日々のことば

日々のことば「冷静」 Posted on 2025/07/19 辻 仁成 作家 パリ

おつかれさまです。
人間関係で、ストレスを抱えることは多いですね。
何か新しい挑戦をする時には、どうしても落ち着かないものであります。
ある程度、相手のことを知り、自分の信念も通すことができ、相手の人からも認められ、うまくものごとが進み始めるまでは、どうしても、焦燥感などが先走り、心がざわざわしてしまうものが、人間というものです。
そういう時に、ぼくは「明鏡止水」ということばを心の中で唱えます。
今は明鏡止水の境地でいかないといけないね、と自分自身に言い聞かせることにしているんです。
どういう意味かと申しますと、
「明鏡」というのは、一点の曇りもない鏡。
「止水」とは、波紋一つない凪のことを指します。
自分の心に、いかなる邪念も、欲望も、雑念も、野心も持たない、実に静かな水のような境地のことを言います。
人間というのは、とかく、気持ちが先走り、状況を濁しがちなんです。
しかし、そういう時に「明鏡止水」を唱えますと、荒れていた心も次第に凪いて、深い雲も割れ光が差し、澄み渡った状態に近づきます。
深呼吸をしてみましょう、明鏡止水をイメージしながら。
心を落ち着かせ、冷静にものごとを判断できる、あるいは世の中を冷静に見つめることの大切さを、このことばは私たち現代人に示してくれているのです。

辻仁成 Art Gallery

日々のことば「冷静」



ぼくは、ここで何度か書かせて頂きましたが、毎日、アクションを起こす前とか、後に、
「よし」
と唱えています。
これは、リセットですね。
お米を研いだら、よし、打ち合わせがすんだら、よし、信号がかわったら、よし、問題を一つ解決できたら、よし、・・・。
心の中で、こぶしを握って、よし、と声に出すわけです。
その都度、人生がリセットされて、前へと向かう感じになります。
朝、起きて、最初に呟くこともあります。
でも、寝る前の「よし」だけはこぶしを握りません。そして、落ち着くために、トーンのおさえ、「よーし」を唱えます。
吐き出す呼気と同時の場合が多いです。
すると、明鏡止水の境地が見えたりします。
一日一日、生きていると大変ですからね、このような徳のあることばを口ずさみ、日々を乗り越えていきましょう。
きっと、うまくいきます。
はい、今日も精一杯生きたりましょう。
えいえいおー。

今日のひとこと。
「明鏡止水」

自分流×帝京大学

今日のごはん。
「とうもろこし揚げ」

日々のことば「冷静」


「Le Visiteur」展、
東京、7月9日から21日まで、三越日本橋本店、コンテンポラリーギャラリーにて。
岡山、7月23日から28日まで、岡山天満屋本店、美術画廊にて。
パリ、10月13日から26日まで、パリ、ピカソ美術館そば、GALERIE20THORIGNYにて。
問い合わせは、各画廊へお願いします。

そして、毎月3回やっているラジオ・ツジビルはこちらから、です。どうぞ。

TSUJI VILLE

日々のことば「冷静」



日々のことば「冷静」

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Hitonari Tsuji
作家、画家、旅人。パリ在住。パリで毎年個展開催中。1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。愛犬の名前は、三四郎。