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毎日が勝負飯、「丁寧に生きる飯」 Posted on 2026/02/19 辻 仁成 作家 パリ

おつかれさまです。
ぼくが毎日、自分に言い聞かせていることがあります。何度も言いますが、それは苦しい時に、それは気が急いている時に、それは人生が停滞している時に、ぼくはキッチンで自分と対峙しながら、
「ひとなり、人生を丁寧に生きることだよ」
とつぶやくのです。
不満ばかり起きたり、いらだちが遠ざからなかったり、神経質なことが多い時、ぼくは自分に向かって、人生を丁寧に生きようね、と諭すのであります。

毎日が勝負飯、「丁寧に生きる飯」

くじけそうになるじゃないですか、人間って・・・。
でも、そういう時に、人間を救うものは、「美味しい」という感動なんです。
もう、これだけを忘れないでくだされば、問題ありません。

毎日が勝負飯、「丁寧に生きる飯」

美味しいところには、人が集まります。
いろんなことがありますが、美味しいを中心において、みんなが笑顔になる、大事なことじゃないですか?
さ、食べましょう、じゃんじゃん、作って、みんなで食べようじゃないですか?

毎日が勝負飯、「丁寧に生きる飯」



自分を安定的に保つうえで、料理はランニングや筋トレや座禅やヨガにも負けない、いや、それ以上に効果のある人間性回復行動なのだと思います。
ぼくは苦しい時にはキッチンに行く、そして、そこで豚汁の出しを丁寧にとったり、魚を三枚におろしたり、鶏を解体したり、残った骨で翌日のラーメンのスープをとったり、時にはピザ生地をこねたり、それを息子や近所の子供たちに教えたり、残ったご飯を冷凍したり、ついでに冷凍庫を掃除し、奥の方から出てきたまだ食べられそうな食材を使って、奇想天外な料理を創作してみたりするのです。
毎日を丁寧に生きることが、今、どんなに大事かということだと思います。

ああ、こういうことなんだな、生きるということは、と思いながら、毎日、水道で米を洗っていたりするんです。
ご飯の水の量を加減しながら、時に塩昆布とかをいれたり、味付けご飯にしたり、そういう工夫が生きることに張り合いを呼び覚ますのです。
友だちは、ワインを持って来てくれました。
それをみんなで笑いながらあけて、舐めながら、人生はどうだい、と語り合うんです。
その輪を繋ぐのが料理なんです。
美味しい、があれば、絶対大丈夫です。
挫けないでください。
美味しいを探しましょう。

毎日が勝負飯、「丁寧に生きる飯」



田舎暮らしをはじめて、都会から田舎に拠点を移したことにも、同じような「丁寧に生きる」ことがベースに横たわっています。
ただ、コロナが怖いから田舎に逃げただけじゃない。
コロナがきっかけになり、これまでの飽食な人生観に疑問を感じ、パリを離れ、田舎に拠点をうつしました。
あれから、何年経つんだろう。この田舎で仲間も増えました。

いろいろとあるじゃないですか、人生というものは、苦しいことの連続です。バカにされたり、背中をおされたり、いろいろとあります。そういう時に、美味しいが、励ましてくれるんですよ。

毎日が勝負飯、「丁寧に生きる飯」

ぼくは、キッチンで自分を見つけます。
そして、今日をさらに素晴らしい日にするために、フライパンをふって、美味しいを作るんです。

毎日が勝負飯、「丁寧に生きる飯」



毎日が勝負飯、「丁寧に生きる飯」

はい、みなさんも、毎日、ご苦労様です。
誰も褒めないなら、ここノルマンディのキッチンから、父ちゃんが応援をさせて頂きます。
えいえいおー。
がんがん炒めてじゃんじゃん食べて今日を乗り切ってください。
今日もお疲れさまでした。
えいえいおー。

毎日が勝負飯、「丁寧に生きる飯」

自分流×帝京大学

Posted by 辻 仁成

辻 仁成

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Hitonari Tsuji
作家、画家、旅人。パリ在住。パリで毎年個展開催中。1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。愛犬の名前は、三四郎。