PANORAMA STORIES
今日のおやつ、マドレーヌ Posted on 2025/11/21 辻 仁成 作家 パリ
おつかれさまです。
日曜日の夕刻とか、夕食後とか、ちょっと寛ぎたい時に、食べたくなるのが、マドレーヌ。
焼き菓子のマドレーヌは大変有名だけど、このお菓子の由来というが驚くほど諸説あって、その辺を調べていくと、逆にこのお菓子はフランスの歴史の中から生まれたフランスを代表するお菓子であるということが分かってきます。
まず、マドレーヌの蘊蓄を、少々。
17世紀の貴族の館でマドレーヌという女性が客人を飽きさせないために作ったと言われている説のほかに、
大食漢のスタニスラス王の料理人が喧嘩していなくなり召使のマドレーヌさんが王のために拵えたとされる説、
マドレーヌという名の若い女の子が巡礼者のためにホタテの貝の殻を使って焼き菓子を作ったのが始まりという説などなど、いろいろと出てきます。笑。
まさに、フランスの歴史ですな。
面白い。
ただ、共通するのは、ホタテ貝の殻を使って作られたのが最初であろうという点、そして、マドレーヌという女性の名前から由来している点です。
17世紀、18世紀あたりに出現したお菓子だけれど、きちんとしたレシピは19世紀まで待たないと拝めません。
ということで、今日はマドレーヌを一緒に作ってみましょう。

そして、フランスを代表する作家マルセル・プルーストの代表作「失われた時を求めて」の中にも出てくるのが、このお菓子、マドレーヌ、・・・さすが。
「主人公がマドレーヌを紅茶に浸してから口に入れた瞬間、その味が幼い頃の思い出を鮮明に呼び起こした」というこの一節が、実はこのマドレーヌを世界的にさせたのであります。
このような蘊蓄を語った後に、この焼き菓子を作って食べると、身も心も古き良きフランスに旅することが出来ます。
誰もがマドレーヌちゃんになったような気持ちになり、ホタテ貝の殻にマドレーヌの生地を流し込むことが出来るのだから、すごいですねー。
王様や貴族の客人を喜ばせるようないたずら心で、微笑みながら作ってみたらよろしいのであります。
では、今日はマドレーヌを一緒に作ってみましょう。なんと、わずか卵一個で、家族みんなが楽しめる9個のマドレーヌが作れてしまうのだから、素晴らしいじゃないですか。
いざいざ。
まずは、材料から、
<材料>
卵 1個(50g)
バター 50g
砂糖 40g
小麦粉 40g
ベーキングパウダー 小さじ1
バニラ1/2本、または、バニラエッセンス 2滴
<作り方>
バターは電子レンジなどで溶かしておく。小麦粉とベーキングパウダーは一緒にふるっておく。
オーブンは190度に予熱しておく。
ボウルに卵と砂糖、バニラビーンズを入れ、湯煎しながらよく混ぜ合わせる。
そこにふるった粉類を加え、粉っぽさがなくなるまで混ぜる。
最後に溶かしバターを加え、ゴムベラで生地に艶が出るまで混ぜる。
ここで生地を冷蔵庫で30分ほど休ませる。生地を型に入れ、10分くらい焼いたら完成である。
えへん。


※ マドレーヌ型がない場合、耐熱性のアルミカップ、お弁当なんかにいれる、あれ! で作ったことがあります。気を付ける点は、入れすぎないこと。熱で膨らんで溢れ出るので、ちょっと少なめに注いで、焼いてくださいね。美味しさは変わりません。ちょっと不格好でも!

急いでいて休ませる時間が少なくても十分美味しですが、マドレーヌの生地は一晩休ませるとより美味しくなりますよ。
翌日のおやつのため、寝る前に仕込んでおくのがおすすめです。
作家マルセル・プルーストを気取って、紅茶に浸して食べてみるもよし、そこには、フランスの素朴な歴史の味と記憶が詰まっているからです。
素敵な週末を、お楽しみください! ボナペティ!

辻仁成、展覧会情報
☆
2026年、1月15日から、パリ、日動画廊、グループ展に参加。(辻仁成以外は、Henry Zers, Pierre Lesieur 彫刻のPatrick Blochの3氏)
2026年、11月には、リヨン市で個展が決まりそうです。版画なども出す予定。情報解禁になったら、まっさきにお知らせいたしますので、リヨン周辺在住の皆さま、お楽しみに。
2026年、夏に日本でも個展を開催する予定ですので、8月前半、スケジュールあけておいてくださいまし。

Posted by 辻 仁成
辻 仁成
▷記事一覧Hitonari Tsuji
作家、画家、旅人。パリ在住。パリで毎年個展開催中。1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。愛犬の名前は、三四郎。



