PANORAMA STORIES

何食べているの~、父ちゃんのパリ飯(4) Posted on 2025/10/28 辻 仁成 作家 パリ

おつかれさまです。
個展は無事に終わりましたが、個展期間中にマレ地区で見つけて食べたマレ飯を皆さんにご報告いたしますね。
とまれ、個展は大成功だったのですが、展覧会って終わってからも大変なんです。
絵を購入された方々に絵を送る作業がありまして、絵の郵送は基本、ぼくらはやらないんですけれど、パリ近郊の方々には、届けますよ、と。
この大きな150センチ幅を超える作品は、パリのマダムHが気に入ってくださいました。絵をそのままお渡しは出来ないので、梱包をやり、お届けします。
それが、大変で・・・。
スタッフさんには休暇も出さないとならないので、事務所に戻り、これを一人で梱包作業した、父ちゃん画人でございました。
いや~、くたびれました。
でも、絵を傷つけるわけにはいかないので、中に段ボール、ぷちぷち、プラスティックのクッションなどをいれて、包むんです。疲れていると思うと、手が止まるので、人生はこれからじゃあー、と叫びながら梱包に勤しむのでした。
でも、ま、旅立つ我が子の船出を見送るような感じですね。
幸せになれよー。
笑。

何食べているの~、父ちゃんのパリ飯(4)

何食べているの~、父ちゃんのパリ飯(4)



さて、個展をやっていた期間、画廊の近くで、フィリピン人の男衆がやっている、寿司? え、これなに? という店を見つけ、スタッフの長谷っちと立ち寄ったのですが、おおお、すごい、美味しい。
寿司ではないのだけれど、カリフォルニアロールみたいなSUSHIでもなく、まったく、新しい概念の、いわば、おにぎりを酢飯にして、陶製の特殊な器の上に載せてだす、今まで見たことも食べたこともない、寿司、でございました。
っていうか、フィリピン人、凄い!
こうやって日本の文化は、日本人の手を離れて、ある意味での進化を遂げていくんですな。
悔しいし、いろいろとつっこみたいところはあるんだけれど、30年前に、カリフォルニアロールが出てきた時に小ばかにした自分を恥じるくらい世界的な市民権を得たカリフォルニアロールの続編的な空想力、やられました。
店名は、NOBI-SANです。
(オーナーはフランス人らしい。店長は日本とフィリピンのハーフで、花見君といいます)

何食べているの~、父ちゃんのパリ飯(4)

何食べているの~、父ちゃんのパリ飯(4)

これね、大トロなんですよ。
なんか、スパイシーで、ちょっと何か入っていた・・・、大トロに何かが混ざっていて、忘れましたが、大変美味しかった。

何食べているの~、父ちゃんのパリ飯(4)

これ、サーモンの炙りだったかもしれない。とにかく、呑んでたので、美味しい記憶しか残ってない。
この陶製の寿司台が、すごいんですね。もちろん、日本の寿司なんか握れる子はいない。だけど、具をこうやって詰めることは出来る。だからバイトでOK、というコンセプトで、この寿司台が登場したんでしょうね、この発想、面白いよね。

何食べているの~、父ちゃんのパリ飯(4)

蟹も、中に湯葉が入っていて、もう、想像を超える衝撃でした。
蟹と湯葉を合わせると美味いのをなんでフィリピンの人たち、想像しちゃうの、という、また別の世界の扉を開けたような感動があって、日本人、うかうかしてられんよ。マジで・・・。
思うんだけれど、日本文化を守りたいけれど、日本文化だって進化して、次を獲得しないとならないわけで、そこを、誰が扉を開けるか、という時代なんだと思います。

何食べているの~、父ちゃんのパリ飯(4)



何食べているの~、父ちゃんのパリ飯(4)

それでね、個展最終日に閉店しようとしていたら、飛び込んできたピンク色の髪の毛の日本人がいて、
「辻さん、間に合った。これ、食べてください」
とチョコを渡されたんです。
パリ個展、最後の最後のお客様が、こちらのあいかちゃん。
実は、フランスのチョコレートコンテストでグランプリに輝いたんだとか。
なかなか、とれないらしいですね。あとで、聞いたところ。
ローソンの商品開発部で10年修行をして、満を持して、いどんだチョコレートコンテストで優勝。
で、チーズのHISADAさんとコラボして、ロックフォールチーズとフィグをつかったチョコで、トップに立った・・・。
で、食べたんですが、正直に言いますね。
おおおおおおお!
今まで食べたことのない味でした。すごいわ、おめでとう。
これは優勝する味でしたよ。ってか、ローソンさん、これ商品化したらいかがでしょうか?

何食べているの~、父ちゃんのパリ飯(4)

まだ、若いのに、すごいね。
こういうチャレンジャーがいるんだから、日本、まだ大丈夫だな。
なるほど、寿司はフィリピンの子たちががんばって、チョコはあいかちゃん世代がフランスで暴れまくる、おおお、おもろい構図やね。
ええんちゃうか。

何食べているの~、父ちゃんのパリ飯(4)

ということで、最終日は画廊をしめて、スタッフさんらと、近くのカフェに行き、ビールを飲んだんですが、頼んだのが、マレ地区のカフェには必ずある、カマンベールチーズのロティ! しかも、はちみつが入っていて、底なしで、食えました。
いや、パリ右岸、マレ地区には奇妙で美味いものが溢れております。

何食べているの~、父ちゃんのパリ飯(4)

何食べているの~、父ちゃんのパリ飯(4)

何食べているの~、父ちゃんのパリ飯(4)

何食べているの~、父ちゃんのパリ飯(4)

ちなみに、父ちゃんは今さっき、小腹がすいたので、茄子を塩もみして、こんなものを作り、白ワインでとどめを指しました。
美味しいを追求するのは、マジで、趣味なんですね。
みなさま、美味しい生活してますか?
ボナペティ!!!!

何食べているの~、父ちゃんのパリ飯(4)



Posted by 辻 仁成

辻 仁成

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Hitonari Tsuji
作家、画家、旅人。パリ在住。パリで毎年個展開催中。1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。愛犬の名前は、三四郎。