ノルマンディ、ツジ村便り

辻村相談窓口、「運命論」 Posted on 2026/02/10 辻 仁成 作家 パリ

はい、おつかれさまです。
ちょっと間があきましたが、今日も、相談窓口を開きたいと思います。
いい質問が飛び込んできましたので、さっそく。

匿名希望Jさん
「辻さんは運命論者ですか、運命論というものをどうお考えか知りたいです。というのも、同級生が先日、急逝し、運命論に心が傾いています。人生は決めつけられないとは思いますが、運命の力にはあらがえないのも事実じゃないか、と思うのですが、辻さんの意見、知りたいのです。よろしくおねがいします」

辻村相談窓口、「運命論」



おこたえしまーす。

「はい、難しいご相談ですよね。ぼくも毎日のように、運命について、考えていますよ。愛犬と散歩している最中も、沈む夕陽を見ながら、ずっと、あのことは運命だったのかな、と考えたりしました。ぼくが今、ノルマンディとこの犬と一緒に眺めているその夕陽を通して、ここでぼくが今暮らしているのも運命だな、と思うのです。
たしかに、不意に知り合いが亡くなったりすると、運命のせいだ、と思いたくなりますし、それはそうかもしれません。自分ではどうすることも出来ない、超自然的な力による方向性を運命と呼ぶのですから。
運命とは、人間の意志とか精神とか行動を明らかに超越して幸福や不幸をもたらす力のこと。あらかじめ、何者かによって定められた人生の経路を指す概念ということが出来ます。
まちがいなく、人間はみんなこの運命に支配され、操られ、その道を歩んでいるのだと思うし、誰かが亡くなった時に、その事実を見て、これこそ運命だ、と決めつける方が納得しやすいわけです。事実が出来た瞬間に、それは「運命」になる、ということが出来ます。ここが、ちょっと重要なんですが、ふりかかったことはその瞬間に、運命、になるわけです。それは超越した力による決定なので、人間は逆らうことが出来ません。たとえば、必ず人間は死ぬとされており、その時が訪れるとき、私たちは運命に気づかされることでしょう。
しかし、
しかし、待ってください。この運命論というものは「すべてはあらかじめ定められており、人間の努力ではそれを変更できないとする考え方」なわけですから、死んだという事実は変えられません。
しかし、しかしです。
人間はそれをどう受け止めるか、ということを選択できるんだ、ということを思い出してみてください。死んだ誰かのことを、どう心の中で生かすか、ということが、あなたには許されています。死者は残された者の心の中で生きることが出来ます。そうすると、運命のささやかな変更が可能なんです。事実は動かせませんが、その運命から導き出された考え方次第で、過去をよくすることも出来るし、そうなれば、未来だって動かすことが出来るかもしれません。運命は動かせない事実かもしれませんが、それをどう受け止めて、どう心におさめるかで、その運命をある程度コントロールすることも出来る。人が死ぬということを受け止めて、それをどうもって生きていくかで、人生の幸福度は変わる気がしませんか? 難しい話ではありません。運命は超越された力で決定された物差しだとしても、それを受けとめるのはわたしたち個人個人の意思です。その意思がどう運命を引き受けるかで、その運命そのものも変わる、ということだとぼくは考えています。なので、ぼくは運命論自体は否定しませんが、運命論者ではありません。それをどうとらえるかで、人間としての使命や喜びや幸福の在り方が変わるという考えを持っている人間だからです」

辻村相談窓口、「運命論」



自分流×帝京大学

2026年の父ちゃんの運命地図!

3月7日まで日動画廊でグループ展に参加中ですので、ぜひ!
電子書籍「海峡の光」
パリのオランピア劇場ライブ盤、各配信サイトで配信中。
3月11日に、文庫「父ちゃんの料理教室」大和書房。
3月18日に、エッセイ集「キッチンとマルシェのあいだ」光文社。
8月5日から三越日本橋本店特選画廊A全面で「辻仁成展、鏡花水月」。
10月、パリ、アートフェア出展の予定
同時期、24時間日仏仏文学イベント「24時間の小説」参加予定。決まり次第お知らせします。
11月、リヨンでの個展、決定。
同月、パリでのライブ、予定・・・。
この頃、小説「泡」刊行予定。
他、予定多数・・・。あくまでも、予定ですが・・・。