JINSEI STORIES
息子のための料理教室「トマトファルシとにんじんグラッセ」 Posted on 2021/01/24 辻 仁成 作家 パリ
そうかぁ、フランス人も弁当が好きなんだよね。最近、どこの店でも、BENTOボックス扱ってるものね。友だちに自慢をしたい? いいよ、じゃあ、今日はお弁当のおかずにも最適なファルシを教えてあげよう。これでお弁当を作ると綺麗だし、美味しいし、便利だぞ!
そういえば、君がちっちゃかった頃、パパは毎日、お弁当を作ってた。覚えてる? そして、たぶん、一番フランスの小学生でお弁当箱でご飯食べていたのが君だった。間違いない。日本だったらみんなお弁当箱で食べていたとは思うけど、フランスで毎日お弁当食べてる人は君くらいだったんじゃない? その時点で、辻ファミリーは凄いってことになる。なんで、笑うの? そこ笑うとかよ。涙、流せ!
しかし、お弁当箱の中に料理を詰め込んでいく作業は、日本の箱庭的な面白さ、表現の豊かさ、アート感など満載で、楽しい作業だった。どれだけ栄養のあるものをバランスよく詰められるか、というのでパパは苦心するのだけど、役立ったのが、このファルシだ。(これは和製仏語になり、本当はファルス)
要は何かに詰めた料理ということだけど、たとえばピーマンなどの中に肉を詰めて焼いたものをファルシと日本では呼ぶから、なんとなくフレンチかな、と思われがちだが、実はこの野菜に肉を詰める料理は世界中に存在する。
トマトとかピーマンの中にハンバーグみたいなものを詰めて作るので、子供にも食べやすい。トマトがあまり得意じゃなかった君がトマト大好き人間になるのは、まさにトマトファルシの影響が大きい、よね?
パパはいろんな野菜にいろんな具を詰めていった。
大きなズッキーニをカットし、中をくりぬいて作った。パプリカ、トマト、大根、マッシュルーム、シイタケ、キャベツ、白菜、詰めらる野菜なら、なんでも詰めたね。笑。
しかし、一番、やはり美味しいのはトマトだった。というのも、トマト・ファルシをオーブンで作ると、トマトの汁が肉汁と絡んで、自然に特製ソースが出来ちゃうからだ。
ということで、今日は、トマトファルシとにんじんのグラッセを一緒に作ってみよう。お弁当に最高だし、お弁当じゃなくても彩りがきれいだから、これだけで立派なご馳走になる。
味付けも自由、辛くも、甘くも自由自在だから、やってみよう。お弁当箱に入れるから、今日はプティトマトを活用するよ。その方が彩りも賑やかになるからね。
まず、ボウルに豚ひき肉を入れ、赤ワイン、オリーブオイル、その他の調味料をすべて入れて良く混ぜ、半日ほど寝かせておく。(←大事)
次に、トマトのヘタの部分より少し下をカットし、ティースプーンで中身をくり抜かなければならない。
これは意外と楽しい作業になる。こういう地味な作業がパパは好き。
トマトのエキスを少し残しておくこと。くりぬきながら、ちょっと汁感を残す、いいね、コツだ。
後で豚の肉汁と混ざってうまみが出るんだよ。
さて、トマトの中にひき肉のタネを詰めていく。
これもまた実に楽しい作業になる。小さなトマトの中に詰め込んでいくんだ。
グラタン皿に適量のオリーブオイル(分量外)を敷き、肉詰めされたプティトマトをきれいに整列させていく。
あらかじめ190度に予熱しておいたオーブンに入れ25〜30分焼く。
表面が微かに色づくくらいでOK。だよ。簡単だろ?
さあ、次はにんじんのグラッセだ。
にんじんは丸型でもシガレット型でもお好きな方をイメージしながら1cmの厚さにカットする。
面取りも忘れずに。この面取りも地味な作業になるけれど、グラッセが豊かになる。
角ばった人生より、丸まった柔らかさが美味しさを演出するというわけだ。
面倒くさがっちゃダメ。笑。
鍋に並べヒタヒタになるくらい水を入れ、バター、砂糖、コンソメを加えて煮る。水分が飛んできたら中火に。
にんじんの表面がうっすら焦げ目が出てきたら、はい、完成。
これをお弁当箱に詰めていくのだけど、どうだい? 楽しいだろ?
さあ、喰うかぁ!!!!!!!!!!!!!!
トマトファルシ、材料
ミディートマト 8個(直径4cmくらいのもの)
豚ひき肉 150g
赤ワイン 大さじ1
オリーブオイル 大さじ1
生パセリ 少々
クミンパウダー 少々
にんにく 少々(みじん切り)
ナンプラー 少々
醤油 少々
タバスコ 少々
塩 少々
こしょう 少々
にんじんグラッセ、材料
にんじん 2本
バター 20g
砂糖 大さじ2
コンソメキューブ 1個