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パリごはん「出た、まこちゃん襲来、画伯の友人もやって来て、生肉祭り」 Posted on 2024/05/14 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、たまには、お茶しようよ、ということで、おっさんずラブの会合を開いた。やって来たのは、パリ在住画伯の釘町あきらさん、そして、我らがマコちゃんである。この二人、わけあって、お酒が飲めない。アレルギーなのだ。
どうも、つまらない連中を相手にしないとならない父ちゃん、エンジンがかからない。
給仕さんがやって来て、何かのまれますか?」
「おみずください」と釘町さん。
「水でお願いします」とマコちゃん。
がっぴーーーん。水だと~。
ぼくはワインを注文したのだった。泡立つ、ワインだった。
ビールも飲んだし、白いワインも飲んだ。
食べることはどうでもよかった。
仲間が集まって、楽しい話をするのに、水は、いけない。(冗談ですからね、水がなければ人間生きていけません。父ちゃんはお酒がないと生きていけないのと一緒です。宇宙人ですから、水はほぼ飲まないです。週に一度くらいたしなむ程度です。学会で発表されそうな体質ですね)
で、ここのカフェの名物が、タルタル・ド・ブッフ(牛肉の生肉)で、ギャルソンさんが、目の前で、混ぜ混ぜしてくれるのだ。
日本では一時期、生肉が食べられないようだったが、今はどうなのだろう? 魚は生で食べられるのに、生肉が食べられないというのも不思議だった。
あたると、怖いから、なのだろう。
御覧いただきたい。これが、フランス名物のタルタル・ド・ブッフなのだ。
中に、玉ねぎとか、コーニッションとか、卵の黄身とか、ソースとかいろいろと入っており、ただの生肉ではない。味付きカルパッチョタタキみたいなもので、実に美味い。
最初は抵抗があったが、馬刺しを食べるのだから、ある日、食べられるようになった。

パリごはん「出た、まこちゃん襲来、画伯の友人もやって来て、生肉祭り」

パリごはん「出た、まこちゃん襲来、画伯の友人もやって来て、生肉祭り」



「何をご注文されますか?」
と給仕さんがやってきたので、タルタル・ド・ブッフがおすすめですよ、と小さい声で教えてあげたのに、釘町さんもマコちゃんも、マグロのステーキを食べていた。
「ええええ、食べないの?」
と聞いたが、お腹の調子のいいい時にしか食べない、という返事だった。
すると、給仕さんが、ぼくに
「ムッシュ、いかがいたしますか? タルタルにします?」
と聞かれたので、
「悩むなー、でも、あの、ぼくもマグロのステーキにします。日本人だから」
と実に大胆な返事をして、給仕をがっかりさせてしまったのだった。
タルタルは、おいしいが、生肉ばかり、こんなにたくさん食べるのは、日本人的にはちょっときつい。
そこで、父ちゃんからの提案だが、「アレ・ルトゥール」というタルタルがある。日本語で言うと「往復」という意味だが、ようは、生肉を、ハンバーグみたいに、表面だけさっと火をいれたもので、中は生肉だが、表面は焼けている、というものがあるのだ。
これだと、全部生肉ではないので、食べやすい。
次回、パリにご旅行される際には、ぜひ、お試しアレ、アレ・ルトゥール!!
韓国レストランに行くと、ユッケビビンバというのがあって、生肉が載っているやつね、フランスでもやはり人気で、あの生肉も、フランスのは、タルタル・ド・ブッフ的に味付けがされているのだ。たぶん、ごま油風味だが・・・あはは。
そういう話題で、2時間くらい、お酒も飲まずに、この野郎たちとちまちま話をした父ちゃんであった。
釘町さんはもともと千住博画伯の紹介で会った、と記憶しているが、千住さんの生徒さんだったのだが、今や、巨匠クラスである。
マコちゃんは、愛ダースというロックバンドを結成していたが、解散寸前だとかで、その悩み話をみんなで聞いた。ボーカルが練習に来ないのだそうだ。
そりゃあ、続かない。
ということで、マコちゃんには手土産があった。
自分が配ろうと思ってとっておいた6月30日「ル・ゼブル」でのライブのフライヤーが、手つかずで、そのままだったので、一保堂さんの袋に入れて、マコちゃんにそっと手渡した、父ちゃんであった。すまん。
マコちゃんがいないと、何もできない、男なのであーる・ぱちーの。

パリごはん「出た、まこちゃん襲来、画伯の友人もやって来て、生肉祭り」



しかし、男の会話というものはつまらない。
健康の話とか、老後の話とか、税金の話とか、そういう話題ばかりで、生産性がないのが実に残念な回であった。
しかし、マグロのステーキは美味しかった。
カフェで落ちあい、だらだらと時間を過ごすことが、パリにいる日本人にとっての唯一の楽しみなのであった。
さ、仕事をしよう。
時に、無駄話も大事なのであーる・ぬーぼー。

つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
牛肉のタルタルはマスタードとかをつけて、バゲットに塗るような感じで、食べるのだけれど、これがピクルスとか酸っぱい系とよくマッチするのです。ケチャップも悪くないです。でも、フランスのカフェでこれを注文すると、恐ろしい量が出てくるので、何人かでシェアされるのがよろしいかと思います。ぼくは大匙1くらいで十分なので、普段は、頼まないのであります。えへへ。
さて、父ちゃんが毎月、5のつく日に語り倒すラジオ・ツジビルのご案内です。ぐんと減額で挑んで、中身はさらにパワーアップでやっています。あはは。
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TSUJI VILLE

パリごはん「出た、まこちゃん襲来、画伯の友人もやって来て、生肉祭り」



父ちゃんの、エッセイ教室もあります。文章を学びたい皆さん、どうぞ、お勉強会にご参加くださいませ。
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“地球カレッジ”

そして、フランスツアーが6月に行われます。
パリは、ベルビルにある老舗の劇場「Le Zebre」にて行われます。チケットが発売になりました。在仏、在欧の皆さん、お時間があれば、ぜひに。
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●6月30日、パリ、Le Zebre チケットはこちらから、どうぞ!
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https://billetterie.seetickets.fr/tsuji-in-paris-concert-le-zebre-30-juin-2024-css5-envolproduction-pg101-ri10301135.html

そして、7月3日、リヨン、La Marquise
チケットはこちらから、どうぞ!
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https://billetterie.seetickets.fr/tsuji-in-lyon-concert-la-marquise-peniche-03-juillet-2024-css5-envolproduction-pg101-ri10301835.html

●7月13日ごろ、帝京大学出版会から、父ちゃんのアートブック「パリ情景、動かぬ時の扉」が出版されます。全176ページの画集&小説集です!!!
●7月20日から7月28日まで青山・新生堂画廊にて、個展!
●9月後半、コルシカ、アジャクシオ、ライブ。(ライブは、だいたい、9月25,26日のどちらかになります。作家としての登壇も予定しています)

パリごはん「出た、まこちゃん襲来、画伯の友人もやって来て、生肉祭り」



自分流×帝京大学