ノルマンディ、ツジ村便り

辻村相談窓口、「人生の順番」 Posted on 2026/03/04 辻 仁成 作家 パリ

おつかれさまです。
ノルマンディは春らしくなってまいりました。今日は暑かったです。新しい戦争が勃発して、不安がましておりますが、どうなるのでしょうね。飛行機で日本に帰る時、ロシア上空ダメ、中東上空ダメ、毎回、アラスカ経由ですが、これもダメになったら、もう戻れなくなります。
不安の多き、日々ですが、辻村相談窓口を今日も開店させていただきます。

匿名希望さん
「初めて『ツジ村便り』に相談を送ります。私の両親は有難いことに80歳を過ぎても元気にそれぞれ一人暮らしを続けています。とはいえ、さまざまな問題が起こって、私も対応を迫られます。けれど私は優しい対応をしてあげられない時があるんです。相手は老人だし、親への感謝もあるのに…私の器の小ささを、あとで反省するのです。私ももういい歳で誰も叱ってくれなくなりました。辻さん、こんな私にお説教してください」

辻村相談窓口、「人生の順番」



おこたえしまーす。

「響きますね。ここの部分、同感というかぐっと来ます。ぼくも説教してもらいたい。あはは。
私ももういい歳で誰も叱ってくれなくなりました。辻さん、こんな私にお説教してください
ぼくもさすがに誰にも説教されなくなってしまいました。親には感謝され、息子もようやく大人になって、親の大変さがわかってくれたみたいで、優しいです。
生きるということを噛みしめて生きる年齢というのでしょうか、終わりが見えているので、思い残すことなく、生きてやろうかな、と思っている今日この頃ではあります。
あの、親御さんの問題ですが、同じですよ。けっこう、みんな一緒だと思います。ぼくの息子は22歳ですが、彼も、あと、20年もすると、当たり前ですが、42歳になります。その時、ぼくは80代ですからね、きっと、息子に叱られるんだと思うんですよ。繰り返しなんです。人間っていうのは、そうやって、年を重ねていくものですから、お子さんがいなくても、世の中が、そうやって扱ってくるでしょう。もちろん、敬意もあるでしょうし、ない場合もあるでしょう。自分がどうしたか、が跳ね返って来ると思って毎日を襟を正して生きていくしかないと思うんです。順番だなー、と最近、よく考えますよ。ぼくは若い頃、バンドマンでしたからね、あの頃は向こう見ずでしたが、昨日のことのようにあの時代を思い出すことが出来ます。最近、若い子たちとよく仕事をしているんですが、その子たちを見て、こんな時代もあったな、と懐かしく思っていますが、そこから今日まで、振り返ってみると、あっという間でした。これから先も、あっという間に過ぎるんだと思います。なので、いつも言ってることですが、一瞬一瞬を大切に、まずは、今日を大事に、丁寧に生きましょう、ということです。慈しむように、切に、今日を生きることで、生に浸るのがいいでしょう。その中に、親御さんの問題も、お子さんたちの問題も含まれています。自分の人生を一生懸命生きていることが、大事です。キッチンに立ち、美味しいものをつくって感謝しながら食べて、仕事を残り時間をつかってやり、勉強もして、よく眠ることです。様々な問題がおこり、人間ですから、その都度、対応に追われるかもしれませんが、そういう時は、まどろむ光のたもとを凝視してみてください。今まで生きてきたことに感謝が出来るなら、そういう問題はさほど振り回されることじゃないです。優しい気持ちを取り戻し、対応にあたってください。出会えてよかったじゃないですか、いろいろとあって喧嘩をしても、同じ時代に生きられてよかったですよ。20代のぼくには、こんな老人のような境地はなかったです。悟りを開いたら人間は終わる、と歌っていました。その頃のぼくを含め、すべてを、今のぼくは優しい気持ちで見つめられます。人間ですから、若い時代は、尖がっているのはあたりまえでした。犬だって、若いのは血気盛んですが、老犬は、悟っています。でも、花が目を出し美しく花を開かせ、枯れていくその最後の散り際にさえも、ぼくは感動を覚えますよ。この世界を見つめてください。あなたが生きているこの世界が、たとえ、戦争で最悪になったとして、一部の人間のエゴでぼろぼろにさせられたとしても、私たちのような気持ちで生きている人間はいるんです。戦地の中にも咲く美しい花があるように・・・。だから、説教なんて、とんでもない。ぼくはもう少し、遠くまで歩けるかぎり出かけてみようと思っています。お互い、楽しい一生を持ちましょうよ。親御さんに感謝をしていれば、多少、きついことを言うのは仕方ないです。順番なんだな、と思ってください。次は、私たちの番ですから、大丈夫ですよ」

辻村相談窓口、「人生の順番」



はい、ぼくからのお知らせですが、今、父ちゃんはアートカレッジの校長をやっております。アートの経験がない人たちに、豊かな人生を取り戻してもらうための、ささやかなカレッジです。興味ある皆さん、ぜひ、下のHPをご覧ください。

帝京×パリ・オンラインアートカレッジ