PANORAMA STORIES

ノルマンディ・アトリエ日記(1) Posted on 2025/10/31 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、最近、思うところがあって、版画をはじめたのである。
油絵だけで生涯いこうと決めていたのだけれど、昔、中学の時に版画クラブに在籍していたことを思い出し、版画なら、いいかもな、と思って、リノ・グラビュールの材料を買い、いろいろと制作をはじめたら、面白くって、面白くって、手が止まらない。ついでに、版画は削りゴミが大量に出るので、片づけも大変で、もう、掃除ばかり。
でも、版画を刷るのがこれまた楽しいので、屋根裏部屋に版画ルームを作って、そこで印刷をしているのだけれど、刷り上がると、これが、めっちゃあがるのだよ。
で、ノルマンディの画材屋に行って、手ごろな額を見つけたので、入れてみたら、おお、いいね、悪くないじゃんね。
新しいおもちゃを手に入れた子供みたいな父ちゃん画人なのであった。

ノルマンディ・アトリエ日記(1)

目はそこまで悪くないのだけれど、ヘタすると、指を切ってしまうから、一応、老眼鏡でリノ板を削っているのであーる。
そして、額装した本邦初公開の版画「白髭老人1号」である。
あはは。

ノルマンディ・アトリエ日記(1)



ぼくは中学生のころ、詩集を作っては、それをガリ版で印刷し、画用紙に版画で絵を刷って表紙にしていたんだよね。
父ちゃん画人の原点なんだけれど、あれから半世紀、再び、彫刻刀を持って、掘り出したのだ。

小説「泡」書きはじめたいのだけれど、脳が少し休め、と言っている。
というのも、すべての創造を一つの脳でこなしているので、休みなく脳が動いている。ちょっと疲れがたまって、頭の奥が痛いんだよね。
和歌山ラーメンがあったことを思い出し、笑、今日のランチは、それにした。

ノルマンディ・アトリエ日記(1)

このラーメン、最高に美味いのだけれど、紀ノ川サービスエリア上り限定、らしい。登り限定、のぼり、だからね!
マジで、これは美味しい。
知り合いがね、くれたんだ。「ノルマンディで、和歌山のトンコツ醤油ラーメンを仙人に食べてもらいたい」って。
だれが、仙人じゃ!!!

キャベツを炒め、豚肉のひき肉を辛み味にして添えて、もちろん、茹で卵も。

ノルマンディ・アトリエ日記(1)

ノルマンディ・アトリエ日記(1)

実は、サブスクのツジビル(TSUJIVILLE)を年内で終えることにしたのである。
小説と絵の制作で、もう、頭がいっぱいいっぱいで、本当にごめんなさい。地球カレッジからスタートし、ツジビルまで、5,6年は続いたかな。
長かったね。
でも、音楽の引退があったように、何事にも終わりが来る。
でも、辻仁成の創造人生に終わりはない。むしろ、ここからだからね、応援くだされ。

ということで、息子たちが遊びに来ていたので、駅まで送った。
「また、おいで」
「うん、すぐに来るね」
いい子だちでした。
心が癒された。
ここは、アトリエだけれど、実家でもあるのだよ。

息子とそのガールフレンド君に出した、おつまみ。サーモンの燻製とノルマンディクリームのパンケーキみたいな・・・。
「パパ、美味しい」って。
いつまでも、息子は息子なのである。

ノルマンディ・アトリエ日記(1)



ノルマンディ・アトリエ日記(1)

久しぶりだね、チャチャ。チャチャは息子が生まれた時に買い与えたぬいぐるみなのだ。チャチャに焼きもちをやく、三四郎なり。笑。ほのぼの~。
チャチャも21歳だよ。
あはは。

ノルマンディ・アトリエ日記(1)

じゃあね、またね。
創作は続くよ。
そして、ぼくの人生も続くのだ。

※ パリ、個展情報
1月中旬から3月中旬まで、パリの日動画廊において、グループ展に参加し、7,8点ほどを出展させてもらいます。

辻仁成 Art Gallery
自分流×帝京大学



Posted by 辻 仁成

辻 仁成

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Hitonari Tsuji
作家、画家、旅人。パリ在住。パリで毎年個展開催中。1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。愛犬の名前は、三四郎。