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滞仏日記「人づてに、興味がない、と言われた。いや~、俺は老害なのか!」 Posted on 2024/05/03 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、アボカドの種を育てていたが、根っこが生えたので、土の入った鉢植えにうつして、水をあたえた。
アボカドは食べたら、いつも種を捨てていたので、その大きな種からもしも、新しいアボカドができるなら、すごいことじゃないか、と思ってはじめてきたことだけれど、ここまで来たか、と感動しかなかった。
こういうことで幸せになれるが、これは、お金では買えない。
ITの若い社長に、今の若い子はZOOも冷静と情熱のあいだも、誰も知らないですよ、といきなり言われた。
別に驚かないけれど、なんでいきなり、と思った。言いたかったのだろう。
暇な人は多くて、昨夜も知り合いに、有名な画商を紹介しましょうか、とSMSで言われたので、たぶん、ぼくのことなんか嫌いだと思うけど、任せるよ、と返したら、翌朝のメールで、「興味ない」というお返事でした、力になれずすいません、と言われて、笑った。
ぼくから、頼んだことじゃないのに、なんでいちいち不愉快な気持ちにさせられないとならないのだろう。笑。
こういうのに毎日かかわっていると、身が持たないので、引退をする。
ところが、アボカドは、鉢植えの中から、青い葉っぱを出し始めている。
これはすごいことだ、と感動しかない。
ぐんと伸びているこの青い葉に敬意を表して、背筋は伸ばして生きてやろうと改めて、思ったら、なんと、曲ができた。

滞仏日記「人づてに、興味がない、と言われた。いや~、俺は老害なのか!」

※ ここから、下のような感じになった。

滞仏日記「人づてに、興味がない、と言われた。いや~、俺は老害なのか!」



引退ライブをやるというのに、ものすごく今の自分を言い表せることのできた曲が生まれたので、びっくりした。
今日は大風邪の終わりかけだけれど、ギターを抱えて、形にしていった。
十年ぶりくらいの新曲じゃないだろうか・・・。
あはは。
歌詞がまだ100%出来てはいないので、タイトルも決まってないけれど、憎しみあうのは今日で終わりにしようよ、泣いたり不幸になったり哀れになったりするの今日で最後にしようよ、という歌いだしなんだ。
最後のステージの一番最初に、歌うしかないね。
それにしても、アボカドが育ってきたら、どこか土地に埋めないとならない。ノルマンディの田舎にはたくさん土地があるから、どこか許可がもらえる場所に植えて、たくさんアボカドの実がなるまで、育ててみたい。
このコンクリートだらけの硬質な世界にいると、自然だけの力でここまで成長できるものを目撃できることはもはや、驚異的な気にさえなる。
今日は、フランスの人たちと電子会議があった。
すると、邪魔をする者がいた。
三四郎である。
ぼくが発言しようとすると、足元をひっかき、ふんふんふん、ととにかく、うるさいのである。
やめれ、と小さな声で言うと、
「ムッシュ・ツジ、何か?」
と言われるので、しょうがないから、三四郎も出席させることにした。
「ほら、ここに座って、会議中だから」
と椅子に座らせると、パソコンの画面をじっと見つめている。まじで、参加したかったんやね。おとなしい・・・。わかってるんだろうか???
あはは。

滞仏日記「人づてに、興味がない、と言われた。いや~、俺は老害なのか!」



そういえば、「高齢者は老害化する前に集団自決、集団切腹みたいなことをすればいい」という発言をして物議をかもしているコメンテーターさんか、大学の先生がいたと思うのだけれど、はじめてあれを聞いた時は、すごいこと言う人だな、と思ったぼくだったが、あれから少し時間が立ち、自分も60代半ばに差し掛かろうとしていると、もう老人の側にいる方が近かったりするから、集団切腹に加わらないとならないんだな、と思って、笑った。
たぶん、それくらい、政治の世界とかも老害化は進んでいるし、少子化のこの世界が大変なんだよ、子供が抱える未来をお前らも考えろよ、というような意味合いが込められているのだろう。
時代が変わったんだなと認識をした。老害化って、ま、自分がそう言われるのは嫌だから、引退、はタイミング的にばっちりなのかもしれない。
「辻さんの歌なんか、もう、誰も聞かない時代なんですよ」
そうだろうな。この間も、ZOOには飽きた、とラジオにコメントいただいたし、飽きたと言われても歌わないとならないような自分は、嫌だし、老害かもね。
別に、媚びてまで生きることはできないから、アボカドを育てるんだと思う。
でも、年を重ねても、素敵だよね、と言われる男になりたい。
ぼくの夢は、世界で一番セクシーなおじいさんになること、だったからね。
そう発言したら、週刊女性誌に、キモイ、と書かれた。
あはは。
もう、どうでもええわ。
ともかく、風邪を治そう。

滞仏日記「人づてに、興味がない、と言われた。いや~、俺は老害なのか!」



つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
老害になりたくてなる人間なんていないんですよ。お年寄りにやさしくできない世界でもいいなら、人類に未来は、もうとっくにない、ということでしょう。その学者さんが言ったことを大勢の若者が支持しているのは、そこに切実な現代の問題があるからかもしれないけれど、その人もみんな、すぐに老人になるんですけどね。その時、集団自決はしないでしょ? その人の発言が、どこまで深い問いかけだったかは、判断できないですね、その場で、聞いてないから。ただ、強い問題定義であることには間違いないかも。この人と話す機会があれば、いろいろと聞いてみたいけれど、ま、アボカドの種を鉢植えしている初期高齢者なんかに、「興味はない」でしょうね。さようなら。

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