういえば、ZARAがあったじゃないか。
ZARAならセールじゃなくても、安く買うことができるし、いいねいいね、と気を取り直して歩いていると、不意に「KENZO」の看板が、まじで、引き寄せられるように、目の前に出現したのであーる。
マノンちゃんとのやりとりが再び頭をよぎった、父ちゃん。
(ここから、再現フィルム)
「ムッシュ、それは男の子と女の子じゃ、ぜんぜん、趣味が違うからわからないですけれど、いつも彼はKENZOのセーターばっか着てません?」
「そうだね」
「しかも、色褪せてますよね」
「ああ、そうだね。昔、KENZOが生きていた頃に会ったことがあって、それが彼には誇りみたいな・・・」
「なるほど、でも、最初、真っ白だったのに、今、なんか、灰色っぽい・・・」

退屈日記「息子の誕生日プレゼントを探し回った父ちゃん。悩んで悩んで、結局」

退屈日記「息子の誕生日プレゼントを探し回った父ちゃん。悩んで悩んで、結局」

※ 22年のクリスマスプレゼントでした。勘違い。調べたら、12月15日に、買ってあげたのです。この時の写真ですが、白ですよね。しかーし、今、白とはいえない、やや、灰色っぽい白濁系の白です、笑。くすんでます。洗ってるのかなァ、洗濯機では洗えないから、クリーニングに出しなさい、と教えてあげよう・・・。



ということで、ずっとあの白いKENZO(今はくすんで灰色になっているの)しか着てない息子を思い出し、ここは奮発して、新しいKENZOを買ってやろうと思った、父ちゃんなのだった。(財布と、相談・・・、高そうだね。でもセールだし・・・)
ところがところが、入ってみると、セールコーナーがない!
店員さんをつかまえ、小さな声で、「セールってやってないんですか?」と訊いた。
「あの、隠れた場所で、こっそりやっているんです。セールという発想がよくないので」
「ほー」
ということで、柱の裏に連れていかれると、おおお、いろいろとあった。
「40%引きです。でも、セールじゃないので、メールで会員みたいになってもらう必要があります」
めんどうくさかったが、40%引きに負けたので、会員になった父ちゃんだった。
で、いつも着ている白いセーターの黒バージョンを発見! えええ、いいね。
店員さんと相談をし、結局、それをプレゼントにすることに決めた、父ちゃんであった。
「間違いなく、息子さん、喜びますよ」
「そうですか、良かった。いつもこれの白いのを着ていて、もう、白じゃなく、ちょっと灰色っぽいんです」
店員さん、灰色に反応、目が見開いて、鼻の孔も広がって絶句・・・。
「あ、でも、それは、KENZOにとってはいい話ですよ。いつも肌身離さず着て貰えているわけですものね。じゃあ、新しい黒を着て、この寒い冬を乗り切ってもらいましょうね」
いい人だった。

退屈日記「息子の誕生日プレゼントを探し回った父ちゃん。悩んで悩んで、結局」

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退屈日記「息子の誕生日プレゼントを探し回った父ちゃん。悩んで悩んで、結局」

ということで、KENZOのセーターをゲットして車に戻る途中、ホテルリッツが新しくオープンさせた、話題のケーキ屋(?)を発見、ここのマドレーヌが大変有名で、長蛇の列だったが、父ちゃん、息子のために並んで、小さなケーキをゲット。
このお店、国虎屋の野本の娘さんがパティシエールをやっているのだ。
めったに、パリ中心部に出ない父ちゃんなので、黄金色に輝く、サントノーレ周辺の買い物街のきらびやかさに、ちょっと眩暈を覚えてしまった。早く、帰ろうっと。
しかし、これで、誕生日会は、大成功間違いなし。
明日の日記をお楽しみに! 

退屈日記「息子の誕生日プレゼントを探し回った父ちゃん。悩んで悩んで、結局」

退屈日記「息子の誕生日プレゼントを探し回った父ちゃん。悩んで悩んで、結局」

退屈日記「息子の誕生日プレゼントを探し回った父ちゃん。悩んで悩んで、結局」



つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
20歳ですからね、「二十歳の原点」なんて言いますからね、ここから、彼は大人路線に突き進んでいくことになるわけですから、盛大には無理ですが、思い出に残るお祝いをしてあげたいと思った、父ちゃんなのでありました。めでたし、かな。
喜んでくれるといいなァ。
さて、いつものごとく、父ちゃんのスケジュールです。
●小説「十年後の恋」集英社文庫版が1月19日全国発売。
●小説「東京デシベル」がイタリア、Rizzoli社から刊行されました。
●2月28日から、新宿伊勢丹のアートギャラリーで個展(詳しくまたご報告します)
●3月3日、両国国技館、ギタージャンボリー出演。(検索ください)
●3月6日、ツジビル・ライブ(SOLD OUT)
●4月19日、ロンドン、ライブ。詳細はこちらから☟

https://www.eventbrite.co.uk/e/2gz-tsuji-and-hide-live-japanese-music-in-london-tickets-790578039197?aff=oddtdtcreator

●6月30日、パリ・ライブ決定(詳細、待って)
●7月3日、リヨンでのライブも決定!!!
以上です。

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