PANORAMA STORIES
辻仁成リヨン展覧会「Les invisibles/見えないものたち」展に寄せて Posted on 2026/10/08
私が辻さんの絵に出会ったのは、2024年、新宿伊勢丹で開催された個展「Le visiteur」の作品の画像を目にしたときでした。
これまで印象派をはじめ、さまざまな画家が描いたパリの風景を見てきましたが、辻さんの描くパリには、現代的で個性的な、何かつきささるような新鮮さがありました。「本物を見てみたい」― そう思ったことを覚えています。
2025年秋、パリのマレ地区で開催されていた個展「Hitonari TSUJI」に偶然出会い、初めて真作を間近で見ることができました。
大画面いっぱいに広がる緻密な筆致。あらゆる方向に伸びる草花、クレーターのような巨大な穴、流れ落ちるような花々。それらは一つの小宇宙のようでした。黒、白、渋いブルー、黄色を基調とした、限られた色彩から立ち上がる世界は神秘的で、そこには物語や音楽があり、圧倒的なエネルギーに満ちていました。
作品を見終えたとき、「さあ、僕の出番かな」と言いながら、辻さんが控室から現れました。制作のこと、絵画手法などを伺っているうちに、いつしかリヨンで展覧会をする話になっていました。望んでいたことでしたが、実現するとは思っていませんでした。

※ 2025年10月に開催された辻仁成のパリ、マレ地区での個展より。

私の画廊では、国籍やジャンルを問わず、独自の視点で世界の本質を捉え、表現するアーティストを紹介しています。また、日本の多様な美術表現をフランスに紹介することも使命の一つと考え、日本画、前衛美術、現代書、写真を紹介してきました。
小説家、音楽家、そして画家として活動してきた辻さん。キャンバスに一言を書き記し、そこからイメージを広げる独自の制作。文学や音楽、絵画という異なる創造を行き来する経験に加え、見えないものまで感じ取ってしまうような鋭敏な感性。そのすべてが彼の絵の中にあると思います。だからこそ彼の表現をリヨンで紹介したいと思いました。
11月4日から始まる辻仁成展覧会のタイトルは「Les invisibles見えないものたち」です。今までと違う作風の抽象画が発表されます。描かれるのは辻さん自身の奥深くに刻まれた「記憶にない記憶」の風景。私たちが知り、記憶している世界の、その向こう側に広がるもう一つの風景です。
リヨンは、美食と絹の街として知られ、「光の祭典」やリュミエール兄弟、サン=テグジュペリゆかりの地でもあります。そして2年に一度、国際的な現代美術展「リヨン・ビエンナーレ」が開催される、フランスでも重要なアートの街です。
ビエンナーレでは、キュレーターによって選ばれた世界中のアーティストたちの作品が、街の各会場で展示されます。それと異なり、地域のアートシーンで活動する作家に光を当てる関連企画「Résonance 」があります。今回、辻仁成展はビエンナーレの公式プログラム「Résonance」に選出されました。創作と生活を、社会に開かれた形で結び付けて活動する、辻さんの生き方と作品が、今年のビエンナーレの「アートは、私たちの経済的な暮らしをどのように可視化し、変容させうるのか」というテーマと響き合い、評価されたのだと思います。
画像や言葉だけでは伝わらないものが、真作にはあります。作品と向き合い、 辻さんが呼び出した、見えないものたちを感じていただければと思います。 この秋、ぜひリヨンへ。
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GALERIE 48 Mari Katagiri 辻仁成展覧会 “Les invisibles” 期間11月4日―22日 オープニング 11月4日17h―20h 作家在廊 展覧会場 : La petite galerie, 6 rue de Vauzelles 69001 Lyon ·メトロCroix-Rousse 営業時間:火曜 – 日曜 14h – 19h (月曜定休日)
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ライター紹介、片桐麻里
GALERIE 48 Mari Katagiri 主催。この画廊は2012年リヨンに設立され、2023年からは常設のスペースを持たず、企画に応じて、リヨンのさまざまな場所で展覧会を開催する、移動型ギャラリーとして活動しています。

※ リヨンの画廊。

※ リヨンビエンナーレのポスター。
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18e Biennale de Lyon Art contemporain 9/19 – 12/13. 2026
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