自分流・日々のことば
日々のことば、「株」 Posted on 2025/10/12 辻 仁成 作家 パリ
おつかれさまです。
一度、何かで味を占めると、また、それを繰り返す、そうなると何が起こるか、といえば、進歩できなくなるわけです。
進歩って、たぶん、次に行くことであり、過去の栄光に甘んじず、新しい道を選ぶことだったりするわけです。
たとえば、ヒット曲が出たので、その作者に同じような曲を依頼する人が増えるとします。でも、世間というのは、同じようなヒット曲を何度も聞きたがらないものなんです。
自分をコピーし続けていくことはむしろ退化です。発想を変え、過去を捨て、毎回、荒野に飛び出すような勇気がある者に「進化」は訪れるのでしょう。
なかなか、言うのは簡単ですが、一度味をしめてしまうと、臆病になって冒険は出来ないよね、という話しですかね。
ぼくのような表現者は、そこが一番勇気がいることであり、その進歩を目指さないと次が無いという恐怖もあるわけで、びくびくしながら、冒険を続けているわけです。あはは。
「株を守りて兎を待つ」(かぶをまもりてうさぎをまつ)
ということばがありますね。
中国の宋の時代に、とある男が、大きな木の切り株に兎が突進してのびてしまって、その兎を持って帰って食べたわけです。で、それから、切株の前で待ち伏せすればまた兎を食べることが出来ると思いつき、株の前で待ち続けた、という故事から、このことばが生まれました。
「柳の下にいつもドジョウはおらぬ」
と同じようなことばです。
古い習慣などにこだわり過ぎて、もう、ぜんぜん、融通が利かなくなっていることを揶揄することばでもあり、一度経験した成功に固執して、進歩がなくなることを批判した戒めのことばでもあります。
やっぱり、過去の栄光なんて、ゴミ箱にポイして、新たな成功を求めて荒野に出るくらいの度胸が大事ですな。
威張っている先輩くらい悲しい存在はございませんね。
常にチャレンジする精神が、人生を面白くさせるわけですから。
「先輩、かっこいいですね、常にチャレンジしている姿、励みになります」
そういう先輩、どこかにいませんか。
はい、今日もコツコツ前を向いて、精一杯生きたりましょう。
えいえいおー。
今日のひとこと。
「株を守りて兎を待つ」
今日のごはん。
「白身魚のジロール茸焼き」
久しぶりに、NHK「パリごはん」の再放送が決まりました。
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「ボンジュール!辻仁成のパリごはん 2023SP」
今回は、NHK BSP4Kでの放送となります。
「ボンジュール!辻仁成のパリごはん 2023SP」
【再放送】 NHK BSP4K
10/13(月・祝) 午前9:30~10:59
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辻仁成、個展情報。
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パリ、10月13日から26日まで、パリ、ピカソ美術館そば、GALERIE20THORIGNYにて「辻仁成展」2週間、開催。
住所、20 rue de THORIGNY 75003 PAROS
全32点展示予定。
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1月中旬から3月中旬まで、パリの日動画廊において、グループ展に参加し、6点ほどを出展させてもらいます。
ラジオはツジビル!
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posted by 辻 仁成
辻 仁成
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作家、画家、旅人。パリ在住。パリで毎年個展開催中。1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。愛犬の名前は、三四郎。