ノルマンディ、ツジ村便り
辻村相談窓口、「和を乱す者への向き合い方」 Posted on 2026/04/04 辻 仁成 作家 パリ
おつかれさまです。
昨日は、私塾人間塾をやりまして、(辻村相談窓口のリアル版ですね)20名くらいの中間管理職の人たちを前に彼らの悩みを訊く形式で、問答会させてもらいました。
今日は、その中で、もっとも印象に残った相談についてお話させていただきます。
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匿名希望さん
「わたしの部の中に、こちらがどんなに一生懸命心を折って接しても、どうやって説得しても、意思の疎通が出来ない人がいまして、困っています。自分に優しさが足りないのか、と悩み、頑張って誠心誠意向き合ったのですけれど、やっぱりだめで、逆に、ものすごいストレスを感じてならないのです。その一人のせいで、すべてがうまくいきません。いったい、どうしたらいいのでしょうか?」

おこたえしまーす。
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「はい、この問題、様々な意見があるでしょうね。和を以て貴しとなす、という言葉があるので、がんばらなきゃ、と思うのは日本人的には当然かもしれません。部のことを考えたら、なんとか、その人を説得して、胸の中に飛び込んでまとめていこう、と思いますね。しかし、ぼくは、むしろ、あなたにはこれ以上無理してその人をつなぎとめる努力をやらせたくないかな、と思います。すでにあなたは相当なエネルギーをそこに注ぎ込んできました。あなたの胸の内が痛いほどわかります。もちろん、チームワークは大切ですが、誰かの犠牲の上に成り立つチームワークは不公平だし、それ以上頑張ると逆にあなた自身が倒れてしまう。自分を殺してまでして、命をかけてやるようなことは、むしろ避けた方がチームのためにもなります。なぜなら、あなたこそ、このチームの重要な一員だからです。
その人が、どうしても理解できないなら、そこは無理して説得せず、成果をあなた一人でも出せるように頑張ればいいんじゃないでしょうか・・・。
話が絶対に通じない人って、実際、1万人に一人以上はいますからね、そこに出会ったと思いあまりそこは考え込まないようにしましょう。すでにあなたは全力を尽くしたわけですから、冷たい人間ではありません。むしろ、その人と出会って壁を一つ発見出来たので、そこを乗り越えたところに、あなたの成長が待っている。無視をする必要もないですが、無理をする必要もありません。
あなたはあなたの居場所で最高の仕事をしてください。そして、その過程が彼(か彼女かわりませんが)の気持ちを動かすことになるかもしれません。そういう相手をあなたが乗り越える度に、あなたは必ず成長しています。長い人生にはそういうことがままありますが、これをチャンスに変えることの方が大事です。あなたがノイローゼになって苦しむのはやめましょう。チームワークといいますが、バンドもそうなんですが、いいバンドというものは、一人のプレイヤーが頑張ると、他のメンバーも刺激を受け頑張るものなんです。ビートルズだって、そうですね。ローリングストーンズも!
チームは切磋琢磨してやっていくものだから、あなたがものすごくいいプレイにつとめれば、自然と周囲に影響は出ると思いますから、あまり、人間一人のことで心を煩わせるのはやめてください。いつも言うことですが、上司は「清水の舞台から飛び降りる覚悟でやれ」と言いますが、「清水の舞台から飛び降りたら人間は死にます」がぼくのポリシーです。どうぞ、ご自分を大切にお仕事を励んでくださいませ」

夏の個展は、8月5日から11日まで、三越日本橋本店、6階、特選画廊にて。
このポスターの作品は、鏡花水月のNo6だったかな? です。ノルマンディの暮らしの中で持った、心の穏やかな境地をイメージしています。

「近況」
文庫「父ちゃんの料理教室」が重版となり、新刊エッセイ集「キッチンとマルシェのあいだ」が追い上げている感じ。
夏の個展会場の三越特選画廊の下見もして、配置図をこれから考えなおす感じですが、だいたい、予定通り、60作品が並びます。小説「泡」の表紙になる作品「泡1」もそこに入っています。
これから、どうやって生きていくのか、考え直そうと思っています。笑。



