PANORAMA STORIES

今日の献立、トスカーナの手作りパスタ、ピチ Posted on 2025/07/18 辻 仁成 作家 パリ

手で一本一本こねて作る「ピチ」というパスタを作りますよ。

「冷静と情熱のあいだ」舞台、フィレンツェ(トスカーナ州の州都)で、よく食されている「ピチ(Pici)」なる手作りパスタ、これが、今までの手作りパスタの中で、最高峰だったので、ぜひ、真似てみて頂きたいのです。
これ、日本のすいとんに食感はそっくりなんですが、トマトソースなどで絡めることで、信じられないほどに、美味しくなるわけです。
使うのは水と薄力粉(ファリーナ00,グラーノ・テネーロとかね。日本の薄力粉でも行けると思います)、オリーブオイル(気持ち)だけ、・・・。
コシのつよいうどんにそっくりなんだが、これが、もちもち、しこしこして、実に美味いのであります。
水分と薄力粉の分量、そのこねかた、微調整で、味や食感が違ってきます、まー、マンマのごはん、イタリア家庭のパスタ、ということですね。
とはいえ、紀元前7世紀ごろにはすでに食べられていた、という文献もあるほど、歴史が古い。古代ローマよりも前から、存在するピチ!!! 
食べない手はない、ですなー。

今日の献立、トスカーナの手作りパスタ、ピチ

※ イスキアで頑張る、八重樫シェフの写真をお借りしました。

では、さっそく、作っていきます。

薄力粉の山をつくり、中心部に穴をつくり、そこに塩を少し、ふって、水分を粉に吸わせながら、中心部からくるくる、練り上げていく。
最後は山が全部まとまるように。
水分量と薄力粉の割合は、お好みなので、水分は様子みながら、微調整していくといいね。
硬すぎないよう、練って作るのがコツ。
すいとん、を思い浮かべてもらえれば、よい。
捏ねて練り込んで出来上がると、ちょっとあんぱんみたいなサイズの丸みある生地ができる。
練り続けると弾力が出てくるのだが、硬すぎるといけないし、柔らかすぎても、いけないので、そこらへんは、いろいろと試行錯誤ね。
タリオリーニとは違うので、すいとん、を作るイメージで・・・、笑。
出来たら、丸まったまとまった生地の中心をちょっと押してもらい、上から押すと、戻って来るくらいの弾力なら、最高。2~30分ほど、寝かせる。
で、うどんと全く同じように、麺棒で伸ばしていくのだ。これが楽しい。
麺棒で伸ばしている時に、下の板にくっつく場合は、打ち粉をする。
厚さが5ミリ程度になるまで伸ばしたら、生地が渇く前に、包丁でカットし、鉛筆くらいの太さに適当に切って、それをセモリナ粉(打ち粉)ちょっとふりながら、まとめやすくする。
太さは家庭によっていろいろと違うのだけれど、うちの場合は、鉛筆サイズにこねる。太さは一定じゃなくて大丈夫、その方がおいしいという結論。
めっちゃ不格好なうどん、・・・うどんでいいじゃん、と思うでしょうが、違う。食べれば、わかる。
鉛筆サイズに成形した麺は、あらかじめ打ち粉をひいておいたパッドとかに並べていく。くっついちゃうからね。(茹でると予想以上に太くなるので、あまり厚くし過ぎない)
とにかく、打ち粉をする。これも、うどんとか、蕎麦と一緒だね。写真、参照。

今日の献立、トスカーナの手作りパスタ、ピチ

※ こうなります。一本一本、手で不格好を目指して形成しました。縄を結うみたいな、ごしごし、と。やり方は千差万別で、まな板みたいなもので丸める人もいます。でも、太いところややや細いところがある方が、触感、がおいしい。すいとん、方式。

今日の献立、トスカーナの手作りパスタ、ピチ

ところで、ソースにいれるですが、市販のサルシッチャは、東京だとナショナル麻布マーケットで見つけました。冷凍コーナーにイタリアソーセージというのが、それ。またはネットで買えます、が、実は、手作り簡単です。
豚肉のひき肉に、お好きなスパイス(ハーブ系とか)をいれて、塩胡椒多めにして、こねて、ハンバーグのもとみたいにして、一晩寝かせるだけで、サルシッチャできます、いい感じになりますよー。
それを炒める前に、小さな団子状にするとか、したら、いいでしょう。
サルシッチャって、要は、ソーセージの中身、ということだから、・・・。シポラータは、フランスの名前ね。



今回は、プティ・トマトを使い、トマトソースを作り、そこにサルシッチャにフヌイユシードなどのスパイスを入れて自分の好みのスパイシー加減に味付け、要はソーセージの中身を一緒に炒めて、そこに、茹で上がったピチを入れたら、完成となります。
いろいろな種類のピチがあります。
ニンニク、唐辛子をオリーブオイルで炒め香りが引き立ったら、パン粉を入れて、軽く炒め、香りが引き立ったら、そこに茹で上がったピチを入れ、あわせるだけのシンプルなバージョンも、実に、トスカーナっぽくて、美味しいのです。
パッタ・フレスカ(手打ち麺)なので、茹でる時、最初は麺を動かさないのがコツ。ピチは太いので、3,4分で出来るのですが、火が入ると麺が浮いてくる、それが完成の合図。
でも、麺が太いので、中が生じゃないか、心配ですよね、そういう時は、ちょっと味見をしようね。
で、完成がこちら、どう?
ひゃああ、美味しそう・・・。じゅるっ。
絶対美味しいやつでしょ?
マジで、最高であった。今年、一番、まだ、7月だけれど・・・。
おかげで、元気になり、素晴らしい創作ができた、普段はぼろぼろの父ちゃん。
今日は、髪の毛も洗ってない、普段の画家風おやじをご覧ください。
ボナペティ!

今日の献立、トスカーナの手作りパスタ、ピチ

今日の献立、トスカーナの手作りパスタ、ピチ


「Le Visiteur」展、
東京、7月9日から21日まで、三越日本橋本店、コンテンポラリーギャラリーにて。
岡山、7月23日から28日まで、岡山天満屋本店、美術画廊にて。
パリ、10月13日から26日まで、パリ、ピカソ美術館そば、GALERIE20THORIGNYにて。
問い合わせは、各画廊へお願いします。

そして、毎月3回やっているラジオ・ツジビルはこちらから、です。どうぞ。

TSUJI VILLE
自分流×帝京大学



Posted by 辻 仁成

辻 仁成

▷記事一覧

Hitonari Tsuji
作家、画家、旅人。パリ在住。パリで毎年個展開催中。1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。愛犬の名前は、三四郎。