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退屈日記「フランスにおける、アペロは、いわゆるアペリティフとは違うのだ」 Posted on 2024/03/31 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、アペロというのは、まァ、アペリティフ(食前酒)の略なのだけれど、日本だと夕食の前にちょっと飲む食前酒をさすが、フランスの場合、もっと違う意味になって、たとえば、夕食の前に、長い時間、おつまみをつまみながら、ワインなどを飲んで、かなりの長い時間(もしかすると夕食よりも長い時間)だらだら飲みながらおしゃべりをすることを「アペロ」というのであーる。
夕飯は食べないが、アペロと称して、仲間を集め、ワインとおつまみで、だらだら飲むのをアペロという場合もあるし、夕食に招きつつも、メインの夕食に行く前に、サロンなどで、だらだらつまみ呑みをするのをアペロという場合がある。どちらにしても、長時間の飲み会となる・・・。
つまり、アペロは、飲んでつまんで談笑をする、ことを指している。
アペロだけで終わる会も多いし、そこから「じゃあ、なんかごはんを食べちゃおうか」となって、夕食に突入する場合を、「アペロディナトワール」と呼ぶ。
今日は、チャールズの奥さんのミハーと共通の知り合いマルティンヌがやってきてアペロとなった。(チャールズも来たが、彼はお店があるので、お茶だけのんで、軽いおつまみを作って、店の営業がはじまる前に、一人早退)
ぼくらのアペロは16時からはじまり、夕飯の時間前の19時半で、終わった。長い、とにかく。アペロは長いのであーる。3時間半も!
チャールズがちゃちゃっと作ってギフトしてくれたのが、こちら、鮟鱇の小鉢スープであった。美味かった!

退屈日記「フランスにおける、アペロは、いわゆるアペリティフとは違うのだ」

※ チャールズが持ってきてくれたワイン、おいしかった。彼はいつも、こういう会に、おいしいものを届けてくれます。マジで、いいやつ! あはは。

退屈日記「フランスにおける、アペロは、いわゆるアペリティフとは違うのだ」



ぼくはミニサンドを作ったり、チーズのサブレを出したりした。カウンターキッチンを囲んで、みんなでワイワイ、騒いだのだった。
とくに話す内容はないけれど、フランス人はおしゃべり好きなので、なかなか、話がとまらない。
話がどんどん脱線していくのも、アペロの醍醐味。笑。
アペロのいいところは、気張って料理を作らないでいいことで、その辺にあるものを適当に持ち寄って、出すことが多い。
ポテトチップスとか、ミニトマトとか、そういうものがテーブルに並んで終わるのだけれど、18時を過ぎた頃に、小腹がすいた、とマルティンヌが騒ぎだしたので、ぼくがマルシェで買ったイカを使って、自慢の料理「フランス風イカ飯」を少量作った。
玄米のごはんで普段は作るのだけれど、玄米がなかったので、今日はパスタにした。一人、30g程度かな・・・。
アペロからなんとなく夕食に突入しちゃったので、これを「アペロディナトワール」と呼ぶ。

退屈日記「フランスにおける、アペロは、いわゆるアペリティフとは違うのだ」

※ ごはんするつもりはなくて、あるもので、作ったので・・・、アペロディナトワールとなります。えへへ。

退屈日記「フランスにおける、アペロは、いわゆるアペリティフとは違うのだ」



マルティンヌは、ミハーに紹介されたご近所のマダムなのだけれど、一人暮らしで、ぼくより10歳程度年長なのだが、生涯、独身を貫いたビジネスマンで、1000平米のお屋敷に一人暮らししている。(わんちゃんがいる、笑)
その生き方が大変ユニークだったので、今日の話題は、一人で生きることの意味、みたいなことになった。けっこう、学ぶものがあった。
「私は、家族を作って、普通の幸せを求めるより、自分の好奇心に忠実に生きている方が圧倒的に好きで、気が付いたらこの年になってしまった、という感じ。家が二つあるので、子供もいないし、一つを弟にあげようと思ったんだけれど、私の傍で暮らすのは嫌だと固辞されちゃった。そんな人生だけど、せいせいしているの」
そうそう、マルティンヌが二つ家を持っているのは、目の前に大きな家を建てられると、海が見えなくなるというので、自分の家の前の古い家も買っちゃったのである。そのくらい、大金持ちなのだ。
お金持ちというのは、そういうことをやる。お金の使い方がわからない、と嘆いていた。ぼくは、やれやれ、と思った。
気難しいマルティンヌ、ぼくは嫌いじゃないが、弟さんも自由人なので、姉の傍で暮らしたくはなかった、のであろう。よく、わかる。笑。
ともかく、変わり者が多い、フランス人たち、今日のアペロはフランス人の孤独感について、よく理解できた会となった。
全員で、片づけをやり、19時半ちょうどに、解散となった。
おつかれさまでした。

退屈日記「フランスにおける、アペロは、いわゆるアペリティフとは違うのだ」

※ ミハーさんはお子さんたちにご飯を、マルティンヌさんはわんちゃんにご飯を、ぼくも、三四郎に、・・・ごはんの時間だね。さんちゃんもお疲れ様でした。



つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
今日から、フランスは夏時間に変更になりました。日本との時差は7時間に縮まっています。今日はこれからとなりの県までいき、ちょっと大きな仕事があります。ラジオもあるので、外出先からになります。けっこう、バタバタしております。時間を間違えないように、しないとね。

さて、そんな熱血ワイン父ちゃんからのおしらせですが、
フランスツアーが6月に行われます。パリは、ベルビルにある老舗の劇場「Le Zebre」にて行われます。チケットが発売になりました。在仏、在欧の皆さん、お時間があれば、ぜひに。
☟☟☟☟☟
●6月30日、パリ、Le Zebre チケットはこちらから、どうぞ!
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https://billetterie.seetickets.fr/tsuji-in-paris-concert-le-zebre-30-juin-2024-css5-envolproduction-pg101-ri10301135.html

そして、7月3日、リヨン、La Marquise
チケットはこちらから、どうぞ!
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https://billetterie.seetickets.fr/tsuji-in-lyon-concert-la-marquise-peniche-03-juillet-2024-css5-envolproduction-pg101-ri10301835.html

●7月20日から7月28日まで青山・新生堂画廊にて、個展!
●7月後半から8月前半にかけて、日本ツアー、まもなく発表!
●9月後半、コルシカ、アジャクシオ、ライブ。(詳細、待って)
●4月19日、ロンドン、ライブ。詳細はこちらから☟

https://www.eventbrite.co.uk/e/2gz-tsuji-and-hide-live-japanese-music-in-london-tickets-790578039197?aff=oddtdtcreator

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