JINSEI STORIES

リサイクル日記「丁寧に食べる、丁寧に生きる、いつもニコニコ、丁寧な父ちゃんのキッチン」 Posted on 2022/09/11 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、僕はキッチンに立つと創作意欲がわく。だから献立で悩んだことはない。
冷蔵庫を覗いて残ってる食材を確認したら、だいたいこれを作ろうというイメージがすっと頭に浮かぶようになっている。
市場やスーパーで買い物をする時、すでに頭の中に一週間分の献立が出来ている。
だから、冷蔵庫を開ける時はそれを確認する作業に過ぎない。
料理をする時はまず大きな器を最初にイメージするのが良い。
大きな鍋とかフライパンでもいい。
何かベースになるものを一つ頭に描いて、それで足りないものを足していくのがベスト。
たとえば今日のランチは、茄子と鶏肉のいいのが冷蔵庫に残ってたので、タイカレーにした。
タケノコの缶詰があったし、ココナッツミルクもあったな、と頭の中で点と点を結ぶのだ。
美味しいタイ米は常に常備してある。
メインの食材が揃っていれば、あとは工夫でなんとでもなる。

リサイクル日記「丁寧に食べる、丁寧に生きる、いつもニコニコ、丁寧な父ちゃんのキッチン」

リサイクル日記「丁寧に食べる、丁寧に生きる、いつもニコニコ、丁寧な父ちゃんのキッチン」



どういう料理を作るか、大きなイメージを最初に持つといい。
肉、魚は何がある?
野菜は何がある?
この辺りで、方向性は出来上がる。

ベースになる大きな料理は煮物系、煮込み系、スープ系が便利だ。
昼食後、アジア食材店まで散歩を兼ねて買い物に行ったら、日本の大根が売っていたので買った。
これで大きな器の料理を一つ作る。
大事なのはイメージだ。
大根の煮物だけだと息子の手が伸びないので北アフリカのスパイシーな羊のソーセージ、メルゲーズ、人参、ズッキーニと一緒に煮込み、クスクスにしてしまう。
ベースが和の味だけど、アリッサ(唐辛子ペースト)を加えることでなんちゃってモロッコ料理に大変身。
普段から、いろいろなものを食べて、頭の中に料理の引き出しをたくさん作って置くのは便利である。
白ご飯がとっても合う。翌日はカレー粉を入れ、最後は牛乳を足しモロッコ風カレーうどんにしちゃえばいっぺんで2食。大きな器だからできるバリエーションでもある。

食べ残したものを翌朝の朝ごはんに活用するのは当たり前なので、僕は最初から残すもの、残す量を計算しておく。
ご飯が一膳残って、ちょっとおかずがあれば、混ぜ飯にしておく。サランラップをして冷蔵庫に入れておくと、翌朝、チンするだけでいいので、助かる。夜の料理の時には必ず翌朝までの分を考えるのが主夫のテクニックなのだ。
まとめて、作って、残るものを上手に冷凍し、次の料理の一部にしてしまう。
今日、何を作ろうというのじゃなく、今週はどういう感じで乗り切ろう、と考えておくと、経済的にも節約できる。
冷凍庫はつねにフル活躍だ。

昨日の日記で、霜取りでお好み焼きのコテと金づちを使ってると書いたら、読者の方に、ドライヤーで溶かすと早いです、と言われ、目からうろこであった。
こういう主婦の知恵をぼくは尊敬している。ぼくの家事の基本は知恵の積み重ねなのである。
とくに料理は毎日を豊かにする献立にかかる責任の重さ、これを計算すること、イメージすることがスーパー主夫にとって一番大事な仕事なのである。

リサイクル日記「丁寧に食べる、丁寧に生きる、いつもニコニコ、丁寧な父ちゃんのキッチン」



栄養価と値段とのバランスを考えて、まずこのくらいの食材で一週間やりくりしてみようというものを最初に買い漁る。
その段階で、すでに栄養などのバランスは計算済み。
「身体によさそう。わ、安っ」とか独り言いいながらその日のセール品などを買い漁っておく。
肉、魚、野菜をバランスよく買う。
魚を大きな器にしたり、お肉を大きな器にしたり、野菜の日もある。
スープ系などは野菜を絞って作るので栄養か満点。
コキエット(小さなマカロニ)などを浮かべて腹持ちをよくしたり、工夫工夫の連続である。
大事なことは料理と料理、食材と食材を組み合わせる力だったりする。
レシピを参考にすることもあるけれど、だいたいは勘で出来てしまう。
時にはムスコ飯(女性自身のサイト)を遡って自分のレシピを参考にすることもある。
自分のレシピだから、分かりやすい。
しかし、もはや、勘で作った方が圧倒的にうまいものが出来る。
なぜなら食材も生きているので向こうから「今日はこんな風に食べてください」とか言ってくるのだ。
じっと見てると、完成図が頭に浮かんでくる。
人のうちに招かれると、真っ先に冷蔵庫を覗き、なんか作らせて、という奴!
そこにある料理で、人を驚かせるのが大好きな困った父ちゃんなのである。
「よしよし、美味しくしてやるから覚悟しておきなさいよ~」とかブツブツ言いながら、僕は今日もキッチンで食事を作る。
毎日しなきゃいけないことなのだから、楽しい方がいいに決まっている。
キッチンが楽しくなればその家は安泰なのである。

リサイクル日記「丁寧に食べる、丁寧に生きる、いつもニコニコ、丁寧な父ちゃんのキッチン」

リサイクル日記「丁寧に食べる、丁寧に生きる、いつもニコニコ、丁寧な父ちゃんのキッチン」

リサイクル日記「丁寧に食べる、丁寧に生きる、いつもニコニコ、丁寧な父ちゃんのキッチン」



リサイクル日記「丁寧に食べる、丁寧に生きる、いつもニコニコ、丁寧な父ちゃんのキッチン」

自分流×帝京大学
地球カレッジ