ノルマンディ、ツジ村便り

辻村相談窓口、「世界情勢」 Posted on 2026/04/14 辻 仁成 作家 パリ

おつかれさまです。
昨日行われたパリマラソンでしたが、長いこと、パリが大渋滞になっておりまして、スタッフさんが原因を調べましたところ、高齢のランナーが完走するのを待っている、ということでした。そして、なんとその人が92歳の日本人、「きたばたけ」さんだったのです。なんと、7時間ちょっとで完走した、ということで、在仏日本人界はもちろんのこと、フランスでも大きなニュースになっておりました。こういうのを快挙と言うんだと思います。92歳ですよ。92歳がパリのフルマラソン、42,195キロを完走って、すごくないですか? 自分、出来ません。すでにこの時点で、負けています。
この時点で、めっちゃ「きたばたけ」さんを尊敬しています。いくつになっても、夢を持って生きることのすばらしさ、ですな。
おめでとうございます。

さて、相談窓口の開店の時間です。
匿名希望Bさん
「辻さんは、今の世界をどう見ているのでしょうか?」

辻村相談窓口、「世界情勢」

おこたえしまーす。

「すごい世の中になっていますね。アメリカとイランの交渉が決裂したとたんに、トランプ大統領がホルムズ海峡を封鎖した背景については、あまり大きなメディアでは書かれてはいませんが、イランから中国に送られる石油を止めることが一つの目的でしょうかね。そして、イランに武器を供与する国には50%の関税をかけるというのも、名指しこそしていませんが、中国を年頭に置いてのことかと思われます。そして、欧州では、EUの中で強くロシア寄りを主張してきたハンガリーのオルバン政権が破れたのは、大きな意味があります。これまでEUはウクライナを支援したかったんですが、ハンガリーがことごとく反対をしてきたので、障壁になっていたわけで、新しい政権がEU寄りなので、今後はウクライナ支援が加速すると思われます。アメリカがトランプ政権になってからウクライナ支援がある意味、滞っていたので、ゼレンスキー政権にとっては、願ってもないムードと言えるでしょう。さて、ぼくがこの世界情勢をどう見ているのか、ということですが、(まったく)簡単ではありませんが、一つには、これまでの民主主義というものの崩壊、ということが言えるかもしれません。国際法などはもはや、理屈が通りません。自国主義が世界各地で台頭して、力のあるものが支配する世界になりつつあります。ベネズエラの石油を押さえ、キューバを締め付け、イランですから、すべて石油がらみであることは言えるわけですが、これらの石油はすべて中国が安く買って経済を回していたので、ベネズエラからもイランからも石油が入らなくなった今、この発端から、つまりベネズエラ大統領拘束の当初から、中国が年頭にあった、と考えてもいいかもしれませんね。日本は地政学的に巻き込まれている、ということでしょうが、もはや、同盟国という考え方も、今は昔の考え方になりつつあり、明日が見えない状況になっています。ホルムズ海峡の封鎖で、ロシアは韓国などが石油を買いだしたことで思わぬ利益、かといえ、抜け道は無限にあるのが今の世界です。地球はサプライチェーンで動いていたので、関税をかければいいということでもないし、石油は自国で賄えるとアメリカが思っても、世界は繋がっているので、結局、アメリカのガソリンも爆上がりしています。全員で首を絞め合っている状況が今の世界かな、と思います。どこまで我慢できるのか、どうやって、迂回ルートを探しだすのか、ですが、一国だけ生きのこれる、ような構図でもないのが、世界の現状だと思います。しばらく、苦しい世界経済の嵐が続くと思いますが、逆に、苦境だからこその新機軸というのは出来上がって来るので、新しいサプライチェーンはまもなく出来るのじゃないか、と思います。カギを握るのは、中堅国、だと思います。日本もそこに入っています。大国ではないが、この世界の常識をまだ持って動いている国々が力を合わせて、大国主義に依存しない新しい流れを生み出せるか、にかかっているのかもしれません。2030年くらいまで、混沌は続くような気がしますが、ここで大事になるのが、それを動かす人間たちです。さて、これはちょっとね、頭の痛い問題ですが、ハンガリーの野党「ティサ」の勝利は、苦境だったEUにとっては、いい風を吹かせることになりそうですね。もっとも、そんなに簡単なことは一つもない世界なのですが」

辻村相談窓口、「世界情勢」

近況のようなもの。
ここのところ謎の頭痛が続いていますが、やっぱり、ニス塗りのニスが原因だったようです。働き過ぎないように調整をして、創作に励みたいところです。
午前中は、毎日、小説「泡」のゲラをなおしています。あんまりお見せするようなものじゃありませんが、こういうのが、ゲラ作業となります。鉛筆が入っているところが校正者の指摘でして、それを判断をして、加筆などをやります。誤字の統一や、事実の確認など、かなりの範囲になりますよ。目が疲れます。まだ、老眼鏡は使ってません。あれね、使うと、瞬間はいいんだけれど、目が疲れるんで、まだ見えるから、メガネ無しでやっております。

辻村相談窓口、「世界情勢」

8月5日から、11日まで、東京の三越日本橋本店、特選画廊で、個展を開催します。一応、ぼくは時間がある限り、顔を出すつもりですが、どれだけ時間があるか、まだ、わかりません。
10月22~25日は、コンコルド広場で行われるパリ・モダンアートフェアに参加する予定です。
11月5日から、リヨンで個展があります。この個展は、油絵だけじゃなく、パステル、木炭画、なども展示されます。3週間ほどの個展期間になりますが、しげちゃんが日本からのツアーを計画中。
じゃあね、えいえいおー。

辻村相談窓口、「世界情勢」

辻仁成 Art Gallery
帝京×パリ・オンラインアートカレッジ