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佐伯幸太郎の美女と美食三昧 おれの人生、嗚呼、またしても腰砕け?「イニシャル」パリ5区  Posted on 2017/03/30 佐伯 幸太郎 ライター パリ

ぎっくり腰になっちまって、ひどいありさまだ。職業柄、重いワインを抱えるせいもあって、腰がもともとやばい。その日は最近、裏ではじめた指圧整体に勤しんでいたところ、バキっとやっちまった。裏だからね、表の妻にはもちろん内緒。「マスター指圧」と書かれた名刺をこっそり持って、若い女性の健康管理やってます。え? 犯罪? ちょっと待ってくださいよ。これでも昔はジムのトレーナーでした。
でも、ソフィちゃん、あまりにゴージャスな身体つきなものだからね、もう、心臓バコバコ。届きそうで届かない苦しい愛、みたいな感じになっちゃって。触るに触れないもどかしさのせいで、変な感じに身体をよじったものだから腰が砕けた。そのまま、本物の鍼灸師さんのところへ、レッツゴー。ああ、かっこ悪かった。

ということで、自分への快気祝いを兼ねて、ご迷惑をおかけしたソフィちゃんを超話題のフレンチレストラン『イニシャル』へとお連れした。
今日は病み上がりだからね、おとなしめでいくよ~。
 

佐伯幸太郎の美女と美食三昧 おれの人生、嗚呼、またしても腰砕け?「イニシャル」パリ5区 

パリジェンヌは生まれつき、フェミニズム思想の中で女性優位に育てられている。でも、フェミニズムを誤解した高慢な子も多い。そんな中、このソフィは違う。アジア文化への造形も深ければ、博愛主義者で、決しておごらない。清楚で謙虚なパリジェンヌ。こういう子に俺は弱い。わかる? 
今日はちょっと身体も弱ってるし、女房は相変わらず強いし、優しい子にふらっと心がなびいちゃうかも・・・。

レストラン・イニシャルは2週間先まで予約がとれないパリ5区にある話題の店。ところがランチは穴場、意外と席に余裕がある。しかも、夜とメニューは同じ。
まずはサーヴィスの新田さんに不思議な味わいのChampagne Pinot-Chevauchet cuvée Joyeuse Brut( 80% Pinot Meunier 20% Chardonnay)を勧めてもらい、復活を祝ってソフィと見つめ合い乾杯。
深みのある黄金色、まろやかな香り、調和のとれたシャンパーニュ。愛を語り合うのにもってこいの泡だね。
シャバダバダ、シャバダバダ、と音楽が聞こえてきそうだ。愛の国、フランス万歳!

まずは前菜、ホタテをさっと湯通ししただけのシンプルな一品の登場だ。アヴォカドソースと大根があっさりホタテを下支えする。
病み上がりの俺にぴったりの癒し系の一品だね。
癒し癒されたいね、ソフィ。ふふふ。ああ、なんだか盛り上がってきぞ~~
 

佐伯幸太郎の美女と美食三昧 おれの人生、嗚呼、またしても腰砕け?「イニシャル」パリ5区 

店の雰囲気もシックで愛を囁き合うのにばっちぐー。
セーヌ河畔に立ち並ぶ屋台の本屋ブキニストを眺めながら、食後、手を繋いでデートとか、いいねいいね。
ノートルダム寺院を遠くに眺めながら、ジュテームとか、ね、いいねいいね、ささやきあっちゃう? 
あ、周辺にはかわいいホテルもたくさんあるよ。えへへ。でも、俺、ぎっくりだから、無理だね。
あはは。びっくり!
 

佐伯幸太郎の美女と美食三昧 おれの人生、嗚呼、またしても腰砕け?「イニシャル」パリ5区 

女性を口説くのに美味しい料理は必需品。しかもガストロノミーなのに38ユーロ(約4500円)でフルコース。かわいい子口説くのに、もっともパリで最適な一店かもしれない。

最初の魚は漁師が一本釣りで釣り上げたブルターニュ、フィニステールから届いたスズキ。ポワロー葱を巻いて、オリーブオイルの中でじっくり火を通した柔らかい一皿だ。
ソースは2種類。ポワロー葱のピューレをベースに、フレッシュのベルガモットで香りと酸をプラスした、はかなくも可憐な泡のソース。茶色い液状のソースは、野菜をコトコト煮込んで凝縮させたエキスとピスタチオオイルを合わせてるときた。
控えめながら個性ある味わいの風味が俺の下心を宥めてくる。ソフィが、どこかアジアの深い精神性を感じるわ、と分析した。はいはいはい~。
 

佐伯幸太郎の美女と美食三昧 おれの人生、嗚呼、またしても腰砕け?「イニシャル」パリ5区 

アジア好きなフランス人を口説くのなら、俺の右にでる者はいないよー。手相を見て、結婚線1本2本、2度離婚だね、運命線ちょっと短いね~、63歳かな、とかぶつぶつ呟き辿りながら、そのままぎゅっと手を握り締めて抱き寄せれば、大概の子はメロメロだぜ。ふふ。

さて、メインが登場だ。

俺が頼んだのは当店一番人気のリードボー、牛の胸腺肉のカリカリ揚げ。
そしてソフィがフォアグラやカモ肉をミンチにした具をもち米で包んだアジアンテイストの豪快な一皿。
リードボーは一切臭みがなく、ジューシーで美味しい。

佐伯幸太郎の美女と美食三昧 おれの人生、嗚呼、またしても腰砕け?「イニシャル」パリ5区 

佐伯幸太郎の美女と美食三昧 おれの人生、嗚呼、またしても腰砕け?「イニシャル」パリ5区 

ワインリストを覗くと、Alain Chavy Puligny-Montrachet 2011が手ごろな価格だ。
しめしめ。火打石香、シャープで綺麗なミネラル酸が特徴の白だが、しかし、酸味はどちらかといえば大和なでしこのように控えめで深みと広がりがあり、これがリードボーとの相性抜群。

もち米の肉詰めを頬張ったソフィは、エクセレント、を連発。知的な子に愛されるテイストなんだろうね。
ついでに俺も知的だから、もう、ゴールが見えたようなもんだぜ。仏検2級だもんね。
 

佐伯幸太郎の美女と美食三昧 おれの人生、嗚呼、またしても腰砕け?「イニシャル」パリ5区 

デザートを食べ終える頃にシェフが出てきた。
お店の名前の由来は? 好奇心旺盛なソフィが質問する。藤沼シェフが答える。

「我々にとって1軒目、つまり始まりのレストランと言う意味を込めてL’INITIALと命名しました」

へえ、始まりよければ、すべてよしですものね。じゃあ、新田さんと藤沼シェフと我々4人で記念写真でも撮ろうか、という流れになって、勢いよく立ち上がったのがまずかった、バキ。ぎゃあああああ。
思わず、悲鳴、俺としたことが、忘れてたよ。俺、ぎっくりだったよね? 沈み込んだ勢いでさらに椅子の角に腰をぶつけてしまい、ぶざまな姿に・・・。
ソフィは呆れて家路に、俺はタクシーを呼んでもらって再び鍼灸師の元へ。今日はおとなしくしとけってことかな。あはは。

イニシャル、気に入りました! ランチが穴場です。

佐伯幸太郎の美女と美食三昧 おれの人生、嗚呼、またしても腰砕け?「イニシャル」パリ5区 

Posted by 佐伯 幸太郎

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Kotaro Saeki
ライター。渡欧25年のベテラン異邦人。ワインの輸入業からはじまり、旅行代理店勤務、某有名ホテルの広報を得て、現在はフリーランスのライター。妻子持ちだが、美しい女性と冒険には目がない。モットー、滅びゆくその瞬間まで欲深く。