自分流・日々のことば
日々のことば「轍」 Posted on 2025/08/08 辻 仁成 作家 パリ
おつかれさまです。
挫折を何度か経験したことがあります。
けっこう大きな挫折でしたよ。
欲張りですから、いつも高めに目標を設定してしまうので、手が届かなかった時に、どうにもならないくらい凄い挫折を味わうことになるわけです。
もっとも、そういう目標はごくごく身内にしか言わないので、ぼくが挫折を繰り返していることはあまり知られていません。
笑。
でも、結果がダメで、動けないくらい辛い日々を過ごしたことが、何度か、あります。
「落選」
目の前が真っ白になって、力が抜け、なんにも食べられなくなるわけです。
でも、御覧の通り、ぼくはこうやって今日も前向きに生きています。もう、挫折をした時の苦しみは覚えていません。
そして、今も大きな目標を心の中でひそかに持っているんです。
きっと、一生これを繰り返すんでしょうね。
辛いけれど、楽しいじゃないですか。
欲深い男です。
懲りない奴です。
ただ、一つだけ決めていることがあって、それは、挫折している姿は誰にも見せない、ということなんです。
挫折している時には涼しい顔をして、人を欺くようにしています。
なんで?
みじめだからです。笑。
心配されるのが嫌なのです。
じゃあ、どうやって、その挫折から立ち直るのさ、といことなですが、ひたすら寝るわけです。
ぼくは若い頃から、この挫折についてある持論を持っておりました。それは、こういうものです。
「挫折は人生における風邪のようなものだから、寝たら治る」
かつて、ぼくはこう自分に言い聞かせていました。
「寝れば治るよ。風邪と一緒だ」
挫折しても、いつも寝たら治っていました。
人間はそういう風に出来ているんです。
じゃあ、どうして、ぼくは挫けたのでしょう?
別に、落選したから負けたんじゃないと思います。
簡単な話、負けたと思ってしまった自分に挫けたのです。
人間は挫けるから負ける。当然ですね。
じゃあ、なんで挫けるのか、理想が高いからです。
なんで理想が高いのか、それはもっと自分を輝かせたいという人間としての願望があるからです。
それ、悪いことじゃないですよね?
前向きってことじゃないですか?
でも、まだちょっと力が及ばなかった、ということです。
もう寝るしかないですね。
悔しいけれど、寝ましょう。
そして、風邪が寝て治るように、挫折も時が解決してくれます。
しかし、挫折から立ち直る時、人間は同じ「轍(てつ)は踏むまい」と心に言い聞かせて起き上がるのです。
それを成長と言います。
「轍を踏む」の、「轍」は「わだち」のことです。
前を行く車がわだちに足を取られ倒れた、そのわだちに、自分の車の車輪もはまって、横転したことから、「轍を踏む」ということばが生まれました。
挫折をしてそこから立ち直った人は、同じ過ちをおこすまい、と頑張るようになります。
いいですね、その通り。
ぼくらが歩いてきた人生を振り返ると、いくつもの轍があることでしょう。
挫折は成長のために必要な轍なのです。
はい、今日も精一杯生きたりましょう。
えいえいおー。
今日のひとこと。
「挫折は人生における風邪のようなものだから、寝たら治る」
今日のごはん。
「生ハムメロン」
(この組み合わせを考えた人、天才!)
あと二か月で、パリでの個展がスタートします!
だいたい、作品はそろっています。今は仕上げに入ったところです。二か月あるので、じっくりと直して、挑みます。
今回のパリの個展は、ちょっと浮世絵からヒントを得た作品群になっています。挫折しないように、納得いくまで、筆を加える予定です。カタログも制作します。おたのしみに。
ということで、個展情報!!!
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パリ、10月13日から26日まで、パリ、ピカソ美術館そば、GALERIE20THORIGNYにて「辻仁成展」開催します。
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2026年、1月中旬から3月中旬まで、「日動画廊パリ」にて、グループ展に参加します。秋頃に、詳細が決まります。
また、お知らせします。
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辻仁成の美術サイトに、この先の展示会の作品が掲載されています。随時、更新されていきますので、要チェックで。
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そして、毎月3回やっている人生を語り倒すラジオ・ツジビルはこちらから、です。どうぞ。
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posted by 辻 仁成
辻 仁成
▷記事一覧Hitonari Tsuji
作家、画家、旅人。パリ在住。パリで毎年個展開催中。1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。愛犬の名前は、三四郎。