ノルマンディ、ツジ村便り

辻村だより、23 Posted on 2026/01/23 辻 仁成 作家 パリ

おつかれさまです。
今日は、アトリエの空気の入れ替えをして、いつものように、キャンバスにむかっていました。幸せな時間です。
それから、ノルマンディの田舎の空をずっと見ていました。
些末なことから解放されて、穏やかな心を持つことが出来ましたよ。
ありがとう。

さて、今日も辻村にご相談のお便りが届いています。短いメッセージですが、切実なので、ご紹介いたしますね。

匿名希望Tさん
「辻さん、ちょっと生きるのが苦しいんですが、アドバイスください。なんだかわかりませんが、とにかく、苦しいです」

辻村だより、23



おこたえしまーす。

「ぼくも苦しいな、と思うことがしょっちゅうありましたし、今もたまに、感じます。そうですね、15日に一度は、もういいかな、と投げやりになったりもしています。でも、それは普通じゃないでしょうか。世に偉い先生は大勢いらっしゃいますが、その方々でさえ人生の正解など、おそらく、持っていませんし、その方々でさえも苦しんでいます。宗教者の人でも、人の悪口を言いますし、心の小さい人も結構いますよ。とある偉いお坊さんがいましてね、ま、その人からも人の悪口を訊いたことがありますし、怒ったり、批判したり、人間を馬鹿にしたり、つまり普通の人間なんです。でも、お寺ではお経とかあげています。これは批判ではなく、考えてみてください、我々は人間なんです。聖職者も神様じゃない、ということです。
信仰のないぼくには、神様がいるかどうか、わかりません。でも、どんなに偉い人でも、思った以上に弱いのが人間というものです。理由は、単純で、人間だからです。
だから、あなたが苦しいと思うのは普通で、そのことで自分はダメだと思う必要は一切ありません。
その上、この世界は極めて不条理です。でも、苦しいのは人間だからであり、他の人間がだいたいその苦しみを連れてきます。人間は期待をする生き物だから、期待通りにならないと苦しくなります。人間は待つ動物だから待っているものが来ないとイライラします。第三者がその苦しみの火をつけに来るわけです。ですから、ぼくはある頃から、人間との関係に注意をして生きています。関われば関わるほど、問題が生じるので、関わらない方が身のためだな、と思う瞬間が一度でもあれば、そこから、すっと身も心も引くようにして、難を逃れています。

「欲をかく」といいますが、これが苦しくなることの大きな原因の一つです。「むきになる」といいますが、これも、同じように原因の一つです。「意地になる」というのも、同じです。他にもいろいろとありますね。こういうのをやめると、苦しみから解放されていきます。でも、辻さん、それじゃあ、面白くないじゃないですか、というのはもっともです。でも、苦しくなるのが嫌なら、関わらないにこしたことはありません。苦しくてもいいから達成したい人だけが、それを乗り越えてとことんやればいいんじゃないですか? 
あと、「ネット遮断」というのも一つの手ですよ。ああいうものの一番の問題があります。それは「不安をあおる」ということです。何処を見ても、不安をあおってばかりで、プラス思考がかなり減ってませんか? なんで、そんなに悪い方へ悪い方へと他人を追い込むんでしょうね? 心が不安定な人は、SNSを一度遮断してみてはどうですか? 
人の悪口を言う、だれかの告げ口をする、なんでそんなことを楽しみにしている人間がいるのか、と思いませんか? そこと関わるのをまずやめましょうか。人のうわさをよく口にする人間いるんですよ。いませんか? それはいわゆる「邪気」ですからね、関わらない方がいいです。関わらないでいられるなら、楽になります。関わらないとならない立場なら、そこから一刻も早く抜け出す方法を考えましょう。
ぼくなどはノルマンディの田舎で、目の前は自然だけですから、ここから出ない時は愛犬だけが相手で、実に、平和です。
苦しい時はどういう時でしょうか? 仕事関係の話で、思うようにならない時に、ぼくも苦しくなります。これは仕事だから、ぼくも生きるために、世界とある程度の関係を持っています。本当は、もう全部やめたいんですけれど、求められることもあるし、生きないとならないから、最低限の努力はしますが、ぼくは経営者にはむかないのは知っているので、必要以上のお金をもうける予定も野心もありませんし、普通に幸せに生きることだけを追求したい。「満たされている」と思い込むことは究極の選択です。昔、頑張って来たので、もういいかな、と思っているのも事実です。

今は、悟りに入ろうとしている時期で、まとわりついてくる苦しみは、排除しています。世の中、みんな、いいことを言ってやってきて、餌でつろうとしてくるんです。それに飛びつくと、苦しくなります。美味しい話には飛びつかないに限ります。そんなに美味しいことはありません。そこだけ、きちんとわかっていれば、平和、を手に入れることが出来ると思いますよ。
あとは、「意識の改革」をすることです。難しく考えないで。この意識の改革はけっこう難しいですが、たとえば、ぼくは、意識を社会におろさないで、宇宙へとむけます。おお、来たな、と笑わないでください。周波数、振動、波動、この宇宙の持つ振動と自分が持っている周波数を合わせることが出来ると、穏やかになるような気がします。森と海のそばでぼくは今生きて、自然をモチーフに絵を描いていますが、いい波動を受けています。星と最近、話をしたことありますか? ぼくは夕陽とも月とも流れる雲ともいつも交信をしています。あはは、笑わないでください。ぎすぎすした社会で人を蹴落とし、のしあがったり、無限の悪口の中で生きるより、宇宙と交信をしている方が、うんと幸せだと思っています。でもここに辿り着くためには、下世話な世界も知らないとなりませんでした。でも、それらの経験が今の境地に繋がりました。あなたが苦しいのは、普通です。ぼくももはや若くはありませんですが、苦しいことがあります。だから、その先のためには必要なことをしようと思っています。概念にとらわれず、大きな波動と振動の中に身を委ねます。どうですか? 今夜あたり、宇宙と交信をしてみませんか。お月様、探していますか? 晴れた空に浮かぶ雲を5分でいいので、立ち止まって見てください。ほんのちょっと人生が変わるかもしれません。ところで、最近、地面に座ったこと最近、ありますか? 
コンクリート、電磁波、フェイクニュース、AI動画、・・・、なんか、気持ち悪いな、と思うものは、けっして、心のためにはならないものばかりです。遠ざけ、心を取り戻しましょう。きっかけは無限にありますが、そこに気づくのはあなた次第になります」

辻村だより、23



辻仁成展覧会情報

現在、フランス日動画廊パリでのグループ展に参加中。3月7日まで。
GALERIE NICHIDO paris
61, Faubourg Saint-Honoré
75008 Paris
Open hours: Tuesday to Saturday
from 10:30 to 13:00 – 14:00 to 19:00
Tél. : 01 42 66 62 86

それから、8月5日から、一週間程度(予定)、三越日本橋本店特選画廊Aにて、個展を開催いたいます。
今回のタイトルは「辻仁成展、鏡花水月」です。

そして、11月初旬から3週間程度、リヨン市で個展を開催予定しています。詳細は決まり次第、お知らせいたしますね。お愉しみに!

そして、電子書籍で「海峡の光」が配信されております。文学の方もどうぞ。

海峡の光 (Kindle電子書籍版)
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ええと、2023年のパリ、オランピア劇場ライブもごひいきに。

自分流×帝京大学