ノルマンディ、ツジ村便り

辻村相談窓口、「絵の具」 Posted on 2026/02/03 辻 仁成 作家 パリ

おつかれさまです。
辻村だより、ですが、辻村相談窓口、と改題させて頂きました。
意図はとくにございません。
お気軽に、ご相談ください。
デザインストーリーズのインスタとか、エックスに返信する形で、大丈夫です。もしくは、TSUJIVILLのでもOKです。手段は択ばず、お願いします。

今日はこのようなライトなご相談というか、質問が届いておりました。
匿名希望Sさん
「辻さんの絵が好きです。でも、なぜ、油絵なんですか? 他にもアクリル画とか、イラストとか、水彩画とかいろいろとあるのに」

辻村相談窓口、「絵の具」



おこたえしまーす。

「ぼくが油絵一択なのは、油絵具が乾かないから時短が出来ないという特性が自分にあっている、と思っているからです。油絵具は誕生して600年ほどの年月が流れてまして、一方、アクリルは出来てまだ、6~70年くらいの新種なです。数時間から一日で乾くので、上塗りが簡単だから、悩まず、どんどん仕上げられるので量産にむいてますが、油絵具は正直、完璧に乾燥するのに70年ほどの歳月がかかります。薄く塗っても1,2週間は乾きませんし、底部は何年も乾かないからこそ、時間がかかるので、ぼくのようなせっかちな人間には、絵と対峙する時間が要求され、それだけ絵に思念を込められるので、いいものが生まれる、というわけです。しかも、油絵具のテクスチャーがさらにぼくのような人間には標高の高い山のように聳えていて、厚塗りとかすると、もう、天文学的な時間を要する作品になってしまうので、その困難さこそが、ぼくを愛おしいんです。

料理も一緒で、時短で美味しければいいんですけれど、一昼夜煮込んだ煮込み料理には絶対叶わないので、ぼくは時短料理はどんなに忙しくても自分のためにしません。食い意地が激しい父ちゃんですから、死ぬまでに美味いを一億回くらい言って死にたいので、時短料理は、残念ながら、関心がないんです。でも、マクドナルドとかたまに食べます。なんででしょうね、あれはあれで、完成されているからかな。とくにフィレオフィッシュ! 笑。

あと、アクリル画も、バカに出来ないので、今は手を出せないという理由はありますが、たとえば、最近は油絵の下地に、アクリルの白とか黒を使って時短を試みています。普通、下地はジェソと呼ばれるものを塗るんですが、黒の下地にしたい場合は、黒のアクリルが便利です。(注意)アクリル絵の具と油絵具は反発しあうので、下地にアクリルを使うのはOKですが、逆は、NGです。

最近、フランスでは流行っているのはテクニックミックスと呼ばれる手法で、油絵具だけじゃなく、様々な絵の具を使って作品を作る手法ですが、父ちゃんは夏の三越の作品の一部に、日本画で使う「岩絵の具」を使用しています。本当に、ちょっとだけ、ざらざら感を出すためだけなので、テクニックミックスとは言えないと思いますが、面白い効果が出ます。ともかく、油絵具一択なのは、油絵具とは高校生くらいからの付き合いなので、すでに、半世紀、笑、相性がいいんです。流れる時間が、好きなんです。一つの作品が完成するのに、8か月から一年はかかっています。だから、一つの作品が乾くまでのあいだで、他の作品を手掛けます。つねに、いくつかの作品が同時進行になりますが、今のアトリエは広いので、よりやりやすくなりました。(上の写真はパリのアトリエですが、狭いですよね・・・)次回の夏の三越さんでの個展では、全く新しい手法の作品が登場します。重力を使った手法で、これが、すごいので、お楽しみに。つまり、特性を知っている油絵具が今は一番表現しやすい、ということです。時間があれば、鉛筆、アクリル、水彩などいろいろと試したいのですが、油絵具を超えるものとまだ出会ってないので、しばらくは、油絵だけになると思います。油絵\(^o^)/!」

辻村相談窓口、「絵の具」

父ちゃんの2026年のスケジュール。
現在は、パリの日動画廊でグループ展に参加中。電子書籍「海峡の光」パリのオランピア劇場ライブ盤、各配信サイトで配信中。
3月11日に、文庫「父ちゃんの料理教室」3月18日に、エッセイ集「キッチンとマルシェのあいだ」
8月5日から三越日本橋本店特選画廊A全面で「辻仁成展、鏡花水月」。
10月、パリ、アートフェア出展の予定
同時期、仏文学イベント、予定。
11月、リヨンでの個展、予定。同月、パリでのライブ、予定。この頃、小説「泡」刊行予定。他、予定多数・・・。



自分流×帝京大学