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パリ最新情報「フランスでもコロナウイルスに注意」 Posted on 2020/01/24 辻 仁成 作家 パリ

コロナウイルスのニュースがフランスでもかなり話題である。とくに中国・武漢からやってきた観光客が、「新型コロナウイルス」の疑いがありながら、薬で熱を下げて入国に成功。ミシュランの星付きレストランで食事をする様子などを、自身のSNSに投稿し、中国大使館がこの女性と連絡をとり、医療機関に受診するよう指示をだした。フランス政府はこの女性を特定し、パスツール研究所で検査を実施したが「陰性」と判明。(確かに解熱剤で熱が下がるのだから、コロナウイルスではないですね)しかし、このニュースが報じられると、昨日、うちにお泊りしたニコラ君のお父さんから「すいませんが、中華レストランにだけは連れて行かないようにお願いします」という頓珍漢な連絡が入った。フランス人がこの問題に敏感になっているのが伝わったので、テレビやネットニュースを調べてみた。



結果から言えば、フランスではまだ「コロナウイルス感染の疑いが出ている人」はいない、ということだった。(追記、24日のニュースで南西部ボルドー、と首都パリでウイルス感染者二人を確認という情報)その一方で、武漢の空港が封鎖される直前にパリに向けて離陸した最後の旅客機の乗客らは何の検査もなくノーチェックで空港から出られた模様で、(武漢では出る時に軽い検査があったにもかかわらず)そのことがちょっと問題視されている。大勢の中国人観光客が旧正月休暇を利用して大挙押し寄せている時期なので、きっと東京は検査が厳しくなっていることだろう。一千万都市の武漢が封鎖されたというニュースには正直驚かされた。パリや東京が封鎖されたらいったいどうなるだろうと想像をしてしまい…。

そもそもフランス人はマスクをしない。マスクをしているとかなり奇妙な目で見られる。排気ガス汚染の酷いパリなので、実は、フランス政府はマスク着用を推奨しているが、そういう文化がないので根付かない。マスクをする=重病患者、のイメージが強いので、これまではマスク着用が流行ることはなかった。逆に、フランス人にとってアジア人がマスク好きというイメージは定着しつつある。前ほど奇妙な目でみられなくなってはきているが、今回のコロナウイルス騒動で、どうなるか。もし、発症者がフランス国内で発見されたら、ニコラのお父さんのような意見を持つ人はマスクに飛びつくかもしれない。ちなみに、こちらはトイレットペーパーの箱のようなものに入った大きなボックスタイプしか見たことがなく、日本のような「99%微粒子ブロックフィルター」などの表示のものは皆無である。

パリ市内の大気汚染の方がぼくは深刻だと思う。「AIR PARIF」というパリの大気汚染測定アプリとにらめっこしながら、ぼくは毎日ランニングをしている。緑が安全、黄色が注意、赤だと外出しない方がいいというレベルで、この赤になることが結構ある。うちは中心地に住んでいるので道に出るとガスの匂いがきつい。ジェネラリストの先生に「出来ればエッフェル塔がかすんでいるような日は走るのをやめないと逆に身体によくない」と言われたこともあった。なので、ぼくはマスクを着けて走っている。フランス人には変な目で見られるけど、自分の体の方が大事だし、日本人=マスクのイメージが定着しつつあるので、ま、しょうがない。そもそも、パリ市内は東京よりもディーゼル車が多いので、排気ガスの人体への影響はもっと深刻だったりする。毎日、学校まで歩いて通っている息子の肺の方を心配してしまう、少なくとも今は、コロナウイルスよりも。さて、ニコラを起こして、ご飯を食べさせないと。

パリ最新情報「フランスでもコロナウイルスに注意」

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Posted by 辻 仁成

辻 仁成

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Hitonari Tsuji
作家。パリ在住。1989年に「ピアニシモ」ですばる文学賞を受賞、1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。ミュージシャン、映画監督、演出家など文学以外の分野にも幅広く活動。Design Stories主宰。