PANORAMA STORIES

何食べているの~、父ちゃんの日本飯(父ちゃんの25歳) Posted on 2025/11/14 辻 仁成 作家 パリ

おつかれさまです。
昨日の夜は幡ヶ谷の6号通り商店街周辺で、寿司を食べておりました。
ぼくは24、5歳くらいの時に、幡ヶ谷の6号通り坂商店街のはずれ、本町5丁目か3丁目あたりに、住んでいたんです。
今日は友人のGさんのご招待で、お寿司を、ご馳走になったんですが、そこがその商店街にあったんです。
で、懐かしくて、うろちょろしてしまいました。
バンドでデビューした頃だったから、どんな感じの青年だったかというと、こんな、サイケな青年だったんですよね。

何食べているの~、父ちゃんの日本飯(父ちゃんの25歳)

なんか、今からは想像できないくらいの若さですなー。人に歴史あり、でございまする。
今は結構、老けましたが、そこかしこに面影がありますね。
この6号通り商店街周辺にはバンドマンがたくさん住んでいて、いろいろな出会いがありましが、ま、それはいいとして、あれから、40年の歳月が流れた幡ヶ谷、6号通り商店街、ベースは同じなんですが、商店は全部変わってしまっていて、ハタデンという電気屋さんだけは一緒でした。笑。
当時、チャーミーさんというガールフレンドさんがいまして、その人は幡ヶ谷の反対側に住んでいて、時々、商店街の中ほどで待ち合わせしたりしてましたね。
青春の一ページで、その子は不思議な人でしたが、付き合った記憶がないので、いつもいる女の子だったのかな。
絵が上手な人でした。空想力の力、という言葉を発明していたように記憶しています。



何食べているの~、父ちゃんの日本飯(父ちゃんの25歳)

幡ヶ谷から副都心を見るとこんな感じで、オペラシティとか、聳えています。昔は、都庁もありませんでしたね。
で、寿司屋さんはすごかったです。
招き猫がマグロの横に立っていて、衝撃を受けましたが、食べたらかなり美味しく、最中なんですけれど、中に、たくあんとか、いろいろと入っていて、玉手箱のような、ある種の記憶装置のような一品で、食べながら、招かれた気分を味わったものです。

何食べているの~、父ちゃんの日本飯(父ちゃんの25歳)

何食べているの~、父ちゃんの日本飯(父ちゃんの25歳)



何食べているの~、父ちゃんの日本飯(父ちゃんの25歳)

フランスには「こはだ」が存在しませんので、これは個人的に、ありがたかったです。
こんな高級なお寿司、二度と食べられないだろうな、と思って噛みしめて帰りました。ご馳走様です。

路地の奥にある焼き鳥屋さんにも行きました。
幡ヶ谷は商店街でしたが、こちらは六本木の路地です。
路地の入口の石段を上ると、ぽつんと焼き鳥屋があって、馴染みの料理長がやっている店で、でも、もうすぐ移転するのだそうで、お別れを言うために立ち寄った次第です。
「ちょっと、様子を見に来たよ」
と言って、2,3本、焼き鳥を頂きました。築60年くらいの古いお店なんで、取り壊しになるのだそうです。
路地から灯が一つ消えるということですね。
時の流れを感じました。

何食べているの~、父ちゃんの日本飯(父ちゃんの25歳)



何食べているの~、父ちゃんの日本飯(父ちゃんの25歳)

何食べているの~、父ちゃんの日本飯(父ちゃんの25歳)

ぼくは新宿、渋谷周辺でバンド活動をしていたので、六本木は金持ちの町という印象で、近づいたことがありませんでしたね。
でも、今は、年齢的にも、赤坂と六本木辺りのちょうど中ほどの落ち着いた路地にある居酒屋の席を温めるのが好きです。
なんか、時代のうねりのようなものを、感じました。

何食べているの~、父ちゃんの日本飯(父ちゃんの25歳)

40年の歳月が流れましたが、今日の父ちゃんはこんな感じであります。
25歳の父ちゃんと、今の父ちゃん、何が違うんでしょうね。
昔の方がうんと尖がっていましたねー。
あの頃は笑わなかったです。
今は自撮り&笑顔ですからね、時代も変わるというものです。
あの頃の自分に言いたいのは、
「慌てるなよ」
ということでしょうか?
いまだにせっかちな男ですが、どうなんでしょうね、後悔先立たずですから、あれはあれで仕方がなかったのかもしれません。
この後、軽井沢に移動をし、しばらく紅葉の軽井沢を堪能いたします。
ついでにシークレットライブをやって、ほんのりと温かい交流を持ちたいと思っています。
25歳のぼくに会えるものなら、会ってみたいな、と思った幡ヶ谷6号通り商店街でございました。
えいえいおー。

何食べているの~、父ちゃんの日本飯(父ちゃんの25歳)



辻仁成の展覧会情報ですが、
2026年、1月15日から、パリ、日動画廊のグループ展に参加。
2026年、11月には、リヨン市で個展が決まりそうです。情報解禁になったら、まっさきにお知らせいたしますので、リヨン周辺在住の皆さま、お楽しみに。

辻仁成 Art Gallery
自分流×帝京大学



Posted by 辻 仁成

辻 仁成

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Hitonari Tsuji
作家、画家、旅人。パリ在住。パリで毎年個展開催中。1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。愛犬の名前は、三四郎。