JINSEI STORIES

田舎暮らしにぴったり、ミネストローネという胃袋休暇スープ! Posted on 2025/05/07 辻 仁成 作家 パリ

田舎暮らしにぴったり、ミネストローネという胃袋休暇スープ!

となりのおじいちゃんはミッシェル、90歳だが、裏のおばあちゃんは87歳だった。
今日、アトリエの壁に穴が開いていたのでそこを埋めてペンキを塗っていたら、三四郎が吠えだしたので、あ、誰か来たな、と思って走ったら、小さなおばあさんが、パセリをもって、立っていた。
「あーら、あんたが、ここに来た日本人ね」
「え、ああ、そうです」
「ミッシェルにきいたから、ご挨拶に来たのよ。はい、どうぞ。私が作ったパセリ」
「パセリ!? ちょうど買いに行こうと思っていたんです」
「まあ、よかった。うちのポタジェで育てているの」
ポタジェというのは、家庭菜園場みたいな、庭の一角でやっている小さな畑のこと。
「実は、このアトリエは、私の夫が建てたの」
「えええ、知らなかった」
「ええ、20年前に死んじゃって、そこから私は一人暮らしよ」
20年も一人で、ここに・・・。きれいな青い目をしたおばあちゃんだった。
「その頃は、家族も遊びに来てくれていたんだけれど、みんな子供が出来て、忙しくなって、もう誰も来ない」
チャールズは鍵を専門にする職人がアトリエとして使っていたと言っていたが、実は、イボンヌさんのご主人がここを建てたんだね。
彼は「フランス門」の設計や製作をしていた職人さんだった、らしい。そのあと、このアトリエは売りにでて、今はチャールズの知り合いが大家だけれど、使ってない。過疎の村だから、借りてがいない。ほっとくと、崩壊しちゃう可能性もあるとか、で、ぼくが息吹を与えている。救世主みたいな、存在、えへへ。
「結婚した頃は、たくさん若い人が働いていたから、活気があった」
おばあちゃんの目にうっすら涙が・・・。ああ、わかるなー。ぼくのおじいちゃんがやっていた中九州の今村製鉄所もたくさんの人が働いていたっけ・・・。
「あの、マダム、寂しい時には、どうぞ、うちにお茶でも飲みに来て下さい。ぼくはそこらへんで普段は絵を描いています。午後は屋根裏で小説を書いているんですが、三四郎が気付いたら、吠えてぼくに教えてくれるから、すぐに降ります。この子は、吠えても、噛んだりは絶対しないので、大丈夫ですよ」
「へー、あなたアーティストなんですね。そして、わんちゃんもいるのね」
「ええ、しがない、放浪のアーティストです」(笑)
ということで、イボンヌさんと仲良くなった。いい人ばかり、でも、みんなかなり高齢。過疎の村は世界中、どこも一緒だね。

田舎暮らしにぴったり、ミネストローネという胃袋休暇スープ!

田舎暮らしにぴったり、ミネストローネという胃袋休暇スープ!

田舎暮らしにぴったり、ミネストローネという胃袋休暇スープ!

田舎暮らしにぴったり、ミネストローネという胃袋休暇スープ!

田舎暮らしにぴったり、ミネストローネという胃袋休暇スープ!

ぺた。笑。動かない。



ということで、イボンヌおばあちゃんがくれたパセリを使って、今日は、胃に優しいミネストローネスープを作って、お昼ご飯にするよ。
体調が今一つな時、食欲がない時、便利だから作って食べてね。かんたんで、美味しい、イタリアの知恵スープ!!! あはは、ここは、フランスでしたね。
まんまみーや!

田舎暮らしにぴったり、ミネストローネという胃袋休暇スープ!

主な材料は以下。
玉ねぎ、にんじん、にんにく、ズッキーニ、パプリカを細かく切っておく。
上のはフランスのベーコン、「ラルドン」というのだけれど、小さな肉片ブロックになっている。スープには便利だよ。

田舎暮らしにぴったり、ミネストローネという胃袋休暇スープ!

ベーコンとにんじんと玉ねぎをしっかり炒めて、ズッキーニとパプリカも加える。

田舎暮らしにぴったり、ミネストローネという胃袋休暇スープ!

こういう瞬間が好き。料理って、いろんな具材が混ざって、キャンバスの中の絵のようになるんだ。

田舎暮らしにぴったり、ミネストローネという胃袋休暇スープ!

お水をひたひたになるまで加えてブイヨンキューブ一つ、トマトを加えて煮込む。野菜の分量やバランスはお好みで。ブイヨンは入れなくても十分美味しい。

田舎暮らしにぴったり、ミネストローネという胃袋休暇スープ!

塩胡椒で味を整えて、完成。

田舎暮らしにぴったり、ミネストローネという胃袋休暇スープ!

トッピングにパルメザンチーズ、イボンヌおばあちゃんのパセリのみじん切り、など。



スープだけでいいやって、思っていたんだけれど、なんか、いい香りだから、おなかすいちゃって、あはは、まだ若いね・・・。
フランスではハンバーグの形をしたソーセージが売っているので、それをちょっと焼いて、タリアテッレ15グラム、葉っぱを添えて、頂きました。こちらにも、イボンヌおばあちゃんのパセリが大活躍だ。
思わぬ、ご馳走。
田舎飯、いっただっきまーす!!!!
ボナペティ!

田舎暮らしにぴったり、ミネストローネという胃袋休暇スープ!

田舎暮らしにぴったり、ミネストローネという胃袋休暇スープ!

田舎暮らしにぴったり、ミネストローネという胃袋休暇スープ!

※ 創作に疲れたら、屋根裏部屋にあるベッドにごろん、その上に、天窓が・・・。



つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
ぼくも、ハーブを育てたいと思っていますよ。家庭菜園、楽しいでしょうね。レシピが充実しそうですね。お楽しみに。

※ 夏にライブ・イベントをやります。ご興味ある皆さん、次回のラジオで、発表します。ツジビルです。

TSUJI VILLE
自分流×帝京大学