PANORAMA STORIES

55歳のバーレスクダンサーが持つ優雅な死生観 Posted on 2020/10/22 エロチカ・バンブー バーレスクダンサー ベルリン

嘘が苦手だった私は、19歳の時に嘘の世界に入ったのだけれど、まんざら嘘ではなかった。
ハタチを過ぎていると偽ってこの仕事を始めた時はやはり後ろめたく、やっとハタチになった時はほっとした。
「何歳までしかできない」とか、
「その年でやっているの? 」、
「その年で結婚はしないのか」と、
25歳位くらいからちょくちょく周りから囁かれるようになった。それはある人達の住む世界の価値観で、ただの呪いでしかないのによ!

私にはその呪いは効かないけれど、それでも気が弱っている時、時々その呪いは私を揺るがしにくる。
そう言う時は言うの、「人生はコメディだっ!」って。

コロナで人生のホリデーが到来して、今までなが~く自分がやって来たことを見直すと、呆れてしまうほどよくやって来たと思う。
海外でアパートを借りて、高すぎる税金を払って、眠れない夜や、起き抜けに涙がこぼれ出す日々をこなして来た。
貯金が底をつくなんてもう慣れっこよ。
ショーのツアーで長旅から帰った夜中、まだ出来そうとベルリンのクラブで朝4時まで踊った。
コロナ前までは、LA-東京-ベルリンとイベントを企画しては、お祭り騒ぎをこしらえて、もう自分でもあきれるほど、全身全霊で踊って来た。
ビバ55 歳。あらえっさっさ~

55歳のバーレスクダンサーが持つ優雅な死生観

体が悲鳴をあげないのは楽しんでいるからだと思っていたけれど、今、実は相当酷使していたと気付かされているの。
ある意味このパンデミックに不謹慎ながらも感謝してる。
このコロナ禍で今までのクレイジーな人生が変わろうとしている、気がする。
最近立て続けに、あらまあ! というようなことが起きる。 SIMカードがなくなり、スマートフォンが壊れて画面は常にレインボー。
パリでさえ遭わなかったのに人生初のスリにあい、家の鍵が壊れ、先週はいきなり健康保険会社から月々の支払いに加えて20万円近い請求。
そして昨日は洗面所のパイプから水漏れで、私はキッチンで歯を磨くことになった。
挙句にここ数日MACのカーソルが自由に飛び回る!
笑いが止まらない。

ほらねコメディでしょ!

情報に振り回されず自由に生きなさい。
いや待てよ、自由に生きてきたけど、本当に私は自由なの? それを確かめる為にそろそろ変化してみたら?というメッセージなのかもしれない。
ありがとう。



制限付きのイベントもチラホラ入り始めているけれど、私はやらない。
悪いけどバーレスクは蜜よ! 音楽や映画と違って他の方法では伝わらない。
流行りのオンラインでやるならいっその事CGになって登場したい。
ショーをやらないという決断は今までになかったことなので、自分でもびっくりしている。
これが一番大きな変化かも・・・。
そんなこんなで時間に余裕がある私は、最近よくお墓にいくようになった。
背の高い木々や季節ごとの花々が咲き誇りる市民の憩いの場、隠れ家のような落ち着ける麗しい場所。
だから夜は墓場で運動会ではなく、昼 から墓場でピクニック。なんたってドイツはお墓とお墓の間隔が広いのだ。

55歳のバーレスクダンサーが持つ優雅な死生観

うちは、元西ベルリンの空港テンペルホフの近くなので墓地が沢山ある。
その墓地の一角に、数年前カフェがオープンした。
ブドウのつたが絡まりジャスミンが咲く小さなガーデン付きの煉瓦造りで、なかなか人気のカフェ。
時に葬儀で鐘の音がご~んと響くけれど、時にはそこで結婚式のパーティが開かれたりもする。
実はこのカフェ、元屍体洗い場だったの。
でもそんなこと、ドイツ人にはお構いなしのよう。
死んだら体は土に戻る。
それだけ。

55歳のバーレスクダンサーが持つ優雅な死生観

55歳のバーレスクダンサーが持つ優雅な死生観

別の墓地には奥に小さな農園、小さな養蜂場、そして掘立小屋のようなカフェもあり(私は今そこにいます)、子供も大人もやって来ては寛ぎ、そして無農薬の野菜を作ったり、蜂がいかに生きている我々にとって大切な生き物か、そして、死について自然に学べる環境になっている。
人の意識によって、墓場はジメっとして気味の悪いものにもなるし、小鳥が囀りお日様が燦々と照らす明るい公園にもなる。
お墓が残された人のためにあるのは日本もここも共通していると思う。

55歳のバーレスクダンサーが持つ優雅な死生観

55歳のバーレスクダンサーが持つ優雅な死生観

人々を眺めながら私はどこでどのように亡くなるのかなと考える。
いつどこで生き絶えるかなんてわからない。
日本に戻れないことも十分考えられる。
私は無宗教だから死に方も自由だし、死んだ後も自由なはず。
どうせなら無駄なく地球に還元したい。
だから私はケミカルな薬をなるべく獲らず、ビオ(無農薬)で生きていこうと心に決めているの。
時々頂くお酒はアルコール消毒。戒名もいらないしお墓もいらないわ。
この惑星で生まれ、この肉体に入り込めと自ら呪いをかけたのだわ、きっと。肉体を失うという最期の時まで変化していこう。
この肉体そのものがなくなった時、初めて呪いから解き放たれるのかもしれない。
精神だけならどこへでも飛んでいけるのに。今またサナギの中にいるよう。あと何回孵化するのかしら。
もうこの地球上に生きる時間も徐々に短くなってきたのでお楽しみである!



自分流×帝京大学
地球カレッジ

Posted by エロチカ・バンブー

エロチカ・バンブー

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Erochica Bamboo
バーレスクダンサー。日本の各都市のクラブやキャバレーでショー活動した後、2003年にラスベガスにある世界で唯一のバーレスクミュージアム、Burlesque Hall of Fameで開かれるバーレスクの祭典で最優秀賞を獲得。それを機にLAに拠点を移す。2011年よりベルリンへ移りヨーロッパ、北欧で活動中。ドイツのキャバレー音楽ショー”Let’s Burlesque”のメンバーとしてドイツ各地をツアー中。