ノルマンディ、ツジ村便り

辻村相談窓口、「息子に悩む」 Posted on 2026/03/03 辻 仁成 作家 パリ

おつかれさまです。
相談窓口開店の時間となりました。今日は、お二人のお子さんがいるというお母さまからのご相談です。
さっそくまいりましょう。

匿名希望さん
「相談があります。
辻さんはいつもお忙しそうなのに、お料理もして時間の使い方がとても上手だなと思って拝見しております。今思春期の息子が二人いますが、家にいる時はずっとスマホでYouTubeを見て中毒になっています。母としてはもっと違うことに時間を使ってほしいのですが、やめなさいとしか言えず、その度に嫌な顔をされうまく説得できません。辻さんなら、どうされますか」

辻村相談窓口、「息子に悩む」



おこたえしまーす。

「はい、思春期のお子さん二人は、大変ですね。ものすごく、よくわかります。ノルマンディで仲良くなったママ友がいまして、お嬢ちゃんと息子君がいるんですが、息子くんが、とにかく手がかかる。うちに遊びに来ても、もう、ずっと騒いでいるんです。家の中でテニスラケット振り回すから、描いたばかりの絵が破壊されそうで、ひやひやしました。そのお母さん、「毎晩、ぐったりしてしまう」と相談されたこともあります。涙目で・・・。わかりますね。仕方ないですよね。思春期ですもの。

で、子供たちって、携帯をとにかく、一日中見ているじゃないですか、しかも、これが問題なんですが、SNSがかなり暴力短動画で溢れているし、あと、大人でも、やばいなと思うようなエッチな動画とかね、人が死ぬ映像とか、もはや、小学生、中学生が見ていいレベルじゃない。それなのに、規制もないに等しい状況で、心配にならない親はいません。だからって、今の時代、携帯を持たせないわけにもいかないし、一度、SNSに沼ると、もう抜け出せない麻薬のような世界が広がっています。だれかの陰謀じゃないか、と思うほど、世界はここ数年で変貌しました。その上に、AIの進化で、流れてくる映像が鉛を舐めるような不気味、奇妙過ぎて、恐ろしい。しかもフェイクニュースだらけで、何を信じていいのか、さっぱりわからない世界が出来上がっています。そんなものを朝から晩まで見ている子供たち、どういう人間になるのか、作家のぼくでさえも、見当が付きません。(ぼくはそういう世界から抜け出すために、田舎にいます)



辻村相談窓口、「息子に悩む」

でも、悪い面もある一方、旧メディアでは届けることのできない最新の情報を、大量に瞬時に全世界に届けているので、若い人たちの政治や経済や人権や環境に関する知識はアップしているのも事実です。先日、ぼくのアトリエにフランスの画学生の卵たちが手伝いに来たんですが、話題が環境問題になり、学校では教えないような添加物や危険な薬物について語りだし、その知識は驚くほどでした。それは政治にまで及び、この世界の動きを子供たちはネットやSNSからかなりの勢いで習得し、彼らなりの認識を確立しようとしている、もちろん、間違いもあるのですが、その間違いを修正しようとする自浄力もある程度、生まれています。そして、この携帯やSNSなどの流れを今止めることはもはや無理だということもぼくにはわかっています。携帯を取り上げるために軍隊を出動させれば、国が亡びる可能性があるほど、若者は携帯文化に依存しているからです。新しい人類は、AIやこういう高速コミュニケーションと向き合わないとならないので、そのAi的な世界と現実世界との間に大人たちが橋渡しをするしかありません。もちろん、太刀打ちできませんが、現実世界は間違いなく存在するので、そこで、生の世界を体験させることで、中和させていくしかないのかも。いいところを掬って、悪いものは議論のテーブルにのせ、よくないと子供たち自身に悟らせるような環境を整えないとならなくなるでしょう。とはいえ、この速度で、地球がAi的なものにからめとられていくと、もはや、予測は不可能ですね。そういう世界を否定するだけじゃなく、新しい世界に乗り移りつつあることを大人たちも自覚していく必要があるのかもしれません。もっとも、ぼくはこの世界の10年後を楽観視できません。きっと、もう、別世界になっていることでしょう。AIは思うより早く人類の知能を超えるでしょうし、その世界で、人間は、どのような扱いを受けるか・・・。だとしたら、携帯をとりあげたり、叱ることが子供のためになるとも思えない世界になりつつあるということです。法律ではあまり規制出来ないので、子供たちが、自分たちの未来を自分たちで獲得していかないとならないのだと思います。超知能がまもなく人類を超えます。そこを見据えた子供たちの新しい価値観が始まっているように思えてなりません。だとしたら、古いぼくらが何か子供にパス出来るものがあるとしたら、自然溢れる世界に連れて行き、このリアルをもっと体現させることかな、とも思うのです」

辻村相談窓口、「息子に悩む」



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