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パリごはん日記「台湾人仲良しシェフのダヴィッドと日台の美味しいもの対話」 Posted on 2024/05/06 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、ぼくの友人に台湾人シェフがいる。
本名はミンホエだが、仏語名はダヴィッドという。いつ行っても満席の人気店で、夏とかだと行列もできている。
ここの揚げ春巻きと北京風スープは、まず、他では味わえないうまさだ。
普段、店には出てこないが、ぼくがある日、れいによって、おいしいレストランだと必ず厨房まで顔を出し、
「美味い、最高」
と一声言い残す癖があるおかげで、つまり、親しくなった。
日本人か、と聞かれ、そうだ、と答えたら、飲もう、と言われた。
閉店後、店で遅くまで飲んだのだ。それ以降、行くといつも出てきて、客がいてもはばかることなく、美味い物談義となる。あはは。
ぼくの親戚が同じような目尻をしている。ダヴィッドは、九州顔、なのだ。懐かしいのである。ぼくの父親の若い頃にそっくりだったりする。
確かに、九州と台湾は、近いとは言わないが、通じるものがある。何度か、台湾に行ったことがあるが、田舎の風景は、ぼくの両親の田舎の田園風景そのものだった。

パリごはん日記「台湾人仲良しシェフのダヴィッドと日台の美味しいもの対話」

パリごはん日記「台湾人仲良しシェフのダヴィッドと日台の美味しいもの対話」



彼は日本が大好きで、戦争の時代、いかに日本人が台湾のために貢献してくれたのか、をこちらが恥ずかしくなるくらい熱血に語るのだ。
いやいや、それはさすがに言い過ぎだろ、と思うのだが、彼は、いや、本当のことだ、日本人のおかげなんだ、と繰り返す。ま、嬉しくないはずはない。
日本からはいろいろなことを教わった。今の台湾があるのは日本のおかげだ、そこまで、言うのである。
でも、戦争そのものを賛美はできない、とぼくが言うと、口を真一文字に結んで、抱きしめられた。それでも、台湾人にとって、日本はとっても大切なんだよ、と言うのである。
奥さんが中国人なので、ダヴィッドシェフ、その辺の発言にはかなり配慮をしていたが、(奥さんとも仲がいいが、日本の話になると彼女は出てこない。旦那の親日ぶりに、呆れている。あはは)、周りがなんと言っても、彼は超がつくほどの親日家で、ぼくが知らない、台湾人が決して忘れない日本人への思いのようなものを今も熱く持っている人物で、そのおかげで、ぼくらは実に仲がいいのである。
なので、いつも、おいしいものを出してもらっている。
ぼくが日本酒を持っていったら、先日、台湾のお酒をくれた。
で、彼のメニューの中に、牛肉炒めライスというのがあって、それが実に美味い。
バジルを使った辛い焼き肉なのだけれど、ごはんにかかっていて、カンボジアのロクラクをおもわせる。
バジルと唐辛子が決めての料理で、やっぱりアジアだね、とそれをつまみながら、笑いあった。火加減とタイミングが難しい、と言っていた。
で、カンボジア料理のロクラクを知っているか、と聞いたら、知っている、確かに、似ているかもしれない、ということになった。
ダヴィッドと語り明かした後、彼を思いながら、あの料理をまねてみたら、やはり、ぼくが作るとロクラクになってしまった。ま、いいか。
まじで、ダヴィッドの料理のいいところも取り入れつつ作る、父ちゃんの秘伝飯、ロクラクの作り方を、今日は皆さんに伝授させて頂きたい。
フランスは、ベトナムの宗主国だったこともあり、亡命貴族流れのベトナムの血を継ぐ人たちが多い。
ベトナムとカンボジアは隣国なので食文化的な影響もうけ合っている。ベトナムレストランでも、この料理が出されることがしばしばある。
でも、ルーツは、たぶん、カンボジアだと思う。
父ちゃんが作るダヴィッド風ロクラクは、ハラミ肉を使う。

パリごはん日記「台湾人仲良しシェフのダヴィッドと日台の美味しいもの対話」

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レシピというほどのものはないので、適当に真似てみてほしい。
まず、ハラミ肉を食べやすいサイズ感で、適当な大きさにカットする。
ボウルに肉、オイスターソース小さじ2、ケチャップ小さじ2、砂糖小さじ1、ナンプラー小さじ2、にんにく1かけすりおろし、かたくり粉小さじ1、胡椒たっぷりをいれて、よーく、混ぜておく。
30分くらいマリネして、フライパンに油を引き、マリネ肉と玉ねぎを炒めるだけ。いや、まじで、これだけなのだ。
お皿に、ごはん、焼いた肉、目玉焼きを載せたら、もう、完璧なロクラクとなる。
ライム(レモンでも)に塩胡椒、にんにくの微塵切りを混ぜたものをかけて食べるとさらに、カンボジア感がぐんと出るので、お試しあれ。
ああ、美味かった。
絶対に、おいしいやつ、であった。

パリごはん日記「台湾人仲良しシェフのダヴィッドと日台の美味しいもの対話」



つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
今日は、ツジビルラジオが一新スタートした記念すべき日となり、マシンガントークさく裂で、久しぶりに元気な父ちゃんとあいなった。やっぱり、しゃべっていると、自分がしゃべったことに煽られて、元気になりますね。笑。生放送のあと、「年頃」という自分の曲をネットで調べて、コピーして、練習をしたら、なんか、いい曲だな、と思ったので、引退ライブで歌うリストに一応、入れておきました。今は、そんな風に、歌いたい曲を全部リストアップしているところです。ありすぎて、絞り込めなーい。あはは。
はい、ということで、エッセイ教室ですね、今、まず、今月の目標は!
文章というのは、簡単そうで、実に難しい。じゃあ、どうやったら、楽しいブログや日記やエッセイがかけるようになるのか・・・。そこです。
そんなエッセイを書きたい皆さんへの、熱血父ちゃん先生の勉強会になります。
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で、父ちゃんが毎月、5のつく日に、5日、15日、25日に、楽しく語るラジオ・ツジビル、ラジオ好きな皆さん、盛り上がりましょうね!!!
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そして、フランスツアーが6月に行われます。
パリは、ベルビルにある老舗の劇場「Le Zebre」にて行われます。チケットが発売になりました。在仏、在欧の皆さん、お時間があれば、ぜひに。
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●6月30日、パリ、Le Zebre チケットはこちらから、どうぞ!
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https://billetterie.seetickets.fr/tsuji-in-paris-concert-le-zebre-30-juin-2024-css5-envolproduction-pg101-ri10301135.html

そして、7月3日、リヨン、La Marquise
なぜか、パリの会場よりも、売れています。売り切れる前に、お早目に!笑。
チケットはこちらから、どうぞ!
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https://billetterie.seetickets.fr/tsuji-in-lyon-concert-la-marquise-peniche-03-juillet-2024-css5-envolproduction-pg101-ri10301835.html

●7月13日ごろ、帝京大学出版会から、父ちゃんのアートブック「パリ情景、動かぬ時の扉」が出版されます。全176ページの画集&小説集です!!!
●7月20日から7月28日まで青山・新生堂画廊にて、個展!
●9月後半、コルシカ、アジャクシオ、ライブ。(ライブは、だいたい、9月25,26日のどちらかになります。作家としての登壇も予定しています)

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自分流×帝京大学