PANORAMA STORIES
レベルが高いフランスの田舎のカフェ飯 Posted on 2026/02/15 辻 仁成 作家 パリ
おつかれさまです。
まぁ、基本は自炊なんですが、気分転換に一週間に一度は海沿いのカフェや、マルシェ周辺に出るスタンドでちょっとつまむのがなんとも楽しいのであります。
もちろん、田舎だからやや大味なのは仕方がないけれど、中にはパリに負けないクオリティの店に出会うこともあります。
湯布院とか小淵澤とか小樽とか路地を歩いていると、ええええ、こんなところにめっちゃ本格派な・・・、というお店と出会うことがあるじゃないですか? それと一緒。
ぼくが暮らすノルマンディ地方は周辺に大都市はないのですが、ちょっと車を飛ばすと、人口だと3000人くらいの観光の町が点在します。
避暑地でもあるので、パリジャンも多く暮らしていて、だから、それなりのものを出す店がそれなりに揃っています。
☆
肉の王道、フィレ・ド・ブッフです。中が柔らかく、神戸牛とは違って、赤みで、いくら食べても胸やけはしません。ソースもついているけれど、フラードセル(塩の華)で頂きます、父ちゃんは・・・。

で、ぼくは美味しいカフェ・レストランとそうじゃない店とを区別し、いい店を発見する、天才なのであります。
ほぼほぼ外れたことがありません。
いい店は、細かいディテールにまでオーナーやシェフの気配りが行き届いてるし、テーブルセッティングやカトラリー見るだけでもある程度判断することが出来ます。
めっちゃ汚い中華街の屋台とかだと作ってる人の勢いとか客の待ってる感とか並んでる人とか、そういうのを総合的に判断し、安いから並んでいるのか、美味しいから並んでいるのかなどを見分け、いくつかの項目に分類して、「間違いない」を見つけ出すことが可能じゃないですか、それと一緒です。笑。
下の写真のは、ノルマンディ風仔牛のクリーム煮です。モリーユ茸のクリームソースがけ、ですね。

でも、一番大事なのは接客するギャルソンらの態度などに最初の味は見て取れるので、やりとりをしているうちに、期待が膨らか萎むかは明確ですね。
いい店はギャルソンらの機動力にも機微があり、しかも彼らが食に対しての情熱を持っているので、まず、この肉、珍しいね、と話しかけるだけで、出てくる情報を分析し、だいたい前線のギャルソンたちはシェフやオーナーの受け売りなので、そこから店全体のクオリティ、サービスを総合判断することも可能となります。
で、実際、食べてみれば、「通いつめたくなる店か、そうじゃないか」は、一目瞭然なのかな~、笑。
ルジェという魚のグリルですが、ソース、なんでしょうね、華やか過ぎる、笑。

マルシェも一緒で、並んでいる貝や魚や肉の乾き方で即座に、ダメな店か新鮮かは見分けられるし、やはり、店側と語り合うことは大事です。
仏語が話せようが話せまいが、自分がその食材への執着を見せる時、この仕事にリスペクトのある人は目を輝かせていろいろと話しかけてくるし、冗談の一つもかえってきます。
やる気の薄い灰色の表情をしている店員のマルシェで美味しいもをゲットできたためしはありません。
まず、遠くから眺める。人の動き、勢い、活気があれば、近づき、ちょっと会話をする。(知らない国を旅する時、これが役立ちますよ!)
その時、並べられた食材の鮮度、勢いを目視し、気になるものがあれば、それを指さし、ちょっと店側の売る気持ちと知識を引っ張り出してください。
「これはさっき、俺が釣ってきた魚で、ちょっと高いけど、でも、こんなの他所じゃありませんぜ」
その自信に嘘はないんですね。財布と相談をして買えばいい。
店のギャルソンと目が合ったら、天気の話しをして、久しぶりだね、とか・・・。初めてのギャルソンでも、久しぶり、元気だった?と戻ってくるから、(いちいち全部の客の顔は覚えてられない、笑)ま、それがご挨拶の始まりということで、いい風習です。「日本に仕事で戻ってたんだ」と言ってやれば、さりげなく日本人であることを伝えることもできる。で、日本に負けないくらいここの魚はうまいよね、と語っておけばいい・・・
自然な流れで、今日、入った鯖は油がのっていて美味いけど、一番いいの日本人の友達に出してやるからさ、待っとけ、となったら、しめしめ・・・
ともかく、外から店内を眺めて、地元民のような人が笑顔で料理をつついている店、ギャルソンと楽しそうにやりとりしている笑顔の絶えない店、何か美味しそうな空気感を持った店、かどうか、チェックしてから飛び込んでくださいね。グーグルマップの点数はあまり気にしないで、コメントはよく読んで、5とかついている店は危険です。笑。人間って、いじわるだから、人気店は足を引っ張られるので、いい店は、4.1くらいですかね・・・。

上のがマグロのタタキステーキですね。下のが、ポークソテーですな。ジャガイモがとにかく、美味しいんですよ。

父ちゃんからのお知らせ。
☆
3月7日まで日動画廊でグループ展に参加中ですので、ぜひ!
電子書籍「海峡の光」
パリのオランピア劇場ライブ盤、各配信サイトで配信中。
3月11日に、文庫「父ちゃんの料理教室」大和書房。
3月18日に、エッセイ集「キッチンとマルシェのあいだ」光文社。
8月5日から三越日本橋本店特選画廊A全面で「辻仁成展、鏡花水月」。
10月、パリ、アートフェア出展の予定
同時期、「24時間日仏仏文学イベント」。詳細、決まり次第お知らせします。
11月、リヨンでの個展、決定。明日、打ち合わせがあるので、詳細またお知らせします。
同月、パリでの何かのイベント、予定・・・。
この頃、小説「泡」刊行予定。現在、校正作業中・・・。
他、予定多数・・・。あくまでも、予定ですが・・・。

Posted by 辻 仁成
辻 仁成
▷記事一覧Hitonari Tsuji
作家、画家、旅人。パリ在住。パリで毎年個展開催中。1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。愛犬の名前は、三四郎。


