PANORAMA STORIES

紙の上のバーレスク人生劇場 Posted on 2022/02/04 エロチカ・バンブー バーレスクダンサー ベルリン

ドイツの王様が建てた麗しい劇場や、バラエティに飛ぶ人種がギュッと詰まったパーティや、音楽が常に街に溢れているベルリンの楽しさをデザインストーリーズで書ける日はいつかしら・・・と思い続けて早2年。

終わる気配をなかなか見せてくれないコロナ台風。このパンデミックで、ショーのない生活を人生で初めて送る事になった。 日本、アメリカ、ヨーロッパと裸で駆け巡り、ある時は朝方までボロボロになるまで会場を熱く沸かした。
毎月、世界のどこかでショーをし続け、10代から今に至るまで長い休みといえば妊娠中の5ヶ月だけっていうのが自慢だったのに!
いきなりポッカリと大きな穴が開いてしまった。海外で生きて来て色々な嵐を経験すると、もう何が起きても笑うしかない。

不謹慎極まりない私に訪れたビッグホリデーは、良く言えばサプライズの「ギフト」でもあった。
おかげで改めて自分のショービス人生を振り返ることができたのだから。

ショーの後、クラブの扉を開ける私は、眩しい爽やかな朝の光とは対照的に、ボロボロになって笑っていた。
だから私にとってこのホリデーはちょうどよかった。なんの保証もない人生を選んだ私の、銀行口座はからっぽに近く、不安はあったけれど・・・。

紙の上のバーレスク人生劇場



ホッと人生の一息をしていたところ、偶然SNSに書いた一言がきっかけで、自伝を書くことになってしまった。自分でもびっくり! 
まあ、どうせ暇だしやってみよう。そんな軽い気持ちで、1年は執筆活動に専念することにした。
新たなチャレンジは私を飽きさせなかった。ホッとすることって大事なのね。

九州でいきなりデビューした頃、全く踊りも出来ず、ブスでドジで間抜けなウスノロだった10代後半のどうしようもない自己への憤りの中、書き留めておいた日記やメモ。ネットのない時代、移動中や楽屋で書いたイラスト。
そこには日本のもう一つの芸能史、消滅してしまったグランドキャバレー や無名だけれど、どこか憎めない裏芸能人達、ビッグバンドの迫力のあるキャバレーの世界。
テレビや映画やお芝居ではお目にかからない独自のB級芸能界、そのチャーミングさをギリギリ体験できた私が、その人たちに育ててもらったお礼に、どうにか何か残したいという思いもあった。

紙の上のバーレスク人生劇場

地球カレッジ

しがないキャバレーの踊り子がどうやって海外へ飛び出し、全米ナンバー1のバーレスクダンサーになっちゃったか。
ショーひと筋できたから恋愛も下手。家族のいないアメリカで自宅出産した日のことなど、田舎のモーテルのメモ帳やベガスの娼婦の写真がのった新聞、常に書けるものにはなんでもメモっていた。

アトリエの奥のボックスに仕舞い込んで忘れ去られたそれらの文章や走り書きのノートの埃を払い見直し、ベルリンのアパートのキッチンやカフェで、せっせせっせと書き綴っては、お会いしたことのない出版社へ文章を送り続けていた。自伝を出すことに、まだ半信半疑ではあったけれど。

紙の上のバーレスク人生劇場

紙の上のバーレスク人生劇場



ヨーロッパが絶賛ロックダウン、凍るような寒さのベルリン年末、とうとうお金が底をつき、私は逃げるように東京へ一時帰国した。

そこで初めて神保町にある東京キララ社を尋ねたのだった。 そこはカウンターバーとDJブースのある出版社。おや?ここはベルリン?さて、本はどうやって出来上がって行くのでしょう。それはショーを作る時の過程にとても似ていた。
自分の中で文字がポロロンと浮かび、バーッと書き上げ、テンポやリズムでノリノリ!ここは間が少しズレた? 全体を見直して再度赤ペンで手入れ。編集者の方が「ここにはこの写真がぴったり」と整えてくれると化学反応が起きてより”私らしさ”のデザインが作られてゆく。

表紙は衣装。一枚一枚めくってゆくと何がでるの? 
ショーをする時、自分が思い込んでいた『私』から 脱する瞬間がある。本を作る過程でも私だけでは見えない『私』を気づかせてくれるダイナミズ ムを味わせて頂いた。熱く愛をこめて仕上がってゆく。子を育てるように。 忙しい東京であるはずなのにベルリンの芸術家が自由に作品を作るような余裕があった。デザイナーさんも営業さんも編集者が一丸となって共に作品を仕上げる共同作業は、まるでキャバレーのお客さんだけでなく、そこで働く全ての人に、「その場のその一瞬だけでも幸せな楽しい瞬間を作り上げたい」という私の喜びと同じで燃えた!

紙の上のバーレスク人生劇場



最終章を羽田発フランクフルト行きの最終便で書いたこの本のタイトルは『エロチカ・バンブーのチ ョットだけよ 』。チョットだけでも元気が必要な人に、このトンチンカンでポジティブな波乱万丈 ストーリー、届きますように。 なんと言ってもヨーロッパでデザインストーリーズの文章を書かせて頂いたことは、孤独は豊かな時間を運んでくれること、文章を書くという楽しさを教わった。
私にとって、デザインストーリーズは大きな宝物。

野口千佳著『エロチカ・バンブーのチョットだけよ』(東京キララ社) 全国の書店・Amazonなどで絶賛発売中!👇
https://www.amazon.co.jp/dp/4903883566/ ref=cm_sw_r_tw_dp_00T23CEXXR7ZV09B2E35

紙の上のバーレスク人生劇場



Posted by エロチカ・バンブー

エロチカ・バンブー

▷記事一覧

Erochica Bamboo
バーレスクダンサー。日本の各都市のクラブやキャバレーでショー活動した後、2003年にラスベガスにある世界で唯一のバーレスクミュージアム、Burlesque Hall of Fameで開かれるバーレスクの祭典で最優秀賞を獲得。それを機にLAに拠点を移す。2011年よりベルリンへ移りヨーロッパ、北欧で活動中。ドイツのキャバレー音楽ショー”Let’s Burlesque”のメンバーとしてドイツ各地をツアー中。