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滞仏日記「みんなで力を合わせて乗り切るために」 Posted on 2020/04/18 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、朝起きてツイッターをチェックしたら、8割おじさんこと厚労省クラスター班の西浦博先生からお返事が入っていて、びっくりした。西浦さんへの公開質問(昨日の日記を参照されたし)は簡単に言うと「緊急事態宣言だけで人との接触8割減が実現できると思われますか?」というものであった。この先生の生き方を調べる限り、日本や日本人や世界の人々のことをまず何よりも必死に思ってくださる損得のない方だと思ったので、実は心のどこかでお返事が戻ってくるのじゃないか、と思ってもいた。そして、実際によく理解出来るお返事が戻って来たので、ここにご紹介させていただく。



『@TsujiHitonari より強い方策についても頭の体操をしてもらいましたが日本の特別措置法の45条1項だと自粛協力要請になります。外出禁止や都市封鎖は現行法制を超えます。施設の使用制限指示は別にもう1段階上アリ。科学的示唆としては、社会機能維持以外の労働人口ではこのままでは達成できません。1/4
残るのはハイリスク場所を止めるとか法を超えた対応等になります(正し大変困難です)。命がかかってますので科学フィードバックは精一杯やります。僕は研究者としての使命感があり8割おじさんを名乗って職責を超えた発言をしました。たくさん死亡するようなことがあると困るからです。2/4
8割減は人出の減少だけでなく(それだけでは必ずしも接触が8割ということではなく)より明示的な接触率の減少を含めて評価せねばなりません。現在必死にその評価に向けて作業をしています。その間、皆さんの行動が社会を守ります。皆さんどうか共に。協力しあって国を救う日本の人でありましょう。3/4
欧州暮らしが長かったこともあり『冷静と情熱のあいだ』は最も好きな邦画です。「僕は壊れてしまいそうな気持ちを何度立て直したことだろう」喧嘩したけど妻と婚前に北イタリアに旅行に行きましたよ。辻さんだけでなく僕もミラノとフィレンツェの現状にとても心を痛めています。何とかします 4/4』

ぼくは昨日の日記の最後に、「ありがとう。あなたが頼り」と書いたので、そのお返事の最後に、「なんとかします」と添えてくださったのだろうが、なかなか言える言葉じゃない。責任をうやむやにする人が多いこの殺伐とした世の中にあって、実に真摯な言葉だと思うし、この方の日本を想う強い姿勢に嘘はなく、頭が下がった。ぼくからのお返事として、「大変忙しい時にこのような日本を日本人を想う愛情深い返信ありがとうございました。四つ目の返信最後の、なんとかします、に強く心打たれました。日本で感染爆発がおこらならないことを切に祈っております。また、世界が日常を一日も早く取り戻せますように」と戻させて頂いた。西浦先生が日本におけるコロナ最前線で頑張ってくださることが分かっただけでも、よかったし、ここに書かれていることの中にいくつもの大事なメッセージがあるので、読みほどいて頂きたい。



毎日、感染者が増えているこの国難の状況だが、ここは力を合わせて、イデオロギーや思想を超えて、国民が一丸となって乗り越えて行くしかない、と思う。西浦さんから頂いた返信の3で書かれている「皆さんの行動が社会を守ります。皆さんどうか共に。協力しあって国を救う日本の人でありましょう」の一文は、不安でどうしていいのかわからない日本の皆さんへの今最も必要なメッセージだと思う。一人一人が意識を持った行動をとることが、結果として日本を守ることに繋がるということだ、とぼくは読んだ。改めて、感謝したい。ところで、西浦さん、42歳なんだね、貫禄がある、びっくりした。若さにかけたい。

滞仏日記「みんなで力を合わせて乗り切るために」

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