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イタリアの小学1年生クラスには5歳児から7歳児が混在する?! Posted on 2025/04/30 中谷 駿佑 フットサル トレーナー イタリア・ローマ近郊
イタリアの入学時期は親が決められる?!
記事のタイトルにもあるように小学1年生のクラスは5歳から7歳の児童が混在する可能性がある。では、なぜそんなことが起るのだろうか?
答えは『両親と行政の方が子供の成熟度合いを相談し、入学を決めるから』である。
イタリアでは9月に年度が始まる。一般的な小学校入学はイタリアも日本と同様に6歳が基本である。しかし、年度始まりがあるということはイタリア版の早生まれが存在することになる。日本の早生まれの時期に相当する児童、それがイタリアの7月・8月生まれである。
当然、7月・8月生まれの児童は前年の9月・10月生まれに比べれば体が小さく、まだ読み書きが苦手な児童も割合としては多くなる。そうなった時に、授業についていけないことを懸念して、その児童の生活態度や言語の能力を親と行政の方が判断して、入学をするか、一年待つかの判断をする。
ちなみに、私のイタリア人の義母は3月生まれで、5歳5か月で小学校に入学した。それから、小学校(5年)中学校(3年)高校(5年)大学(4年)をストレートで卒業している。ちなみにこれはイタリア人の中でも早い方である。大学在学中に働き始めたので、最近、勤続年数が40年を突破し、定年を迎えた。
逆に私のイタリア人の友人は中学を1度留年、高校を2度、大学を2度、大学院修士課程を2度留年した。こんなにも“留年”が身近にあるのは日本では考えにくい光景だろう。
ちなみに彼は未だに就職していない。“していない”というより“できていない”という方が正しいだろう。現在のイタリアの若者は定職についていないことがある。2020年にイタリアの失業者に関する公的調査が公表された。
発表したデータを見てみると、イタリアの失業率は全体平均で10%、若年層で30%以上だという。
さて、話を学校と児童の年齢についてもどしていこう。
小学生でも留年の可能性がある?
このように入学の時期にばらつきがあるのは、のちの学業の習熟度に影響があるからである。では、その習熟度に届かなかった児童や学生はどうなるのか?
①児童(小学生)は制度としての留年はあるが、ここ最近は留年しない。
②中学生は毎年の成績によって留年かどうかが決まる。さらに卒業時には“卒試”なるものが存在する。イタリア人妻曰く「ところてんの様に押し出してもらえるものではないよ。ちゃんと勉強しないと本当に滑るよ」とのこと。中学留年もちらほらいる。一応、救済措置として赤点が3つ以下の場合は補習と再テストがあるようだ。
③高校性は中学生よりも厳しい進級テストと卒試がある。科目によるが特に卒試は1年生から5年生の範囲全ての場合もなるので気合を入れないといけないらしい。そのため留年は中学の時よりも割合は増える。様々な調査の走り読みなのでエンタメ的に楽しんでいただけると幸いだが、とある調査によると毎年10%の生徒が進学や卒業が出来ていない実態があるらしい。
④大学、大学院は日本と同様に試験に通らなければ単位が取れないので、普通に卒業できない。何なら途中でフィードアウト(退学)する学生も少なくない。入学は9月と統一されているが、卒業の時期は人によって、大学や学部でかなり違う。共通して言えることは、必要単位と卒業論文が終わった生徒が年に複数回あるいずれかの卒業月に卒業することになる。
ちなみに2023年に25歳―34歳の人口の大卒割合は30.6%だったそうだ。
イタリアは日本より留年の割合が多いと言える。さらに、大学以上の学歴を有していない若者の少なくない。中学からの留年制度の話を聞いていると、最終学歴が小卒や中卒の割合が日本より高い可能性もあるのではと思われる。
日本と同じG7にも連なるイタリアだが、教育システムには大きな差があることが垣間見えた。
Posted by 中谷 駿佑
中谷 駿佑
▷記事一覧2019年に渡伊し、イタリア・ローマ近郊在住7年目。妻はイタリア人、3歳の娘を持つ父親。現在の職業は日本人初のイタリアフットサルセリエA・専属チームトレーナー(チーム名前:Ecocity Futsal Genzano)