ノルマンディ、ツジ村便り

辻村相談窓口、「口車にのらないために」 Posted on 2026/05/12 辻 仁成 作家 パリ

おつかれさまです。
さっそく、相談窓口を開かせていただきます。
今日は短いけれど、痛烈な質問です。

匿名希望Vさん
「いつも人の口車に、まんまと乗せられてしまいます。どうしたら自分を保てますか?」

辻村相談窓口、「口車にのらないために」

おこたえしまーす。

「あのですね、ぼくも気づけばしょっちゅうまんまと人の口車にのせられて、のせられるだけじゃなく、踊らされて、最後は突き落とされています。ほんとうです。最近もありましたし、過去、振り返ると、しょっちゅうありまして、息子から、『パパは、すぐに人を信じて、あいつはいいやつだ、というけれど、いつも最後は、騙されたって、肩落としているよね』と言われたものです。この性格は、この年齢になっても、なかなか治らないで、実にしょっちゅう口車にのせられ、おだてられ、おどらされ、ぽいっと投げ捨てられているんですから、こんなぼくがあなたにまともなアドバイスなんか、出来るわけないですが、一つだけ言いたいことがあります。あなたが人を口車にのせる側ではない、のだから、まずは、そこはよかったんじゃないでしょうか? ぼくも口車にのって、がっかりしますが、でも、自分が、じゃなくてよかった、といつも思います。あとね、口車にのせるっていうのは、相手も悪いことしていると思ってない場合が多いので厄介ですよね。騙すんじゃないんです、口車ってのは、仕向けるみたいなことで、乗っちゃう側も一定数悪いんですよ。笑。
なので、口車にのせられると、「バカじゃないか、俺は」と自己嫌悪に陥りますが、人を口車にのせる側じゃないので、ま、それはそれでよかったよな、と割り切ってもいいんじゃないでしょうか。そして、出来れば、口車にのせようとしてきた、そういう人間たちのことはいち早く忘れるべきです。世の中は、口車でなりたっていますからね、しかも、悪気もないし、ま、それが、大人の世界のやり方なんだ、と気づくべきです。ビジネスっていいますが、ほとんどが、口車で成り立っている世界ですよ。「パパ、まんまと引っかかる方も悪い」と、ぼくも息子によく叱られていましたからね、それでも、この年になっても、まだ、ひっかかっていますよ。いい勉強になりますね。たぶん、ぼくは死ぬまで、お人よしで生きると思います。ただね、あれ、これ、口車じゃないか、と思ったら、気をつけましょう。深手を負うのはよくないですから・・・。一度は騙されてもいいと思いますよ、それはあなたが素直でまっすぐで優しいから、試されているんですよ。でも、何度も口車にひっかかるのはやめときましょう。そして、最初から、ひっかかるまいと、人間不信を全面に出して生きるのもやめときましょう。警戒し過ぎると誰も近づいてきません。ぼくの歌に「サボテンの心」というのがあるんです。砂漠のサボテンは外敵に食べられないように棘を生やしているんですが、棘を生やせば人が近づいてこないんです。ね、面白いでしょ? 砂漠のようなこの世界で、棘だらけで生きてちゃ、干からびます。その歌のサビは、「砂漠のサボテンよ、花を咲かせて御覧、そしたら、人が近づいて来るよ」なんですね。ま、いい人たちもいるので、だまされてもいいや、と思って、ぼくは人間と真摯に向き合っています。そしてね、口車にのって叩き落とされたあとなんかに、笑、「もっと自分はすごいところに行ってやる、みとけよ」と心に誓うんです。その反動的なエネルギーも大事です。いいでしょうか? こんな感じのアドバイスで、・・・。でも、あなたみたいな人がいるのが、ぼく的には、安心の材料です。お互い口車には気を付けて、素直に、生きていきましょうね。去る者は追わず来る者は拒まず、同じ時代で生きているんですから、えいえいおー、で突き進みましょうや」

辻村相談窓口、「口車にのらないために」

近況のようなもの。
今日は1メートル×1メートルの大きな作品を描き始めました。人間の渦みたいな作品で、大作ですね、わくわくします。何かをスタートさせるとき、自分が再生するような気持ちになります。
三四郎と、ステファンのカフェまでいきました。昨日は嵐でしたけれど、今日は快晴でした。世界のくだらないものばかりがニュースで流れてくるので、苦しい時代ですが、青空は味方ですね。

三越日本橋本店、特選画廊全面で、8月5日から11日まで、出来るだけ、在廊したいと思っています。
10月22日からパリでアートフェアに参加します。25日まで。
11月5日から、リオンで個展です。

帝京×パリ・オンラインアートカレッジ

辻村相談窓口、「口車にのらないために」

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