JINSEI STORIES

滞仏日記「日本とこんなに違う、在仏日本人家庭のお客さん、おもてなし術」 Posted on 2024/02/01 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、夜に、知り合いの送別会があり、6人ほど、事務所に集まることになり、シェフを司ることになった。
今日は午前中から足りない食材を買いにトマのワイン屋に行き、パリで一番おいしいと言われるパテ屋でパテ・オン・クルートを買い求め、肉屋魚屋で食材を仕込み、八百屋でハーブなどをそろえ、事務所のキッチンで、午後からコツコツと料理を始めたのだけれど、この料理というのがやりはじめると、必ず、足りない食材が出てきて、また、スーパーに走る、という感じになるのだった。
午前中は絵の道具も買わないとならなかったので、遠方まで三四郎と3時間往復で歩き、笑、帰りにあちこちで買い物をしてきた、というのに、作りだしたら、あら、レモンがない、とか、ありゃ、鴨が足りない、とか、せっかく鴨の脂が出るので、ジャガイモ揚げたらおいしくなるよねー、とか、その都度、近くのスーパーを往復するものだから、顔なじみの店員さんに、
「また?」
と笑われてしまった、父ちゃんなのであった。
そこに呑もちゃんこと国虎屋の野本から、ラインの着信!
「今夜、呑もか?」
あはは。
「今日な駐在さんの送別会。一度、君もあったことある人、来る?」
「行く」
ということで、あいつまで、参加することになった。
慌てて、スーパーに引き返し、鴨をもう一枚、買ったのであった。
やれやれ。

滞仏日記「日本とこんなに違う、在仏日本人家庭のお客さん、おもてなし術」

滞仏日記「日本とこんなに違う、在仏日本人家庭のお客さん、おもてなし術」



日本人はこうやって頑張ってしまうのだけれど、フランス人の家に招かれると、これがかなり、イージーなのである。
前回のチャールズの家のバオ(中華パンだが、ぐちゃぐちゃだった、笑)には皆さんも驚かれたと思うが、そもそも、最初から、日本みたいに全部準備が終わっているご家庭は珍しく、だらだらと、アペリティフから始めるのが一般的で、それも、ピーナッツとか、チップスがぽんと置かれているだけで、白ワインとかから、はじまって、そのワイン一杯が長い長い、一本あくのに、2時間くらいかかる家もある。笑。話しがメインなのだ!
批判ではなく、お国柄というか、のんびり、というか、おしゃべりが大好き。
で、ア、ターブル(着席!)となっても、出てくるものは、かなりシンプルな、煮込みとパンとチーズで終わり、っていうのがザラで、これも批判ではないのだけれど、日本人のお招きと比べると、かなりシンプル。
で、招かれた方もワインを一本ずつ持って集まるので、お酒ばかり、進む。
でも、父ちゃんは日本人なので、フランス人が来ても、日本人が来ても、最大限のおもてなしはしたいと思って、いつも、がんばってしまう。
とりあえず、野本が参加となると、お酒はかなり必要になる。
トマの店で、ボルドーの「ミランボーパパン」という近年では稀にみるコスパの良い赤を二本、泡系はボンマルシェで二本、ドラピエのブリュット・ナチュールを仕入れ、白はサン・ロマンのマグナムを一本、コート・ド・ニュイを一本、これだけあれば、あいつは大喜びであろう。
駐在員さんも大酒のみなので、はばかることなく飲んでもらいたいから、多めに仕入れておいた。(残ったら、ライブ開けに、ぼくが頂きます)
今日で一月は終わる。明日から2月になるので、ライブ一か月前となり、ぼくは禁酒ならぬ減酒時期に入る。あはは。

滞仏日記「日本とこんなに違う、在仏日本人家庭のお客さん、おもてなし術」

※ 歩き疲れた三四郎、最近、人間みたいに、枕に頭を載せて寝るんです!!! 変わった犬だァ。笑。



今日のぼくの作戦は、お酒が好きな駐在さんと野本がいるので、手の込んだ料理ではなく、お酒のアテになるようなものを、前菜&アミューズでずらりとならべ、フランス人家庭のように、ワインで2時間くらい引っ張ろうというイメージ。
そのあとに、鴨のタタキと、パスタで、さらっと終わる。
デザートは駐在さんの奥様が持ってきてくださる、というので、さすが日本人、気配りに感謝しつつ、利用させていただき、会を22時くらいに締めたい、・・・あはは。
ちょうど、三四郎のおしっこタイムなので、これに便乗し、解散へと向かう。
さんちゃんも、生きているのだ!
さてと、まもなく、皆さんがやってくるので、料理に戻らないと、失礼します、笑。
つづきは、次の日記で。

滞仏日記「日本とこんなに違う、在仏日本人家庭のお客さん、おもてなし術」



☟☟☟

人生はつづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
日本はもう二月になりましたね、個展月となりました。ライブもあるので、まもなく、日本へ向かわないとなりません。体調を整え、禁酒ならぬ減酒で、皆さんとお会いしたいと計画しているところです。体調は万全ですので、ご安心ください。
さて、今年の父ちゃんのスケジュールのお知らせです。
●小説「十年後の恋」集英社文庫版が1月19日全国発売。
●小説「東京デシベル」がイタリア、Rizzoli社から刊行されました。
●2月28日から、新宿伊勢丹のアートギャラリーで個展(詳しくまたご報告します)
●3月3日、両国国技館、ギタージャンボリー出演。(検索ください)
●3月6日、ツジビル・ライブ(SOLD OUT)
●4月19日、ロンドン、ライブ。詳細はこちらから☟

https://www.eventbrite.co.uk/e/2gz-tsuji-and-hide-live-japanese-music-in-london-tickets-790578039197?aff=oddtdtcreator

●6月30日、パリ・ライブ決定(詳細、待って)
●7月3日、リヨンでライブ!!!
以上です。

自分流×帝京大学

滞仏日記「日本とこんなに違う、在仏日本人家庭のお客さん、おもてなし術」