自分流・日々のことば
日々のことば「口」 Posted on 2025/09/05 辻 仁成 作家 パリ
おつかれさまです。
ストレスを感じることの多い世の中ですが、原因は、人間です。
ストレスのほとんどは、誰かから何かを言われたか、無視されたか、ともかく、自分以外の誰かによって、齎されたものに由来するわけです。
その中でも、誰かが何かを言ったことで、受けるストレスというのがもっとも多いのじゃないでしょうか?
ぼくのように他国の山奥で牛たちを眺めながら生きていると、めったに誹謗中傷を受けることがありません。(誹謗中傷はなくなりませんが、ここまで届かない、ということです)
かつて、東京で生きていた頃は、ともかく、「出る釘は打たれる」の通り、四方八方から矢が飛んできて、毎日、串刺し状態、大変でございました。笑。
ここ数年、ノルマンディで暮らすようになり、日本からの矢が届きにくくなって、ストレスもぐんと減りました。(心の弱い方には、疎開をおすすめします)
今は、牧草地帯の端っこに庵(アトリエ)を構えましたので、フランス人ともあまり接することがなくなりました。
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こういう仙人のような暮らしをしてみてわかることは、結局、ストレスというのは、人間が作るもの、ということです。
田舎ですと、流言飛語も飛び交うことはありません。飛び交っているのは、かもめとか、鳩、鷹、白鳥、などです。
なんで、人間というのは、こうもペラペラと、他人のことを、根拠もないのに、言いふらすのでしょうね。
やることがなくて、暇なんです。
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古代ギリシャの哲学者、プラトンがおもしろいことを言うております。
「賢者は、話すべきことがあるから口を開く。愚者は、話さずにはいられないから口を開く」
おお、その通りでございますね。
愚者は、話さずにいられないから、余計なことを、他人のことを、どうでもいいゴシップ、人の悪口、などなどを、朝から晩まで誰かに喋り続けるわけです。
そのせいで、傷つく人間もいるわけですが、お構いなしです。
一方、賢者は、話すべきことがあるから、話すのだ、とプラトン先生は言うております。
ぼくは田舎にいるので、話し相手がいませんから、愚痴を言いたい時は、愛犬の三四朗に言うことが多いです。
腹が立って、誰かの悪口を言いたい時は、家の前の牧草地の牛さんに言うこともあります。
「ねー、牛さん、なんで人間は権力を持つと偉そうにするんだろうね。マジで、バカだね」
でも、牛さんは、草を食べ続けます。
ぼくは肩をすくめて、
「幻のごときこの世界で、愚者の戯言で傷つくことほどあほらしきことなし」
と呟き、苦笑いをします。
今日は、少し黙ってみる手もありますね。黙って世の中を見回し、やれやれ、苦笑いでも浮かべながら、肩をすくめてみましょう。
そんな小さなことで、苦しむ必要なんかないんですよ。愚者の戯言ですから・・・。
はい、今日も精一杯生きたりましょう。
大丈夫です。
今日のひとこと。
「愚者の戯言で傷つくことほどあほらしきことなし」
今日のごはん。
「蟹と海老のパスタ」
蟹はスーパーで蒸した手の部分だけ、安売りしていたんです。それをほじくりだしました。ガンバス(大エビ)の頭で出したソースで作った海老のパスタの上に、ほぐし蟹を載せたんですが、うまかったです。内緒で、蟹にはマヨネーズを載せました。エビはピカール(冷凍食品屋のエビ)のですが、最高でした。シーフードパスタ、海老の頭部から出るミソを使って、美味しく作ってみてください。フライパンで、へらとかでつぶしながら、ミソを出すわけです。魚介のスープ・パスタみたいな感じをイメージしてみてください。
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ということで、個展情報です!!!
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パリ、10月13日から26日まで、パリ、ピカソ美術館そば、GALERIE20THORIGNYにて「辻仁成展」2週間、開催します。
だいたい、午後の14時から、18時くらいまで開画廊いたします。みんな長く働かないので、午後、お越しください。
今回は、浮世絵にヒントを得た新しいシリーズ、ボタニカルな美しいノルマンディ世界、など、今までにない辻ワールドでおおくりします。全23~24点の渾身作で行くよ。笑。
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1月中旬から3月中旬まで、パリの日動画廊において、グループ展に参加し、6点ほどを出展させてもらいます。
一部の作品は、辻仁成の美術サイトで確認できますので、どうぞ、御覧ください。
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そして、父ちゃんがみなさんの悩みや質問にこたえるラジオ、毎月3回やっている人生を語り倒すラジオ・ツジビルはこちらから、です。どうぞ。
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posted by 辻 仁成
辻 仁成
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作家、画家、旅人。パリ在住。パリで毎年個展開催中。1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。愛犬の名前は、三四郎。