ノルマンディ、ツジ村便り
辻村相談窓口、「楽になるならいいじゃんね」 Posted on 2026/02/18 辻 仁成 作家 パリ
おつかれさまです。
さて、辻村の相談窓口が開く時間です。今日は短いご質問がふたつ、届いておりますので、さっそく、おこたえしてまいますかね。
☆
匿名希望Tさん
「辻さんのXを毎日の励みにしている主婦です。どうでもいい質問ですが、インスタとか、Xとかに書かれているあの短いメッセージは辻さん目線ですか、それとも、読者の気持ちになって書いてくださっているのでしょうか? もし、ご自分ならば、辻さんほどの人生経験者でも、日々、人間関係で悶々とされている、ということになるのかな、と思って」

おこたえしまーす。
☆
「そうですね。日々、感じていることを、多少、デフォルメして、読者さんに置き換えて、強めに書いています。2日前くらいのこの短文メッセージですが、たくさんの方に「いいね」してもらえたので、それだけ、この言葉に共感してもらえたんだな、と思いました。
これはぼくが最近、仕事で感じた「残念な出来事について率直に感じた気持ち」を言葉にしたものですが、多少の強さが加わっています。ぼく自身は、人間関係で嫌な思いをしても、ある程度、もう流せる年齢になりました。それは長く生きたから、その分、嫌なことを避ける術を身に着けちゃったんですね。でも、人間って、40代、50代、辺りになると、特に、若さだけでは乗り越えられない悶々が増えていくわけで、・・・それを先に経験済のぼくが、そんなに背負わなくてもいいんだよ、と伝えている、という次第です。作家だから、その目線になって、読者さんの気持ちに寄り添う書き方をしています。ぼく自身は、もっとクールです。ぼくに難癖をつくてくる人間がけっこういるんですが、もう、瞬殺してしまえる力が今のぼくにはあります。笑。それは長く生きたからですね、関われない人間の方が多いことを悟っているというわけです。リスペクトの無い人に気を使うのが無駄だと分かっているから、ぼくは乗り越えられるんです。でも、過渡期にある人にはそれが分からないこともあって、その人たちに、この言葉の援護は役立つようです。
先日、大変高名な漫画家さんと食事をしたときのことです、不意に、「辻さんのエックスで助けられている」と言われたんです。いいえ、ぼくじゃないんです、ぼくの言葉が、その人の人生に寄り添った、だけなんですよ、でも、やってよかったな、と思っています。これからも、ま、ぼくが生きているあいだは、続けたいと思っています。でも、いつも、だいたい同じ言葉を、その状況に合わせて、多少変えているだけなんです。でも、言葉って、その時に、必要なものだから、繰り返していようが、その人の目に留まれば、役立つんです。ぼくが生きた言葉を送信したら、それを受け取る人がいる。いいじゃないですか、このかまびすしい世界が少しでも、楽になるなら、いいじゃんね、と思ってやっています」
つづいて、もう一人はぼくの仕事についての質問です。
☆
匿名希望Aさん
「くだらない質問ですが、フランスでアーティストをやっている利点とかありますか? 僕も海外で創作をやりたいんですが、いろいろと本当は聞きたいんです。仕事まわりの話を聞かせてください。職能団体とか入ってるんですか?」

おこたえしまーす。
☆
「はい、ぼくはフランスの職能団体に入っています。25年前から、アーティスト枠で、そういう団体を通して、生きています。税金とかもその団体を通して、請求額が決まります。今は、全部一緒になりましたが、かつては、画家はメゾン・ド・アーティスト、作家は、アジェッサ、など、職能団体がいくつかありました。で、たとえば、ぼくはいつも「Rougiera&Ple」という画材店で画材を調達していますが、膨大な量の画材を買わなければなりません。職能団体の資格を提示すると、画家カードが発行されまして、これで買うとなんと20%引きになります。その上で、ポイントもたまります。20%引きは大きいです。笑。ぼくは日本にも個人事務所があり弟が運営していますが、フランスにある事務所が現在、アート全般のコントロールをしています。学芸員の資格を持っているスタッフさんがいるので、相談をしながら、特にフランスや欧州での今後の展開を考えています。ぼくは長く小説家を中心に活動していましたが、絵だと、何の説明も必要ないので、言葉が通じなくてもその世界を気に入って貰えると、世界中どことでも一瞬でアクセスできるので、自分には最終的にむいているな、と思っています。フランスは芸術の中心地ですし、出会いも多いので、ここから横に広げていきたいな、と計画中です。フランスで活動をしている利点というのは、わかりませんが、日本だとなんかメディアに出てないとならないみたいな速度感があって、でも、海外で絵の世界(小説も)に特化していると、それを求めている人たちがまったく別次元の人たちですから、メディアに露出しないですむのが、利点ですかね。絵は大衆文化ではないので、それも楽です。静かに創作が出来るので生きにくくないです。それにノルマンディは本当に田舎で素朴なので、素晴らしいです。このまま「あの人は今」みたいな感じで、忘れ去られたいです。でも、気づくと、作品だけがどんどん、ぼくのかわりに頑張って世界に出て行ってくれるなら、あゝ、もう、老後も安泰だな、と思っています。結論、フランスがいい、というのじゃなく、このノルマンディの人のいない世界で、静かに創作が出来る点が最高だし、フランスの職能団体のおかげで、ぼくは20%引きで画材が買えるのも、めっちゃ、ありがたいです」

はい、ということで、実は、ライブが決まりそうです。フランスはパリで、11月、7日か8日に、結構いい会場でやれそうですので、決まり次第お知らせいたします。
その他の情報をこちらにまとめました。
☟
3月7日までになりました。日動画廊でグループ展に参加中ですので、ぜひ!
電子書籍「海峡の光」
パリのオランピア劇場ライブ盤、各配信サイトで配信中。
3月11日に、文庫「父ちゃんの料理教室」大和書房。
3月18日に、エッセイ集「キッチンとマルシェのあいだ」光文社。
8月5日から三越日本橋本店特選画廊A全面で「辻仁成展、鏡花水月」。
10月、パリ、アートフェア出展の予定
同時期、「24時間日仏仏文学イベント」。詳細、決まり次第お知らせします。
11月5日から22日まで、リヨンでの個展。会場の住所や、画廊連絡先については、また後日、ここで発表します。
11月、7か8日、パリでのライブ、予定、現在交渉中。
この頃、小説「泡」刊行予定。現在、校正作業中・・・。もう一冊、文庫が出ます。
他、予定多数・・・。あくまでも、予定ですが・・・。


