日々のことば
日々のことば「無理」 Posted on 2025/08/02 辻 仁成 作家 パリ
おつかれさまです。
最近の世の中というのは、道理が通らず、不正がまかり通り、力がものをいう、ちょっと恐ろしい世界になってきましたね。
世界各地で戦争、諍い、侵攻が繰り返され、そのせいで、飢餓や殺戮までも広がっています。
しかし、一方で、今まで通りに暮らしている人もいて、ぼくもある意味その世界で暮らしているので、悲惨な戦地からのニュースなどを見ている自分とこの現実の世界とのギャップに、心穏やかとは言えない日々の中にいるわけです。
不条理な感じがますます、強くなってまいりましたね。
これは、何も地球規模だけの話じゃなく、私たちの日常周辺の身近な人間関係においても、不条理の蔓延は続いている気がいたします。
「無理が通れば道理が引っ込む」
ということばがございます。
ここでいう「無理」とは、正しい道筋が通っていないこと、を意味します。
道理が通っていない世界・・・。
☆
「無理が通れば道理引っ込む」というのは、ことわざ、というよりも、江戸いろはかるたに由来することばらしいです。
昔の絵札には横暴な暴力系の輩(やから)の絵が載っていたそうで、その絵札が出ると、弱者が負けるみたいなことになり、そこから、道理に叶わない不正が横行すれば、正しいことが行われなくなると言われるようになって、このことば「無理が通れば道理引っ込む」が生まれたらしいですね。
ふむふむ・・・。
昔から、この世界には不条理がつきものだった、ということです。
つまり、
理屈に合わないことが世の中でまかり通るようになると、理屈にあった正しいことは逆に行われなくなる、ということ。
転じて、
道理が正しくても、相手に聞きいられないなら無理に通さないほうが身の安全だという意味になったのだとか。
なるほど、まさに、今の世界に当てはまりますね。
超大国の横暴の前で、小国家や無力の民は、悲しい現実の中であえいでいる、この不均等の世界を表すようなことばです。
「無理が通れば道理引っ込む」
このような世界で生きていくのは辛いですが、みなさん、道理を持って生きてください。
ただし、自分を大切にすることがまずは大事です。
無理を言って来る輩たちとまともにやりあう必要もないですが、正義だけは信じましょう。
サイレントマジョリティということばもあります。
人類の正しい共時的な大きな意思が、最終的には一部の暴君や権力者を打破する、と、ぼくはどこかで信じています。
個人は弱いですが、目に見えざるシンクロにサティの力で、物静かに抵抗を続ければいいのです。
いずれ、自惚れた暴君たちは自滅していくのものです。歴史を観ればわかるように、暴君が永大世界を支配したことはありません。
口の悪い上司も、同じです。
最後は正義が勝つ、という歌の通り、を信じたいですね。
どうぞ、不条理に負けない人生をお過ごしください。
今日も精一杯生きたりましょう。
えいえいおー。
今日のひとこと。
「無理が通れば道理引っ込む」
今日のごはん。
「焼き鳥弁当」
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パリ、10月13日から26日まで、パリ、ピカソ美術館そば、GALERIE20THORIGNYにて「辻仁成展」開催します。
この秋の作品は、これまでにない、新しい世界となります。その第一歩という感じです。
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2026年、1月中旬から3月中旬まで、日動画廊パリにて、グループ展に参加します。秋頃に、詳細が決まります。
また、お知らせします。
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そして、毎月3回やっている人生を語り倒すラジオ・ツジビルはこちらから、です。どうぞ。
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posted by 辻 仁成
辻 仁成
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作家、画家、旅人。パリ在住。パリで毎年個展開催中。1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。愛犬の名前は、三四郎。