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リサイクル日記「ちょっと生きるのが苦しいあなたの心と魂を解放する方法、特別編」 Posted on 2022/08/11 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、最近、よく、肉体(身体)と脳と心と魂の関係について考えている。
それで自分の体で実験してみようと思った。
ぼくは実に酷い不眠症を長年患っているのだ。
2日くらい寝ないで仕事を続けることが出来る。
編集者さんのメールに対して時差なく即答するので、皆さん、驚きながら心配している。
「辻さん、いつ寝ているんですか?」と。
「いえ、寝ていません」が正解である。
「ショートスリーパーですね」とよく言われる。
夜に2時間、昼に1時間と大きくだいたい二回に分けて寝ている。
子犬の三四郎に餌を与えたら10分仮眠、息子を学校に送り出してから5分仮眠、仕事に疲れたら20分仮眠、夕食を食べたらちょっと仮眠みたいな感じ。
だからすぐに目が覚めてしまい、起きたら机に向かって(こんな風に)何か書いている。
お医者さんに処方して頂いた睡眠導入剤なども一通り試したのだけど、正直、薬では深く眠ることが出来ない。
薬によって一旦、脳が薄い膜で覆われるような感じになるだけで、熟睡からは程遠いのである。
これじゃ、早死にするかもしれないと思い、最近、不眠症を解消する方法を研究しはじめた。
寝たい時に寝ることのできる方法はないか・・・。

リサイクル日記「ちょっと生きるのが苦しいあなたの心と魂を解放する方法、特別編」



で、最近ぼくが開発した、脳と肉体をなだめる方法というのがある。

身体と脳は当然ぼくの一部だが、実は別物なのだとまず考えることからはじめた。
脳は理解しているけど、身体は理解できてないこともあるし、その逆もある。
身体はものすごく疲れているのに眠れない時、ぼくは脳に「身体がものすごく眠たいと言ってる。ぼくは眠ることを否定してはいけない」と声に出して告げてみたりする。
「いいかい? まず、足の先の指令系統を解除してみよう」
まず、そんな風に自分を説得してみることから始める。
「よし、次は太ももから腰にかけての緊張を緩和させなさい」
自己暗示である。
「腹部を緩めて脱力してみてほしい」
「両方の腕の指先から静かに肩まで力を徐々に抜きなさい」
「心臓の速度を少し落とし、最低限の力で維持させてほしい。今日はもう十分に活躍したから、解放させよう」
この辺で眠くなってくることもある。
しかし、まだ不十分である。
もっとも大事なのは、肉体の根本のねじを緩めないとならない、つまり、首から上、つまり脳をこそ解放するのである。

「よし、じゃあ、後頭部の活動を停止させていこう。後頭部をイメージして、そこを緩めていこう」
「じゃあ、次に、側頭部のスイッチを一つ一つ、オフにしていく。パチン、パチンと消していくよ」
「ほら、だんだん、思考が緩んできた。さ、前頭葉の大きなレバーを下ろしてしまおう。これを下ろすともう何も考えなくなる。考える必要がなくなるんだ。それは素晴らしいことじゃないか? 何も、何一つ考えない。全ての思考メーターが0になった」
「さあ、もうぐっすりと寝れるはずだ。最後は頭頂部から宇宙へ向けて必要のないエネルギーを放出すればいい。重力からぼくは解放された。身体の底部から全てを外へと流し出す。そして、無になる。ぼくは今、無だ。無になった」

リサイクル日記「ちょっと生きるのが苦しいあなたの心と魂を解放する方法、特別編」



この方法の素晴らしいところは睡眠だけではなく、もっといろいろなことに役立つ。
たとえば、憎しみを消すことや、怒りを鎮めることや、悲しみを逸らすことや、心の痛みを克服したりも出来るのだ。
「OK、もうぼくは苦しくないはずだ。しかし、それでも心が引っかかるならば、記憶のせいであろう。苦痛の残像に囚われているに過ぎない。もう十分、元通りに回復している。ぐずぐずしているのはぼくの頭の中に一部それを否定している何かの記憶があるからだ。これからそこを削除してみる。オフにする。これ以上、誰かを恨んだり憎しむのは自分によくない。そういう負のエネルギーが自分の復活を邪魔しているんだ。ほら、もう身体も元気になってきた。あとはぼくがそのことを認めるだけじゃないか。もう十分、大丈夫。肉体はどこも苦しくないのだ、と全細胞にはっきりと告げよう。憎しみは人間の細胞を破壊する悪いエネルギーだから、それを放棄しよう。ぼくは空だ。無になった。生まれ変わった新しい肉体と心を持っている。ほら、元気になった。もう何も問題はない」

ストレスの多い時代を生きている。
やってみる価値はある。ぜひ、心と魂をゆるめて、新しい今日を生きていただきたい。

つづく。

リサイクル日記「ちょっと生きるのが苦しいあなたの心と魂を解放する方法、特別編」

今日も読んでくれてありがとうございます。

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