自分流・日々のことば
日々のことば、様子見よう Posted on 2026/01/25 辻 仁成 作家 パリ
おつかれさまです。
人生に役立つことばを紹介している、この「日々のことば」ですが、日本語のことわざとフランス人のことばって、もちろん、そっくりなことわざもあるんですが、中には、真逆というか、考え方が随分と違うな、と思うものも結構あるんですよ。
フランス人は皮肉屋さんが多いので、でも、真面目な人も多いんですが、「よっしゃ、熱血でやろうぜ」みたいな、父ちゃんみたいな熱血人は少なくて、やることはやるんですが、ま、皮肉を一発言ってから、やる、みたいな、そのどこか、シニカルさこそが、フランスなんですわな。
☆
一言でいえば、国民性なんですかね。
あの有名な「セ・ラ・ヴィ」(それが人生だ)というのも、誰かが亡くなった時とかにも、使うことがあります。ま、言い方は、重たい感じですけれど・・・。肩を竦めて、ま、それが人生だから、みたいな、感じで、でも、突き放して解決させるというのじゃなく、それはもうしょうがない、生きている君は苦しいだろうけれど、前に進めよ、それも人生だ、みたいな、長い尾ヒレを感じさせる空気感を伴って、使われることもあるんです。フランス風ですね。
☆
誰かが落ち込んで、相談をします。だいたい、この「セラヴィ」が出てきます。そして、言われたことで相談をした方も、納得する、というか、そこが、フランス風なのかな。
ま、お涙頂戴だけじゃ解決できない人生の難題を、セラヴィで、乗り切るフランス風のことばたち、今日はいくつか、ご紹介しますね。
いろいろとあるんですが・・・・

とくに、ぼくが好きなのは
「生きてりゃ、分かるさ」(Qui vivra verra)
という仏語です。
これも、セラヴィにそっくりで、切羽詰まった友人に、ぼそっと、これを言うと、言われた方は、ふっと我に返り、ま、そうだな、となるわけです。だって、しょうがないじゃん、結果なんかさ、そのうち出るんだから、今、焦っても、だろ?
みたいな感じです。めっちゃ、フランス的な言葉なんですよ。
似たような、言葉に、「オンベラ」というのがあります。on verraと書きますが、やたら、仏人使いますね。ベラ、verraが上のと一緒ですね。
「様子見てみよう」って訳しますが、トランプ大統領の、あれ・・・。笑。
すごく、文脈で、捉え方が様々な実にフランスっぽい言葉で、たとえば、
「人生って、いろいろある(複雑)じゃん、だから、なるようになるよ」
La vie est compliquée… on verra.
この「なるようになる」もオンベラなんですね。ま、正確に書くならば、オンヴェラ、かな、笑。
でも、
「ま、そのうち、なんとかなるでしょ」
くらいが、一般的ですかね。
☆
他に
「最急務は待機だよ」
というのも、フランスっぽい表現で、あります。
Il est urgent d’attendre.
なんにも分からない状況下、ヘタに動くと事故とか怪我をすることありますよね? そういう時は、ひとまず、落ち着け、ということで、この言葉をよく使います。
なんか、日本だと、急がば回れ、とか言いそうですが、動くな、様子を見よう、という感じが西洋なんですかね、トランプ大統領の
「ま、様子を見ようじゃないか」
って、ここかな、え、あはは。知りません。
あ、フランス人がよく使う言葉に、
「知らねー」
というのがあります。
「ジュセパ」
やっぱ、肩竦めていいますね。これ、あまりに頻繁に使うので、言葉が短縮されて、ジュセパ、が、シェパ、になります。品のいい言い方じゃないんですが、大の大人も使いますよ、もちろん、肩を竦めて!!!
この肩を竦めるジャスチャー、実にフランスです。もう、格言とか通り越して、唇尖らせて肩竦めて、わかるだろ、終わり、ですからね。シェパ。楽でいいです。同情もし過ぎないクールさ。
ということで、日本人は日本人らしく、いきましょうかね。
えいえいおー。
熱血~。
今日のひとこと
「生きてりゃ、分かるさ」


25歳の時の父ちゃんです。尖がってましたねー。笑。
シェパ!!!
☆
辻仁成展覧会情報
☆
現在、フランス日動画廊パリでのグループ展に参加中。3月7日まで。
GALERIE NICHIDO paris
61, Faubourg Saint-Honoré
75008 Paris
Open hours: Tuesday to Saturday
from 10:30 to 13:00 – 14:00 to 19:00
Tél. : 01 42 66 62 86
☆
それから、8月5日から、一週間程度(予定)、三越日本橋本店特選画廊Aにて、個展を開催いたいます。
今回のタイトルは「辻仁成展、鏡花水月」です。
☆
そして、11月初旬から3週間程度、リヨン市で個展を開催予定しています。詳細は決まり次第、お知らせいたしますね。お愉しみに!
☆
そして、電子書籍で「海峡の光」が配信されております。文学の方もどうぞ。
☟
海峡の光 (Kindle電子書籍版)
https://amzn.asia/d/i8zPs4u
☆
ええと、2023年のパリ、オランピア劇場ライブもごひいきに。
☟
posted by 辻 仁成
辻 仁成
▷記事一覧Hitonari Tsuji
作家、画家、旅人。パリ在住。パリで毎年個展開催中。1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。愛犬の名前は、三四郎。


