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欧州旅日記「もう一度行きたい、リスボン観光の魅力」 Posted on 2023/02/12 辻 仁成 作家 パリ

 
今まで欧州各地を旅しましたが、もう一度行きたい都市は数あれど、現実的に、自分がいつか暮らしてもいいかな、と思ったのは、ここポルトガルです。
ポルトガルのこと皆さん、何かご存じでしょうか? 
日本にゆかりのある国ですね。

1543年に種子島にポルトガル商人が漂着しましたね、そう、歴史で学んだ「鉄砲伝来」です。
日本には数多くのポルトガル語が今も根付いています。
ちょっとご紹介しますと、ビスケット、ブランコ、カルタ、ボタン、カステラ、コンペイトー、テンプラ、パン、
といろいろあります。しかし、この程度の知識しかポルトガルについてぼくたちは知りません。

実はぼくもポルトガルに、リスボンに行くまでわからなかった魅力、素晴らしさが、驚くほどにあったのです。
スペインも大好きな国で、近隣のなので似ていますが、もっと素朴というか、ちょっと暮らしたいなぁ、と思うような国なんですよ・・・。
とくに坂道が多い、リスボンは本当に美しいところで、穏やかな風が流れているし、人々が温厚なのです。
 

欧州旅日記「もう一度行きたい、リスボン観光の魅力」

欧州旅日記「もう一度行きたい、リスボン観光の魅力」

 
パリでもよく見かけるようになりましたが、市内にはトゥクトゥクが走り回っています。
まずポルトガルを知るためにこれに乗って手っ取り早く市内観光をしてみるのも悪くありません。一回で、リスボンの全容がわかるからです。
全体を掴んでから旅を始めると、掴み、が早くなり、時間を有効に使えますね。
ぼくが頼んだのは、女性のドライバーで、しかも、めっちゃ美人でした。☜ そこ、おやじ丸出しですね。あはは。
息子に、何ニヤニヤしてんの、と足を蹴飛ばされてしまったのでした。

でも、観光だけでは行けないような庶民的な、曲がりくねった路地なんかも案内してくれましたし、1時間という約束なのに2時間近くリスボン観光をやってくれたのです。そういうところがポルトガル人のやさしさかもしれないです。
余計な話ですけれど、マリアさんという名前でした。ポルトガルでもっとも有名な女性の名前なんだとか・・・。
息子がいなければもっと楽しかったのですけど、仕方ありませんね。えへへ。
 



欧州旅日記「もう一度行きたい、リスボン観光の魅力」

※ こちらのドライバーさんが、マリア~!!!!

欧州旅日記「もう一度行きたい、リスボン観光の魅力」

 
リスボンには7つの丘があります。
その狭い石畳の坂道を車とトゥクトゥクと路面電車(トラム)が行き交います。そうだ、ケーブルカーも。
なかなかダイナミックでまるで映画のような迫力なんですよ、これが、
007映画のような感じになります!!!
なので、目まぐるしく景色が変わります。
丘の上に登ったかと思うと、川沿いの低地の路地をくねくねと蛇行するのです。

マリアが2か所、見晴らしのいい丘に連れて行ってくれました。
まずはもっとも高い場所に位置する、セニョーラ・ド・モンテ展望台です。リスボンの絶景が広がります。

まだ小さかった息子(12歳だったかな、当時)は走り回り、マリアは運転席でかっこよく煙草をふかしていました。いやぁ、ぼくは鼻の下を伸ばして、まるで映画俳優をきどって、おりました。はい~。
 

欧州旅日記「もう一度行きたい、リスボン観光の魅力」

欧州旅日記「もう一度行きたい、リスボン観光の魅力」

 
次に連れて行かれたのが、ちょうどその対面に位置するサン・ペドロ・デ・アルカンタラ展望台でした。
こちらはとってもムーディな大人の雰囲気のある場所でした。
サクソフォン奏者が演奏をし、人々はベンチに座って夕陽を眺めていたのです。

マリアは運転席でニコニコ微笑みながらまたもや煙草を吸っていました。これが絵になるんですが、たばこを吸わないぼくは、一緒に暮らせないなぁ、と思ったものです。ただのぼくの感想です。必要ない? あはは。
ということで煙草を吸わないぼくは、少し離れたところからリスボンの景色を眺めていたのです。
 

欧州旅日記「もう一度行きたい、リスボン観光の魅力」

欧州旅日記「もう一度行きたい、リスボン観光の魅力」

 
可愛らしい建物、壁のタイル張りがなんともポルトガル。
歩道もほとんどが石畳で、どこも手作業による改修工事が続けられています。
愛すべきリスボン、本当に大好きになりました。

誰もが詩人になり、誰もが映画俳優になることのできる街・・・。
ぜひ、心とお財布にお優雅あるとき、訊ねてみてください。パリ経由になるでしょうから、パリを堪能したついでに、ポルトガルまで足を延ばす、というのが、いいかもしれません。
 

欧州旅日記「もう一度行きたい、リスボン観光の魅力」

 
日が暮れる頃にマリアがホテルまでぼくと息子を送ってくれたのです。これは料金に関係なく、と言ってくれました。
もちろん、ぼくはちょっと多めのチップを渡しましたが、受け取ろうとしません。
1時間の約束を2時間も費やしてくれたのに・・・。
ま、いいんじゃないの、と息子が呟き、さっさとホテルの中へと入っていきました。ぼくは後ろ髪をひかれながら、いつまでも、マリアに手を振り続けていたのです。いいですね、こういう旅先での人間交流も。
旅先で、人のやさしさを受け、そこがもっと好きになるということはあります。
ポルトガル人は、お店の人も、路地にいるおじさんたちも、ホテルの人も、皆さん、とっても優しかったです。
ああ、いつか、暮らしてみたい。

Photography by Hitonari Tsuji

 

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Posted by 辻 仁成

辻 仁成

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Hitonari Tsuji
作家。パリ在住。1989年に「ピアニシモ」ですばる文学賞を受賞、1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。ミュージシャン、映画監督、演出家など文学以外の分野にも幅広く活動。Design Stories主宰。