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3つの星を掴んだシェフ小林 圭の熱い初期衝動を再掲載! Posted on 2020/02/10 Design Stories  

ついに仏ミシュランの三つ星を獲得した初の日本人シェフが誕生しました。その名は、小林圭。デザインストーリーズ創刊時に連載を担当してくれていました。今回は、彼の連載の第一回の記事を三つ星記念に再録します。小林さんがどのような気持ちでパリに渡ったかが、よく描かれていますよ。

さて、今回の三つ星の意味がどのようなものなのか、辻編集長が分析しています。

「日本で日本人シェフが日本料理の分野で三ツ星を獲得するのと、現地フランスで外国人である日本人がしかも本場の並み居る偉大なフランス人シェフを相手に伝統的フレンチ料理界で三ツ星を獲得するのではかなり意味が異なります。日本人シェフのレベルが高いことをフランス人は理解していますが、それでもどこかでアジア人への偏見もある中でのこの快挙、本当に素晴らしいことですね。暫くこの記録を超える日本人は出ないでしょう。それほどに難しいことなのです。これは比較にならないけれど、フランスの作家が芥川賞を日本語で受賞するようなレベルのものかもしれない。いや、それ以上かも。本当に、おめでとう」

では、小林圭さんが当サイトにご執筆くださった記念すべき第1回目の記事をご一読ください。ミシュランの星を一つ獲得したばかりの小林さんの熱い想いがそこに込められています。



「今すぐフランスに行きたい」 <2016年10月26日掲載>

15歳の時、フランス料理の門を潜りました。そして職場では、フランスで修行をした先輩たちから現地での貴重なお話を聞かせて頂く機会にも恵まれました。しかし、なぜでしょう。それはあくまでも人伝に聞く話であり、もどかしさを感じるばかりでした。 
芸術の国フランス、その国に住む方々は一体どんな景色を見て、どんな芸術作品を感じ、どんな料理を食べて育ってきたのだろう?誰かの経験話ではなく、自分自身の目で、足で、舌でフランスを感じたい! そんな思いを抱きながら若き日の自分は、長野と東京で修行を続ける日々を送っていたのです。

そして、21歳の時、念願叶ってフランスで仕事をするチャンスを得ました。渡仏後は、多くのフランス人たちと付き合い、様々な食材に触れ、できるだけたくさんの地方都市を回り、その土地の風土や文化を感じては、少しでもフランス料理を理解しようと誠心誠意心がけて頑張りました。
当初はまだフランス語も話せなかったため、想像以上の苦労もありました。南仏では、着いたその日から”親友”と呼ばれましたが、それとは正反対に、アルザス地方では、同じレストランの同僚たちにさえ、受け入れてもらえるまで2か月もの間、誰からも口をきいてもらえなかったのです。

しかし、このように地域による人の性格の違いこそあれ、どの場所で働こうと共通していたことがあります。それは、自分の故郷に誇りを持ち、誰もが故郷とその地の料理を何より愛しているということ。長野の田舎から出てきた自分にとって、もっとも共感できることでもありました。
そして、パリを含めフランス各地で修行を終えたのち、2011年、僕は念願の自分の店、「RESTAURANT KEI」をパリ1区にオープンさせることができたのです。

3つの星を掴んだシェフ小林 圭の熱い初期衝動を再掲載!

今回は、お客様に特に人気のある、「野菜皿」について僕の思いをお届けします。
この最新の一皿には、食べる前にお客様ご自身が野菜を混ぜ合わせていただく、という行程が含まれています。『なぜこの野菜プレートを作ったの? どんなメッセージがこもっているの?』と、食事を終えたお客様に訊かれることがありますが、僕の思いは、「野菜の魅力と可能性、美味しさを再発見してほしい」ということに尽きます。
素材が持つ味はもちろん、野菜を感じられるよう切り方を考え、青臭さや苦味、酸味、食感、温度によっての味の違い、食べていただいた時にその素材の表情が出てくるよう、創意工夫を凝らしています。

人は生き物の尊い命を奪って生きています。僕ら料理人の仕事は、素材の個性を最大限に生かし、素材に喜んでもらえるデザインを与えること。料理を通して、その命を吹き返してあげることなのです。たとえそれがニンジン一本でも、サラダの葉一枚でも。

3つの星を掴んだシェフ小林 圭の熱い初期衝動を再掲載!

このフランスの大地から頂いた野菜の生命と生産者さんの想いを、どうしたら食べた方の心と記憶に焼き付けることができるのか。目を閉じ、素材と話しをしながらしっかりと考えています。自然体でありながら、エレガントな雰囲気が出せるよう、一つ一つお皿に盛りつけていかねばなりません。
その上、この一皿は、料理人が調理しサービス担当がお客様にサーブして終わるのではなく、お客様それぞれが全体を混ぜ合わせることによって、野菜の食感やソースが絶妙に変化するという仕組みを有しています。作り手、サーブする人間の手、そしてお客様の遊び心を通して、自分がデザインする究極の一皿が完成します。だから、美しさを壊してしまうことに思いとどまらず、しっかりと混ぜてもらいたい。

この野菜皿には、3つのデザインがあると思います。それは、盛り付けたお皿、味、空気。車でいう、外見、運転、乗り心地でしょうか。お客様に野菜のお皿を運転してもらいたいのです

3つの星を掴んだシェフ小林 圭の熱い初期衝動を再掲載!

僕にとって野菜は永遠のテーマです。無限大の可能性を持つ野菜に対し、僕の存在はその1%にも満たないかもしれません。だからこそ、100%を目指し走ってゆかねばなりません。空腹を満たすだけの料理ではなく、お客様の心を満たし、豊かな気持ちにさせる料理を作りたい。その一心を常に心掛けてきました。

僕は常々「舞台のようなレストラン」を作りたいと考えています。舞台は、レストランkeiのチームだけでも、お客様だけでも成り立ちません。チームとお客様が一体となること、舞台と客席の一体感こそが僕の考える理想のレストランなのです。

小林 圭さんが二つ星を獲得した時の記事へはこちらから⬇️
・世界のシェフ「小林 圭」 辻 仁成



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デザインストーリーズ編集部(Paris/Tokyo)。
パリ編集部からパリの情報を時々配信。