ノルマンディ、ツジ村便り

辻村相談窓口、「名刺交換」 Posted on 2026/04/11 辻 仁成 作家 パリ

おつかれさまです。
週末ですね、みなさんはどんな週末をお過ごしですか?
今日、ノルマンディはどんよりとした曇り日で、肌寒いです。ちょっと頭が痛く、仕事もせず、ベッドで寝ています。
でも、三四郎がいるので、完全に休むということも出来ず、そんな日もあるな、と思いながら、さ、そんな疲れ気味の父ちゃんですが、窓口を開けてみましょうかね・・・。開店。

匿名希望Fさん
「辻さんは名刺を持ったことがない、とどこかで書いていらっしゃいましたが、それはいいとして、自分のような会社員には、名刺ってやっぱり社会で生きていく上で大切だったりするんです、仕事をしていると。辻さんは名刺を持たないでどうやって、世の中から必要な人をピックアップされてきたんですか? 大きな意味で、辻さん流の人との向き合い方、きいてみたいです」

辻村相談窓口、「名刺交換」



おこたえしまーす。

「そうですね。名刺って持ってないですが、日本に戻って、はじめての人に会う時、やっぱり名刺、もらったりするんで、それをどうするか、いつも、悩んでいるんですよ。名刺ホルダーさえないので・・・。だから、ぼくが貰うものはマネージャーに管理してもらっています。でも、仕事をするなら名刺があった方が便利ですよね。名刺を持たないぼくから、みなさんに、聞きたいこともあるんです。仕事している方は、名刺ものすごい数あるんじゃないですか、その名刺って、役立つんですよね? きっと。人脈という言葉をよく使う人がいて、ビジネスに人脈が大事なのはよくわかるんですが、その中から、どうやってあなたに適した人を見つけ出すのかな、と興味があります。ぼくは、この人ともうちょっと親しくなりたい、と思う時は、紙に連絡先を書いて渡します。似顔絵も一緒に描いちゃいます。でも、そこまでして繋がりたい人と出会うの、10年に一度くらいなので、結局、名刺を持ち歩く意味がないですし、最近は、ラインを交換すれば済むので・・・。とはいえ、誰だか分からないラインがいっぱいだし、ぼくも暗号名で登録しているから、相手も、ぼくだと分からなくなっているのか、メッセージが来ないです。笑。要は、人間のつながりって名刺とはあまり関係ないんじゃないか、と思うんですよね。本当に必要な人との出会いって、ご縁、だから。縁があるか、ないか、だと思って生きていますから、名刺、たぶん、今後も持たないと思います。

ぼくが会社経営者だったら、こう考えます。
やる気のない人を十人雇うより、たった一人のガッツあるスタッフを見つけることが大事だ、と。気持ちのない人十人に囲まれるより、心強い一人がいる方がなんといっても幸せですし、ね。愛の無い十人と戯れるより、愛のあるたった一人の人の方が大事だったりします、からね。名刺を配って、その一人に出会える確立って、どのくらいなんでしょうね。
でも、うちの息子も仕事をはじめたようなんですが、自分を相手に届けるために名刺が必要なんでしょう。それはそうでしょう。でも、ただ名刺を渡すのじゃだめだよ、と息子には言います。その一枚を渡す時に、その一枚が意味あるものになるように、自分をちゃんとアピールして、仕事をしたい相手の心に残るような何かを届けられる自分を築いていかないと・・・。名刺ケースの中でうずもれる一人にならないようにすることが、大事で、そうすると、渡した名刺が意味を持って輝き出す、んじゃないかって、名刺を持ったことのない父親のアドバイスでした。ぼくも、名刺だけじゃなく、何かのパッションを手渡された人には、その人の名刺に印刷されたメアドに、「今日はありがとうございました。また、連絡します」とメッセージを残すこともあります。何か、フックがあったんですよね、その人がぼくの心に何かフックさせてきた、から、その名刺に意味が出たんでしょう。

愛のない人たち百人に囲まれるよりも、愛のある一人と出会いたい、父ちゃんです。「すいません、ぼく名刺持ってないんです」と言うと、たいていの方々は苦笑されて、「辻さんが持っていたら、嫌だな」と言われます。この言葉はある意味、嬉しいですね、アウトサイダー冥利につきます。名刺無くても許されるんだ、と嬉しくなりますものね。そういう人生を生きて来てしまったので、これからも、そういう人生を貫きます。えいえいおー」

辻村相談窓口、「名刺交換」

今日の近況のようなもの。
「歌う詩人」という新しい活動名が決まったので、今は、どういう音楽をやるか、どういうグループになるのか、考えているところです。ま、音楽もジャンルにとらわれないものがいいですね。詩人が歌っているような世界を出せるように、少しずつ形にしていきたいな、と思っています。
小説に関しては、今日から本格的にゲラのチェックをやります。九月四日発売に向けて、小説「泡」がまた動いています。それとは別に、もう一度、SNSでも小説を連載したいな、と思っているんですが、現在、構想練っているところです。きっかけを掴むことの方が実際に書くよりも大変です。
個展にむけて、昨日からニス塗りをはじめまして、二〇枚ほど昨日は塗りました。今日もやりますが、ニスは二度塗りをするので、最初にリキッド、そのあと、スプレーと決めています。もっとも、作品によりますが、・・・。ニスが足りない可能性があるので、買いに行かないとならないかな・・・。
ともかく、窓を開けると、目の前は荒野なので、人の姿が見えません。右手(裏?)に海があるんですが、人間は少ないです。圧倒的に鳥さんたちの方が多いんです。そういうところで創作をしています。
たぶん、今日はいただいた蕎麦をいただきます。

辻村相談窓口、「名刺交換」

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