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フランス人が愛してやまない日曜大工 「ブリコラージュ」 Posted on 2023/04/24 町田 陽子 シャンブルドット経営 南仏・プロヴァンス

フランス人が愛してやまない日曜大工 「ブリコラージュ」

フランスには「ブリコラージュ Bricolage」という言葉がある。日曜大工、修繕、といった意味なのだが、そのブリコラージュを趣味としている人がじつに多い。専門店も数々あり、ずばり「ブリコラマ」「ムッシュ・ブリコラージュ」「ブリコマルシェ」などといった店名で、釘一本から工具類、金物類、配管工事の道具、断熱材、床材、窓、ドア、ガラス、トイレ、システムキッチン、門、庭用の土、芝刈り機、プールまで、売っている。

多くの家にはブリコラージュ用の工具一式がある。プロヴァンスのような田舎では、ガレージの中に作業台を備え、壁に大小の工具が並んでかけられているような家もよくある。男性ばかりとは限らない。私の友人の母親など、趣味の域をはるかに超え、タイルを好みの大きさや形にカットして、一人でおしゃれなシャワーブースを作ってしまった。彼女への誕生日プレゼントは花やケーキよりセメントの方がいい、なんて言われるほどだ。
 

フランス人が愛してやまない日曜大工 「ブリコラージュ」



プロヴァンスを走っていると、何年も建設途中のままの家がある。資金繰りが滞ってストップしているような家もあるだろうが、土台を工務店に作ってもらい、あとは自分たちで週末少しずつ作って完成させる人もいる。水回りが難しいらしく、知人などは、お風呂を取りつけたものの水が出ないと嘆いていた。もちろん、一からやり直し。気が長い話だが、趣味を兼ねて格安で家ができ、一石二鳥という。

さて、我が家のフランス人ダヴィッドはどうかといえば、やはり生粋のフランス人DNAを備えている。ブロカントやのみの市などで安い家具を見つくろい、ペンキを塗ったりするのは朝飯前。

ちょうどいま、アルモワール(タンス)を「ブリコラージュ」したところなので、ちょっとご覧いただこう。
まず、これが、彼がどこかで買ってきた古くさいアルモワール。どこに置くの、これ?というのが、私の第一声だったが、当然、その素朴な感想は無視される。
 

フランス人が愛してやまない日曜大工 「ブリコラージュ」

オンボロのタンスを私たちが車から降ろしているのを目ざとく見つけた隣のおじさん、ジャン・ピエール(毎日ブリコラージュをしているリタイア族)が助っ人として参加。さっそく、ダヴィッドと阿吽の呼吸で家具の表面を磨き始める。
ブリコラージュ活のはじまりだ。
 



フランス人が愛してやまない日曜大工 「ブリコラージュ」

最初はポンスーズという機械で表面を削ることからスタート。古いペンキやニスなどを落とし、表面を滑らかにする。ペンキをきれいに塗るには、表面を生木に戻すこの作業が必須だとか。
 

フランス人が愛してやまない日曜大工 「ブリコラージュ」

中板が古く痛んでいたので、新しいものに取り替えることに。長い板を2枚買いに走り、4枚にカットし、サイズを調整中。
 

フランス人が愛してやまない日曜大工 「ブリコラージュ」

いよいよペンキ塗り。色の選択については私の意見も聞いてもらえる。内側をオレンジがかった赤、外を温かみのあるベージュホワイトにした。好みの色に調合してくれる店へ走り、購入。でも、実際塗ってみるとイメージと違うことが多いのでなかなか難しい。
 



フランス人が愛してやまない日曜大工 「ブリコラージュ」

後ろや上部は手抜きで塗らない人もいるが、ダヴィッドは意外ときちんと塗る派。
 

フランス人が愛してやまない日曜大工 「ブリコラージュ」

隅は刷毛で塗る。最後に総点検して塗り残しやむらのあるところに手を入れる。
 

フランス人が愛してやまない日曜大工 「ブリコラージュ」

古い家具には金具類がついていないこともあるので、そんな時は古道具屋に走る。今回は、ラッキーにもジャン・ピエールの手持ちの中からぴったりの色とサイズのものが見つかった! みな、歓喜。
 

フランス人が愛してやまない日曜大工 「ブリコラージュ」

最近のペンキは匂いもなく、速乾タイプなので、翌日には部屋に入れられる。
 

フランス人が愛してやまない日曜大工 「ブリコラージュ」

最後にガラスを入れて、扉をつけて、できあがり。
 



フランス人が愛してやまない日曜大工 「ブリコラージュ」

わずか30ユーロ(約4000円)で買ってきた古いアルモワールが生き返った瞬間。
飽きたら、ガラスを外してグリアージュ(金網)を入れてもらおうかな。
そんなふうに、うち捨てられていた物に命を吹き込むブリコラージュ、いいなと思う。素人の遊びなので、完璧とはいかないが、そのぶん、気軽に手を入れて変化を楽しめる。我が家は、こんな家具ばかり。
節約精神と、オリジナリティの追求。「ブリコラージュ」はじつにフランス人らしい趣味だと思う。かくゆう私はまだまだ若葉マークの初心者だから、釘の打ちかた、ペンキの塗り方から練習中。やれやれ。
 



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Posted by 町田 陽子

町田 陽子

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Yoko MACHIDA
シャンブルドット(フランス版B&B)ヴィラ・モンローズ Villa Montrose を営みながら執筆を行う。ショップサイトvillamontrose.shopではフランスの古き良きもの、安心・安全な環境にやさしいものを提案・販売している。阪急百貨店の「フランスフェア」のコーディネイトをパートナーのダヴィッドと担当。著書に『ゆでたまごを作れなくても幸せなフランス人』『南フランスの休日プロヴァンスへ』